ここはトライアングル星雲 ハモニカ星国。 …の外れにあるかんごく星。 …星雲内で何か大きな犯罪を犯した星ビト、
星の子を収容し、優しい輝きに満ちた状態に戻すまでその身を拘束しておく施設です。
とても物騒な場所なのですが、トライアングル星雲に罪人なんてそうそういないため、
収容されている人も少なく、問題などほとんど起きません。 …しかし、今日は…。

「看守長さまッ! た…たたた、大変でありますッ!、大変でありますーッ!!」
「…騒がしいな? …お前は誰だ?」
「ほ、本官ですか!? 本官、今週の看守当番でありますッ!…ってそんな事をしゃべっている場合じゃないでありますからしてッ!」
「なんだぁ? ずいぶんと穏やかじゃないじゃないの。 話しな。」
「はいッ、実はッ!!……。」

「な…なんだと!! あ、”アイツ”が逃げた…だと!?」
「そうなのでありますッ!…。 さっき昼メシを持って行ってときにスキを見て…”ガツン”とやられちまったのでありますからしてッ!」
「何だと…。 なんてこった…”アイツ”を逃がしちまうとは……。」
「も、申し訳ないでありますッ!! このたびはあの…」
「…そんなことよりも早く捕まえるぞ。 …アイツを逃がしたままほっとくわけにはいかん!
おい、お前!奴の行き先についてなにかないのか!?」

「は、はッ! どうやら奴はここから相当遠くの惑星…”地球”と言う星に逃げたハズでありますッ!」
「ちきゅう…か。 またヤッカイなところに…! あそこには我が国の姫様がご滞在中だぞ!」
「……ど、どうすればいいのでありますかッ! 本官、典型的な"指示待ち世代”でありますからしてッ!!」
「決まってんだろ!、”奴”が地球で動き出す前に捕らえる! じゃなきゃ、俺たちの首が飛ぶ!!」
「は…、はいッ!!」


イタズラ悪魔ビト☆ 〜人を外見だけで判断しちゃダメ〜

 それから数時間ほど後。 …ハモニカ星国とカスタネット星国の姫様が滞在している地球では、 特にいつもと変わらぬ平和な一日が始まっていました。 空は雲ひとつ無い晴天、 街では子供たちのはしゃぐ声が色々な所から聞こえ… おや、あそこには…。 「いってらっしゃーい! 気をつけてねーっ!」 「がんばってだボー!」  ハモニカ星国の姫様コメットさん☆と、そのお供ラバボーです。 この二人(実質コメットさん一人ですが)お世話になっている藤吉家の双子、ツヨシくんとネネちゃんのお見送りをしていたようです。 「さぁて、二人の見送りも終わったし、 …どーするかボ姫様?」 「じゃあ、景太朗パパに了解とって、どこかに遊びに行こっ。」  と、いつものようにお気楽と言いましょうか、ノー天気といいましょうか……。 …コメットさんの周りはいつもと変わらず平穏なようです。 …しかし、ここで気づいておくべきだったのかもしれません。 そんな日常が…ある者のせいでメチャクチャになることに…。 「さー、この坂を上ればすぐそこだよー!」 「姫さま…待って、待ってだボー! …ハァ、ハァ、はぁ……。 姫様ー、早すぎだボー。」 「もー、ラバボーったら最近運動不足なんじゃないのー? 前はラバボーのほうがわたしよりも早かったじゃん、走るの。」 「うぅ…確かに最近はラバピョンのとこでぷるぷるごはんを食べてばっかりで、全然運動してなかったボー…。」 「ダメダメそんなんじゃ! …もっと運動しないと”せいかつしゅーかんびょー”になるよ?」 「…なんだボ?それ?」 「さぁ…。 何か景太朗パパがそんな事を言ってたから… んー…?」  コメットさんは坂の上に誰かが立っているのに気づき、足を止めました。 …コメットさんの眼下にいたのは…。 「あ、メテオさん。おはよ〜。めずらしいね、今日はどうしたの?」 「………。」 「…?どーしたの? ねぇ、メテオさんってばー。」  何故かメテオさんは、コメットさんを目の前にしながら、口を開こうとしません。 …普段なら”〜ったら〜じゃないのよ〜”とつっかかってくるのですが。 「…!? ひ、姫様ッ! 早くそこから離れるボ!! …なんだかイヤーな感じがするボ!!」 「? へ? い、いきなりどうしたのラバボー?」 