ネットに潜む受難 〜タンバリン星国の少年と地球の少女〜
”〜事の始まり〜”
…ここはとあるマンションの一室。トライアングル星雲・タンバリン星国から(真意はどうであれ)
コメットさん達とは別に王子様を探しに地球へとやって来たミラとカロンの姉弟が住んでいます。
ある日、姉のミラは家に見慣れない大きな『箱』のようなものがあることに気づきます。
…気になったミラは弟のカロンに聞いてみました。
「ねぇ、カロン。何なの?この大きくて重くて場所をとりそうな『箱』は。」
「え?あ、あぁ…これはさ『ぱそこん』って言うんだよ。…地球の人はぼくぐらいの歳からでももう使っているって話を聞いたから、
そこの電気屋さんで買ってきたんだ。」
「か、買ってきたって…、カロンひとりでどうやって買ったの?こんなもの。」
「うん。…なんか特別な手続きとか保護者同伴とか…まぁ色々と言われたから、とりあえず星力で…」
「えっ! …ま、まさかまた問題を起こしたんじゃ…。」
「そ、そんなことしないよ!…星力で大人に変身して、住所とかをいろいろと…。」
「な、なぁーんだ。…それなら安心。」
…ここで安心してしまっていいのかは良く分かりませんが。
「で、カロン…、これは何をするものなの?」
「これはね、『いんたーねっと』っていうものを使って、地球で遠く離れている人とも話したり、
ホームページってのを見て情報収集ができたりするものなんだって。…学校の先生が言ってた。」
「へぇ…。それはすごいわ。…わたしにもやらせて、ね?」
「ダメだよ。まだ『せっとあっぷ』ってのが終わってないから。 …パソコンは最初につけるまえに色々と難しい手順があるんだって。」
「ふぅん。…ちょっとガッカリね。 ねぇ、その設定ってのが終わったら、まっさきに貸して。ね?」
「そういうんだったらお姉ちゃんも手伝って欲しいなぁ…。」
さてさて、そんなこんなで朝になり、ミラとカロンの姉弟は学校へと行ってしまいました。
二人いるわけですが、とりあえずここではカロンの方の様子を見てみることとしましょう。
「ふぁ〜あ…あ。 結局夜遅くまでかかっちゃったなぁ、セットアップ。なんとか終わったからいいけど、
結局お姉ちゃんは手伝ってくれなかったし、眠くて眠くてしょうがないよ、ふぁ〜…。」
カロンはセットアップだけで夜遅くまでかけてやっていたのか、寝不足気味で、ことあるごとにあくびをしています。
と、そんな時、あくびをしていて前が見えなかったカロンに、誰かがぶつかってきました。
「ふあ〜… いてっ!! わ、わわ…。」
「きゃっ! …ご、ごごごめんなさい! いたたたた…。」
「あ、あ…。こ、こちらこそ、ごめん。 …あ。えっと、君は〜…『みちるちゃん』…だっけ?」
「え? …そういうあなたはカロン君。 同じ学校だったのね。知らなかった…」
「う、うん。…ちょっと前まで…学校来てなかったから…さ(うぅ、ちょっと気まずいなぁ…こういうの)。」
「そうなの?…ごっ、ごめんね変なこと聞いちゃって…。」
「あ、あぁ…いいよ別に。事実だし。…あ、チャイムが…。」
「いっけなーい!もう授業始まっちゃうわ! じゃ、じゃあ、またね!」
「う、うん。 …ってぼくも!ち、遅刻しちゃうよぉー!」
そうして授業も終わり、放課後になりました。 …カロンは一人で家へと帰ります。
「…君、またねー!」
「…ちゃん、帰ったらあそぼ!」
「…(ぼくは…あの時メテオ様に助けてもらった時から何にも変わっていないんじゃないのかな…?
メテオさまのおかげでなんとか学校に来られるようになったし、教えてもらった技の数々のおかげで
いじめられなくもなったけど、友達なんてそう簡単に出来ない…。
はぁ。やっぱり地球って…辛い。)…帰ろっ。」
カロンはそんな現実を実感し、とぼとぼと自身の家へと帰ってゆきました。
「…ただいまー。 …あ、お姉ちゃん。 どうしたの?」
「あっ、おかえり。…えへへ、なんかもうパソコンが使えるって言ってたじゃない。だから先にやらしてもらおうと思ってー。」
「あぁ、そうなの…。まぁ別にいいけど…。ひと段落ついたらぼくにも貸してよ。」
「えぇ。…ちょうど今終わったから。はい。」
「…あっ、もうすでに『ユーザー設定』が済んでる…。それにぼくとお姉ちゃんで別々になってるし…。
お姉ちゃん!これお姉ちゃんがやったの?」
「うん。…頑張って字ばっかりの説明書を読んでやったの。…あ、わたしの所は勝手に見ないでねカロン。
って言ってもちゃんと見られないようにパスワードをかけてあるから見られないだろうけど。」
「わかったって。 …じゃあぼくもインターネットを…っと。」
カロンはとりあえずインターネットに接続しましたが、これといってやりたいことはなかったようです。
何をしようかと適当にページ内を色々と見回してみると、ページ下層部にあるものを発見しました。
「…! 『コミュニティ・お友達チャット』…。 お友達…か。」
少し友人関係の事で悩んでいたカロンは、それを見て思わずクリックしてしまいました。
「あ…。まぁいっか。どーせこんな時間じゃ誰も来ないだろうし。 えぇ〜っとまず…、
『HN(ハンドルネーム)』を入力するんだっけ。…何てのがいいだろうか…。」
ネット上で用いる、本名以外の名前ハンドルネーム。…カロンはそれで少し悩んでいました。
そして少し考えたのち、パソコンの置いてある机と反対方向に置かれていた星座早見表に目をやりました。
「これは…、星座早見表か。 ま、HNなんてテキトーでいいよね。えぇっと〜…じゃあ、『アルタイル』にしよ。」
と、半ば適当にハンドルネームを決め、カロンは”お友達チャット”に入室したのでした。
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MASTER > アルタイルさん、いらっしゃい。 <205.106.62.95> (10/28-16:44:36)
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「…ふぅ、とりあえず入っては見たけど、こんな中途半端な時間じゃ誰も来るはずないか。…あと少ししたら出よう。」
半ばあきらめムードになったカロンは、すぐにチャットから退室しようとしましたが、ここで誰か入室したようです。
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MASTER > アカネさん、いらっしゃい。 <69.143.60.210> (10/28-16:50:26)
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カロンが退室しようとしたその瞬間、いきなり誰かがチャットに入室してきたのでした。
