創作リレー小説 第一弾

題字 すぎたまさま


 
・・のどかな昼下がり。コメットさんは久しぶりにケースケと一緒に鎌倉の町を散歩しています。
「ねぇ、ケースケ〜。 そろそろお昼食べよっ。わたしおなかすいちゃった〜☆」 
「あぁ、そうだな。 じゃあよ、そこのラーメン屋行こうぜ。 結構ウマイって評判らしいからな」
「ホント〜? 行こ行こ☆ あ、お昼代はケースケのオゴリね」 
「な、なんでだよバカぁ! せめて割りカンに・・!」
「あー、女の人に食事代は出させるものじゃないって、メテオさん言ってたよ」
「…もう、しょうがねぇなあ…。わかったよ。オレのおごりでいいよ。その代わり、大盛りとか注文すんなよ」
「ひどーい…。でもごちそうさまっ」
 二人は海岸沿いから少し山側に入った道を歩き、ラーメン屋に向かいました。
 ところが、店の前には長い行列が続いていました・・・。
「う〜・・・・。長い行列〜・・・。」
「しょうがないだろ。ここかなり有名だから結構鎌倉以外からも人が来るんだよ。」
「ふ〜ん・・・。有名になりすぎるのも考えものだね。」
 ・・そんなことを話していると、突然前に並んでいるひとがコメットさん達のほうに首を回し、こっちを向いてきました。
「おう、お嬢ちゃん達も食うのか?ラーメン」
「え、ええ、そ、そのつもりなんですけど…」
「あーわかんねえな、ここはスープが無くなると終わりだからなぁ」
 ケースケが後から口を挟みました。
「おじさん、この辺ダメそうですか?」
「いや〜、わかんね。微妙かもしれねぇな」
 コメットさん☆とケースケが、顔を見合わせていると、前のほうから店員が、並んでいる人の数を数えにきました・・。
「あ、店員さんが来たよ」
「あぁ〜・・、こりゃもうヤバイかもな〜・・」
 ケースケは少しうつむいてそう言いました。
「えぇ〜?なんで〜?」
「確かにそこのにーちゃんの言うとおりかもしれねぇな。人数確認してるってことはよ、多分もスープがなくなってきたってこっただろうからなぁ〜・・」
「う、うぅ〜・・・。ラーメン食べたかったのになぁ〜・・」
 そうこうしている内に店員はコメットさんたちの所まで人数を数えに来ました・・・。
「えっと〜・・、ここで15人目・・、ん!?」
「・・・・?あ、あれー!?あなたは・・!」
「高井さんじゃないですか…。バイトですか?」
「あ、あれ、コメットさん☆だっけか。…いやまずいなぁ…。ここ友達のうちでさ、手伝わされているんだよ。そっちの彼は?」
「ケースケです」
「あ、そう。ふーん…。いいねぇ」
「何がですか?」
「いやいや、こっちのことさ」
「倉田さんは?」
「いや、まあ、あのその…元気だよ…」
 高井くんは恥ずかしそうに下を向きました。
「おう、この人誰だ?」
 ケースケは、小さな声で不躾に聞きました。
「この人は高井 清さん。 潮騒学園高校って学校の野球部の人で最近有名な野球選手さんなの」
「いや、ははは。 そういう風に言われると照れるな」
「ふぅん・・・」
 ケースケはあまり興味がないのか、少しそっけない態度で納得しました。
「な、なぁ〜、コメット・・さん?」
「・・・?」
「こ、ここで手伝ってる事、明日香には黙っててくれないか?。アイツ、ちょっとサボってるとすぐ怒るんだよ、“気合が足りなぁ〜い!!”ってさ」
「あはは〜☆・・って! じゃあ練習サボってここに!?」
「いや、今日はちゃんと休みの日だけどさ、オレ、バイトなんかしないからさ、見られると少し迷惑なんだよ・・・、な、頼む」
「はーい☆ わかりました」
 コメットさんは少しいたずらにウインクして言いました。
「そうだ、じゃあその代わりに 次にお客さん空いたら、君達に席を譲ってあげよう」
「え!?い、いいんですか!」
「あぁ、その代わり、明日香には秘密に・・」
「はーい☆」
「おい、ちょっと待てにーちゃん!オレは・・オレはどうなるんだ!?この子達より先に並んでただろうが!!」
「ああ、今日は大丈夫っす。まだスープ15人分位はありますんで…、あとこの二人、二人席に入れますから。 前に並んでいる方、みんなお一人様のお客さんなんですよ。すいません」
「なんだよ…。そうか。まあいいか、お二人さんよ、得したな」
 “お二人さん”なんて言われて、なんだか心の底にもやもやしたものを、コメットさん☆は感じます。
「じゃ、またあとで」
 そう言って、高井さんは離れていきました。ケースケが言います。
「あの高井さんっていう人、いいガタイしてるけど、案外気が小さいのな」
「うーん、そうかもしれないけど、ケースケみたいに鈍感じゃないんじゃない?」
「あ、お前そういうこと言うなよ。鈍感って…、オレ…、鈍感か?」
 コメットさん☆はそれには答えず、ちょっと微笑んでいました。
 