「いや、ボーにも良く分からないけど… 今日のメテオさまから… 別人の輝き・・・・・を感じるボ!」 「べつじん…それってどういう…」  と、ラバボーがそう言い放った途端、メテオさんは突然口を開き、こう言いました…。 「…フフッ、よくボク・・がメテオ王女でない事に気づいたねぇ。 …流石は、ハモニカの王族の…というわけか。」 「…”ボク”!? …あ、あなたは…一体!?」 「まぁ、もうばれちゃったらしょうがないね。 …ボクは星ビトさ。 …”悪魔ビトって言うんだ”。」  そこまで言うと、メテオさんの後頭部の方から何かが抜け出してきました。  …自分を”悪魔ビト”と名乗るその者は…確かにそのような出で立ちをしています。 …西洋の悪魔のような角を頭部に二本生やし、 漆黒の衣装を身にまとい、背中には同じ色の羽根を生やしていました。 「うわぁあ!メテオさまの中からだれかが…!」 「…あくま…ビト? …あなたも星ビト…なの?」 「そうだよ、ハモニカ星国の姫様。 …まぁ、ちょーっと普通のヤツラとは違うかな?ボクは”特別”だから…ね。」 「あなたはいった…」  と、そこまで言いかけた時、ラバボーが声を荒げて言いました。 「あ、あんた! 一体何者なんだボ!? …何者かは知らないけど、ボーの姫様に何かするようなら…」 「あん…? なんか言ったかい? …そこのボールみたいな奴ッ!!」  悪魔ビトと名乗る者は、ラバボーの問いかけに対して、ギロっとにらんで答えました。  その姿はまるでよくあるドラマのヤクザがにらんでいるかのよう。 …ラバボーはブルブル震えだしました…。 「ら、ラバボー…。かっこ悪いよ…。」  「ハッ、情けないお供さんだねぇ。 …じゃ、顔見せも終わったことだし、そろそろ失礼するよ。」 「!? ま、待って! アナタはいったいどこに…!」 「…まだ行く先は決めてないね。 …ただ一つ言えることは… これからこの街が”ボクのイタズラと混乱でめちゃくちゃになる”ことだけさ。」 「あ…ッ!! …いっちゃった…。 ど、どうなるんだろう…これから。  …あ、そうだ!とりあえずメテオさんをどこかに運ばないと!」  さすがに風岡家までは遠くて行けないので、コメットさんはとりあえず藤吉家までメテオさんを運ぶことにしました。 …ラバボーはその後すぐにティンクルスターに戻りましたが、ティンクルスターの中でブルブル震えています。 「ね、ねぇ…ラバボー。 …あの”悪魔ビト”って、一体何者なの? しらないの?」 「うぅ…うぅう… こわい、こわいボー!」 「ラバボぉー…(一体何なのかしら…あの星ビトさん。 それに…”めちゃくちゃにする”って一体…?)。」
「景太朗パパー、ただいまー。」 「あぁ、お帰りコメットさん… ってそのおんぶしている女の子は…、メテオ…さん、だっけ? …ど、どうしたんだい?」 「実はー… あ、うー…。えぇ〜っと、その〜…。 …道端でメテオさんが突然転んで頭をぶつけちゃって! …そ、それでウチで手当てをしようと…」  さすがに”悪魔ビトに肉体をのっとられていました”などとは言えず、コメットさんはその場で取り繕うように言いました。 「ふぅん…。 わかったよ、今怪我の手当てに使えそうなものを用意するから、とりあえず客間の方に行っててくれないか?」 「あ、はい。」  景太朗パパは多少不審に思ったようですが、とりあえず納得したようです。 コメットさんは言われるがままにメテオさんを客間に布団を敷き、そこにメテオさんを寝かせました。 「とりあえずこれで一安心だね。 ね、ラバボー…。 ねぇ、ラバボー…」  ラバボーはまだティンクルスターの中でブルブル震えています。 …不審に思ったコメットさんは尋ねます。 「ねぇ、”悪魔ビト”さんって…いったいどんな星ビトなの?」 「…そ、それは〜…。」 「それは…、この私が説明します、コメットさま。」  すると突然、メテオさんのティンクルスターからムークが飛び出してきました。 「あ、ムークさん! おはよう〜。」 「いや、そんなことよりなんてムークさんがここに?」 「姫様が行く所、どこまでもお供をするのが我らの役目であろう?ボー。 