いきなりの事でカロンは少し面くらってしまっているようです。
「わっ!き、来た…。来ちゃった…。 え、えっと、どうしよう!なんて言えばいいのかな、こういう時…。」
パソコンに関する知識はあるものの、やはり初心者なのか、カロンはいきなりの入室にどぎまぎしています。
そうこうしているうちに、"アカネ”さんの方が先にメッセージを入れてきました。
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☆ アカネ > あ、あの〜…。は、初めまして…。
こういうの初めてなんてキンチョーしてます。(10/28-16:52:56)
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「あ…先にあっちの方が書いてる…。あぁ、こういう場合どうすればいいんだ?えと、とりあえず…挨拶、かな…。」
カロンはどぎまぎしながら拙いキー操作でメッセージを入力していきます。
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☆ アルタイル > こちらこそ初めまして。
ぼくもはじめてなので緊張してまます。(10/28-16:55:01)
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「ふぅ…って、あっ!『ま』を一個多く打っちゃった!どうしよう!!」
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☆ アカネ > 始めまして、アルタイルさん。
”ま”、一個多く書いちゃってますよ。(10/28-16:56:36)
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「うぅ…、指摘されちゃった…。 あぁあ〜…っ。」
最初は双方共にガチガチだったのですが、少しづつ打ち解け、
それから二人はとりとめのない話をしていました。 そんな中、”アカネ”ちゃんからカロンに向かってこんな発言が来ました。
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☆ アカネ > あの〜、ちょっとお聞きしますけど、アルタイルさんって何歳なんですか?
…わたしは小学5年生なんですけど。(10/28-17:16:26)
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「年齢…かー。…なんかよく年齢をごまかす人がいるらしいけど、ここはマジメに書いたほうがいいよね。えっと…」
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☆ アルタイル > 奇遇ですねー。ぼくも小学5年生です。(10/28-17:17:21)
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☆ アカネ >うわあ〜同い年なんですか!?ちょっと嬉しいですー。(10/28-17:18:52)
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☆ アルタイル > え?同い年だと何で嬉しいんですか?(10/28-17:20:21)
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カロンのこんな質問に、”アカネ”ちゃんは少し間をおいてこう書きます。
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☆ アカネ >実は、恥ずかしいことなんですけど…、
わたし、引っ込み思案であんまり同年代の友達があんまりいないんです。
だから、何でも語り合える友達がほしくて…。(10/28-17:28:42)
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「えっ…! この子、ぼくと一緒なんだ…。 この子も…。…」
カロンはそのメッセージを見たあと、すぐさまこう打ちます…。
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☆ アルタイル > …何から何までぼくと一緒なんですね、アカネさん。
ぼくも実は…そんなようなことがあって…。
あ、あの〜…ぼくなんかでよければ…その〜…。(10/28-17:30:26)
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☆ アカネ >えっ…!? い、いいんですか!?
あ…ありがとうございますっ!!(10/28-17:32:52)
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☆ アルタイル > は、はい。今日と同じぐらいの時間ならいつでも来られますから。
(10/28-17:35:01)
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☆ アカネ >よかったぁ〜、あのっ、こ、これからもよろしくお願いしますねっ!
(10/28-17:37:52)
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「…こ、こんなにものってこられちゃった…。 ま、友達とは言わずとも話し相手みたいな人が欲しいのはぼくも一緒だし。
なんとかなる…かな、たぶん。」
*
カロンがインターネット上で知り合った"アカネ”という名の子。一体どんな子なのでしょう?
一体どんな子でどこに住んでいるのか?その答えは割と近くにあったようです…。
「……や、やった…ぁ。 こんなわたしにも、こんな話し相手が…。 ははっ、あはははは…っ。」
「…ちょっとみちるー!何やってるのー?」
「あ…っ!お、お母さん!」
「もう!パソコンが使えるようになったからっていきなり部屋にこもりだして…、
こもったと思ったら今度はそこで笑い出して…どうかしたの?」
「え…!あ、その〜…。 な、なんでもないっ。」
「ふぅん…。 まぁいいけど。 でも、何でもないっていう割には嬉しそうな顔してるわね、みちる。」
「え?そ、そうかなぁ…?」
…なんと、カロンの話し相手は、同じ学校に通うみちるちゃんだったのでした。
当然、二人は二人ともそれが誰なのかまったく分かるわけがありません。
さてさて、そんな状態のこの二人。…この後一体どうなってしまうのでしょうか…?
ネットに潜む受難・中編に続く 小説置き場に戻る