 それから30分が経過しました・・・。 行列はようやくコメットさん達の前にいるおじさんの所までになったようです。
「も〜ちょっとだね、ケースケ」
「あぁ、まったく席譲るって言ったくせに、 あの高井さんって人は何やってるんだよ!」
「・・しょうがないじゃない。こんなにお客がいるんだから、そう簡単に人を入れられるわけじゃないんだよ・・」
「まぁ、それはそうだけどさぁ〜・・。(だったら、最初からあんな約束するなよな・・)」
 ケースケは少しむくれてしまいました・・。
「次の方ー、どうぞー!」
「おっ、オレの番か。悪りぃなお二人さん。んじゃオレは先に行くぜ・・」
「あ、ハイ・・」
 前のおじさんが店に消えてしまうと、ようやく高井さんが呼びに来てくれました。
「ごめん、ごめん。遅くなったね。どうぞ。二人席のお客さん、ビール注文しちゃって、なかなか空かなくて」
「いいえ、気を使っていただいてすみません」
「いやぁ、ホントにゴメンね」
 一方ケースケは、心の中で思っていました。
「昼間っからビールってのは…、どんなやつなんだ?。まったく待っている人のこと、考えられねぇのかな…」
 それでコメットさん☆達と入れ違いに店を出ていった「二人客」は、なんと50代くらいのおばさん二人連れでした。 
「ここのラーメンはホントにおいしいのよ。あら、もう45分もしゃべっちゃったわね。ホホホ…。話していると時間がわからなくなっちゃうわねぇ…」
 それを聞いていたケースケは、二人のおばさんをじっと見ると、コメットさん☆のほうに向き直り、何事か言いたそうな顔をしました。
「・・・・?どしたのケースケ。何か言いたそうな顔して」
「あ、あぁ・・。 お、オレあのオバサンに文句言って来るわ」
「えぇぇ!?ちょっ・・!い、イキナリなんで・・?」
「わかんないのかよ!? あのオバサン達のせいでオレ達50分ぐらい待たされたんだぜ!?何も言わないで済む問題かよ!?」
「そ、それはそうだけど・・・」
 コメットさんはケースケを止めようとは思いましたが、お昼時でしかも50分も待たされたせいか、 止めるのをためらって、そのままケースケを行かせてしまいました・・・。