ラバピョンにうつつをぬかすお前とは違うのだ!」 「う…。」  ムークの一言をラバボーは言い返すことは出来ません。 …よほどラバピョンの所に入り浸っているのでしょうか。 「ねぇムークさん。 …なんで今までそのティンクルスターの中にいたのに、今まで出てこなかったの?」 「…実はー…。朝起きたら、奴…悪魔ビトの力でティンクルスターから出てこられないようにされてしまって〜。 悪魔ビトが姫様から離れたおかげでようやく外に出られたのでございます〜。」 「そ、そうだったんだ…。 で、話は戻るけど…”悪魔ビト”さんって一体どんな星ビトなの?」 「私はカスタネット星国の者ですから、あまり詳しい事は存知ませんが…。 奴は元々普通の星ビトだったそうです。 …しかしあの形相のためか、他の星ビトと上手く接することが出来ずに、 ことあるごとにいたずらを起こし、ついには大きな犯罪に手を染めて、ハモニカ星国のかんごく星に入れられた星ビトなのです。」 「ふぅん…。つまりものすごーい悪人って事なのかボ? ムークさん。」 「そういうことになるな。 あー、おほん。…奴の怖い所は”相手の身体に入り込んで、精神を乗っ取る”能力をもっていることです。 そのせいでハモニカの者達も相当苦戦したと聞いております。」 「ふぅん…でもなんで悪魔ビトさんは地球まで来たんだろ? …脱獄しただけじゃマズイ、と思ったのかな?」 「うぅ〜む。 …もっともな質問ですね。 …わざわざここに来る理由なんて…。」 「謎だボー。」  そこまで考えていた時、コメットさんは悪魔ビトが言っていた”あること”を思い出します。 「”ボクのイタズラと混乱でめちゃくちゃになる”…。」 「? …どうなされたので?コメットさま。」 「最後に悪魔ビトさんが言ってたの。 あ、ちょっと待って!…まさか、悪魔ビトさんがここに来た理由って…。」 「”星国でできなかったイタズラを、この星で…”ってことかボ? そ、そんなメチャクチャな…!」  ラバボーがびっくりしてコメットさんに聞き返します。 「いや…、まだわかんないけど…。 もしもそうだったら大変! こんな所にいる場合じゃ…。」 「そ、そうですね…。なにせ奴は”人の精神を乗っとり”ます。 …人に乗り移って悪事を…!」  と、皆で悪魔ビトの話をしているうちに、景太朗パパが、手当て用の道具をもって戻ってきました。 ラバボーとムークは急いでティンクルスターの中に隠れます。 「…はい、これだけあれば十分だと思うけど…。 コメットさん、さっきから誰と話していたんだい?」 「え!?あ〜…。べ、別に何も。 …景太朗パパの空耳なんじゃないですか?」 「そうかな〜?確かに何かの声が聞こえた気がするんだけどー…。」 「あ、そうだ。景太朗パパ。 …わたし、ちょっと用事があって…出かけなきゃいけないんです。 だから、メテオさんの手当て…お願いしてもいいですか?」 「ん…?急用かい? …なんだか深刻そうな顔をしてるね。 …一体何が…。」 「……。」  コメットさんは何も答えることが出来ず、ただキリっとした顔で景太朗パパを見つめます。 「…”聞くのはヤボ”って事かい? …わかった。 とりあえずメテオさんは任せて。 …家のほうにも連絡を入れておくから。」 「ごめんなさい。お願いします。景太朗パパ…。」 「ま、君はなにをやるかは知らないけど、…なるべく早く帰っておいてね。」 「はい。 …いってきまーす!」  こうして、コメットさんは悪魔ビトのやろうとしていることをやめさせるべく、街へとひた走るのでした…。
「…勢いで出て来ちゃったけど…どうやってその悪魔ビトを探すんだボ?姫様〜?」 「それは簡単だよ。 …悪魔ビトさんは”街をイタズラでメチャクチャにする”って言ってたから、 何かおかしなことが起きているところに行けばいいんだよ。 …多分。」 「た、多分って…。」  コメットさんのテキトーな返事にラバボーはちょっと困り気味。 しかしコメットさんの考えは意外にも当たっていました。 …その証拠に近くから誰かの悲鳴が聞こえます…。 「ほら! 誰かの悲鳴が…」 「いや、悲鳴が聞こえたからって、本当に悪魔ビトかどうかは…。」 「…と、とにかく!! 早く行かなくちゃ!」  声がする方に行ってみると、そこは商店街でした。 …いたるところから悲鳴や罵声が聞こえます…。 「こ、これって…!」 「…悪魔ビトの仕業だボ。 …まさかひめさまの勘があたるなんて…。」 「…ちょっとアンタ! …何をするんだい! やめないと警察を呼ぶよ!?」 「へん!ケーサツが何だ!! …ボクはボクのやりたいようにやるのサ!」  その声は近くの八百屋から聞こえてきました。 …コメットさんはすぐさま駆けつけます。 「い、一体どうしたんですか!? …あッ!」  そこでは、変な男が八百屋の商品をかたっぱしから壁や床に叩きつけているという、とても奇妙な光景が広がっていました。 コメットさんは少しとまどったのですが、すぐさまその男に注意を促します。 「な、何してるの!? …そんなことをしたら野菜を作った農家の人や八百屋さんが迷惑するんだよ!」 「あー? 誰に向かって口を… ほぉ、これはこれは、ハモニカの姫様か。 …よくここがわかったね。」 「なんでこんなことをするの! …みんなの迷惑になるでしょ!?」 「フン、君タチには関係ないね。 …ボクはボクのやりたいことをやるだけだよっ。 …じゃあね!」  そういうと悪魔ビトは、男の体から抜け出し、街の奥の方へと飛び去ってしまいました…。 悪魔ビトが体から抜けた瞬間、男は床にばたんと倒れます。 「あ、逃げた! …追いかけるよ、ラバボー!」  …コメットさんも急いでその後を追います。 その様子を見て八百屋の店主は意味が分からないとばかりに ポカーンとしています。しかし、すぐに我に返り、倒れている男に向かってこう言いました。 「う、うぅ〜ん…。 私は一体何を…。」 「ちょっと、待ちなさいアンタ! …よくもウチの商品をこんなにも…しかも高級な果物ばかりダメにして!」 「え…!? わ、私が何か…?」 「しらばっくれてるんじゃないよ! 出るとこ出てもいいんだよ!? …分かってるのかい!?」 「ちょ、待ってください!! 私は何も…! あぁぁあぁあ…!!」 「…ねぇ、ラバボー。 後ろの方で悲鳴が聞こえたような気がしたけど…なんなんだろ?」 「さぁ? …これだけ騒ぎになってるんだから…。 あ、姫様! …あっちの方から悪魔ビトの輝きが!」 「…え! 悪魔ビトさんの輝きって…ラバボー、分かるの?」 「そりゃあ分かるボー…。 でもアレは輝きというよりは単なる”負のオーラ”みたいなものだボ…。」 「そ、そうなんだ…。 で、悪魔ビトさんはどこに…?」 「西の方角だボ。 …あっちの美容室さん!」 「いやああああああっ!! …何よこの髪型!! 誰がこんな髪型にしてくれって言ったのよ!?」 「なんじゃこりゃあ! も、モヒカンじゃないか! ど、どうなっているんだよ!?」 「キャー!! アタシのイカリングが天パにー!!! アァァ…!!」  思ったとおり、店の中は大荒れ。 店の客は"自分が頼んだ髪型と違う”と大混乱です。 「うあああああ…! た、大変なことになってるボぉ…。 でもみんなの髪型は面白いか」 「もう!そんな事言ってないで、悪魔ビトさんは…どこにいるのっ!?」 「…ふふ、もう追いついてくるなんてね…、まったくしつこいね。」  混乱している客の中をかき分けて、一人の従業員がコメットさん達の前にやってきました。 「もう…やめて! なんでこんなことを!」 「だからさっきから言ってるだろ?君には関係ない、ボクはボクのやりたいようにやる、って。」 「それがみんなの迷惑になっているってのが分からないの!? …おねがい、やめて!」 「…うるさいな! …さっきから言っているだろ!君には関係ないんだ! …ほっといてくれ!!」 「……ッ…。」 「ひめさま…ひめさま! 何ボケーっとしてるんだボ!?」 「え!?あ、うん……っ! …い、行っちゃった…。」 「姫様!なんで悪魔ビトを逃がしたんだボ!? 姫様なら簡単に…。」 「う、うん…。 ご、ゴメン…。」 「…?どうしたんだボ? なんだか様子が…。」 「あ!な、なんでもないよラバボー! わたしたちも早く後を追わないと!」 (…なんだろう? さっきの悪魔ビトさんのあの感じ…。 ”さびしさ”?)