「ちょっと、オバサン!」
「・・・ん? あ、あぁらちょっとアンタ、イィ男だね!」
「は、はい・・・?!」
「オバチャン達、ちょっとトキメイちゃったよ」
「おぉぉぉぉおお!? そ、そうじゃなくて!」
「ん・・・?何かオバチャン達に用かい?」
「な、何って・・!自分が何したか分かってんかよ!?」
「な・・、オバチャンが何をしたっていうのよ!」
「あのな〜! アンタらがビール注文してぺちゃくちゃ話ししてるもんだから、後ろのお客さんみんなが困ってるんだぞ!? それで”何をした”だって!? ふざけんな!」
「け、ケースケ!そこまでいわなくても・・!」
 あまりに感情的になるケースケをコメットさんは必死になだめようとしました。 それで少しはケースケの怒りはおさまったようです。
「・・わ、わるかったわねぇ・・。 謝るヮ」
「・・ま、まぁ、謝るなら別に・・」
「ほらねオバチャン達、話し始めると止まらなくなるタチなのョ。 ほら例えばサ・・」
「・・・?(い、いやな予感・・)」
「この前のそうサ!。壊れかけた橋のそばにこの橋渡るべからずって書いてあったのョ。それなのにちっこい坊主頭の子がサ渡ろうとしてるのョ。 オバチャン親切に“アブナイョ”って言ったのに聞きゃしないんだからネ。“ハシじゃなくて真ん中をわたればいいんです”とか言いやがるワケ。 ジョーダンじゃないっつーの!ホントナマイキなコト言ってんじゃないョオバチャン叩き落としてやったネまったくザマァないやネいやホント・・」
「あ・・、あのう! ちょ、ちょっとオレの話を・・!」
 さっきまではヤル気マンマンのケースケだったのですが、オバチャンのあまりのしゃべりっぷりにその自信もどこへやら。
 そしてさらに、もう一人のオバチャンも口を挟みます。
「あぁら、大場さん。 ズルイわァ・、一人だけこんなカワイイ子とお話してぇ」
「は・・・、は・・?」
「アラアラ悪かったヮ久代さん」
「ちょっと聞いてョお兄さぁ〜ん・・」
「え・・!?あ、あ・・・?!」
「いつもそうだョ!。オバチャンが小学生のときだって、そう!。クラスで飼ってたハムスター、オバチャンが当番のときに死んでるのサ。あだ名は ”シニガミ” だったねェ。もういいョ。オバチャン開きなおったョ。アンタにも呪いかけちゃおうかネ。あと3分で死ぬ、イヤむしろすでに死ん・・・」
 ・・ケースケは心の中で思いました・・。「高井さんがこのオバチャン達をどけられなかった理由・・、今ハッキリ分かった気がする・・」と・・。
 そして、その時ケースケの脳裏に、大切な友を失ったかのような万感の想いが飛来していました・・。
 ケースケが戻ってきてみると、もう行列はなくなっており、コメットさん☆が一人待っていました。
「ケースケ、もうスープなくなって、ラーメン食べられなくなっちゃったよ。…だからやめてって言ったのに…。ばか。」
「…うっ、た、高井さんは?」
「もう店ののれん外して、中に入っちゃったよ…。」
 しまった…、ケースケがそう思ったときには、もう遅かったのです。その時ケースケとコメットさん☆の後から、聞き覚えのある声がしました。
「あーら、カリカリ坊やとその他一人。なーにやっているのかしら?。って見てたわよったら、見てたわよ。」
  いつの間にかそこに立っていたのはメテオさんでした。
「な、なんだよ。お前か…。なんの用だよ?」
「メテオさん…。」
「カリカリ坊や、あなた鈍感だわ!。仮にも女の子を待たせて、おばんの相手なんてしている場合じゃないんじゃなくて?」
「メテオさん、もういいよ…。」
「コメット、こんな鈍感キングにくっついていても、しょうがなくってよ。いいこと、カリカリ坊や、あなた、 女の子といっしょに行動する資格も何もないってことよ!」
「…か、カリカリ坊やってなんだよ。坊や呼ばわりするなよ!」
「だってそうじゃない。自分のことしか考えられないようなのは、坊やで十分だわ!」
「…うっ…。」
 年下の気の強い女の子に、痛いところを突かれたケースケは、押し黙るしかありませんでした。
「さ、コメット行きましょ。せっかくの休みをこんなカリカリ坊やと一緒にいるなんてもったいないったらもったいないわ!」
「う・・・・・・。 ・・ねぇケース」
「・・行けよ。 行ったらいいだろう・・」
「へ・・・・?」
「お前だってそうなんだろう!? 女の子を待たせて、おばさんのおしゃべりにつきあっているような男は嫌いなんだろ!?」
「ちょっ・・!ケースケ・・」
 ラーメンを食べ(させてあげ)られなかった事、メテオさんにバカにされた事で、ケースケはコメットさんに怒りをぶつけてしまいました・・。
 そのためコメットさんもさすがに怒ったらしく、声を荒げてこう言いました。
「何よッ!ケースケのバカ!!! もうケースケの事なんか・・、知らない!!」
「・・・・・! フン!・・勝手にしろ!」
「・・・ッ! バーーーーカッ!!」
「よく言ったわコメット。じゃあわたくしの家でお昼でも食べましょう。 さ、来なさい」
「う、うん・・。 ごちそうになります」
「ホントは・・、止めてほしかったのに・・、な」

後編に続く

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