それからコメットさんは悪魔ビトの悪事をやめされるため、 駅東口の段葛、鶴岡八幡宮、北鎌倉駅前の「円覚寺」(えんがくじ)、「銭洗弁財天」…など、 (何故そんな所を回ったのかはさておいて)鎌倉の有名どころを駆けずり回りました。 しかし、相手も素早く、追いかけっこは終わりのなさそうなイタチごっこと化していました…。 そして日没、コメットさんはようやく悪魔ビトを街の外れの路地裏に追い詰めました。 双方ともに疲れ果てたのか、肩で息をしています。 「はぁ…はぁ… し、しつこい、しつこすぎるっ!! …なんでそこまでしてボクの邪魔をするんだッ!!!」 「ハァ…ハァ…。 なんでもなにも…、みんなのめいわ…」 「うるさいっ!! そんな事知るもんか!! 何で君はそんなにも人のことばかり考える!! 人のことなんでどうでもいいじゃないか! …信じられるのは自分だけなんだから!」 「え……っ!?」 「ボクは誰も信用しないッ! …あの時だってそうだった! …僕は何も悪くなかったんだ! でも、でも…あいつらは…あいつらはッ!! ボクのこの姿を見て…!」 「…! え?な、何があったの…。」 昔から僕ら悪魔ビトの一族はこのまがまがしい格好から、他の星ビトから嫌われていたんだ。 他の星ビトたちに食って掛かったことも、人様の迷惑になるようなことも何一つしてはいないのに…。 でも、ボクはそれでもいいと思ってた。 …どうせ憎まれるなら憎まれっぱなしの方がいい、 変に助けを求めるほうがよっぽど苦しいんだ…って思うようにしたから。 でもボクはさみしかった。 …だから、ことあるごとにイタズラを起こしてみんなに注目されようとしたんだ…。 …でも、そのせいで…。 「?…一体何があったの?」 「今から10年ぐらい前、ハモニカ星国で”法皇の緑(ハイエロファント・グリーン)”と呼ばれる珍しい宝石が盗まれるという事件があった。 …星国が総力をあげて探したけど、結局犯人は分からなかった。…けど、事件はすぐに解決してしまった。 何しろ…”その宝石がみつかってしまった”わけだから。」 「盗まれた宝石が…見つかった? いったい、どこで…。」 「それは… この”ボクの家”からだッ!! そしてボクはかんごく星に幽閉させられたんだ!」 「え…ッ!? で、でも今"犯人は分からない”って…。」 「そうさ!犯人はわからない! …ボクじゃないんだから!! ボクは盗んでなんかいなかった! ただ… 朝起きたら、家のリビングにその宝石が転がっていただけだったのに! …誰も信用してはくれなかった!」 「そ、それは誰が聞いても悪魔ビトさんがハンニ…」 「ラバボー、ダメ!ちゃんと聞く!!」 「…この姿形だから!誰も味方がいなかったから! …ボクは誰にも助けられることなくかんごく星へと入れられた! このキモチ、この痛みが君に分かるか!? …誰一人として味方のいない者のキモチが!!」 「……。」  コメットさんもラバボーも何の言葉も出ませんでした…。  彼女達には、ただ悪魔ビトが唇をぶるぶる震わせて悲しむ様を眺めていることしかできなくなっていたのです…。  するとそんな時…、突然彼女らの前に”星のトレイン”のような列車が現れました。 …そのトレインがそこに止まるとともに、間髪いれずに中から二人の人が現れて、こう言いました。 「う、う、う、動くなでありますッ!! う、う、う、動いたらこの星力銃が火を噴くでありますッ!! …じ、自分はあまり銃は使い慣れていないでありますからして、ど、ど、どこに飛ぶか自分でも想像がつかないでありますからしてッ!」  現れたそのうちの一人は冒頭に登場していたあの”看守”でした。 脱獄犯を前にして、 さらにはいつも使わない銃をつきつけて、自分自身が混乱しているようです。  そんな彼を尻目に、もう一人の男が出てきて、悪魔ビトにこう言います。 「え〜、あ〜、うん。 …とりあえず両手を上げて大人しくしろー! それと、我が国の姫様から離れろ! さもなくば、それこそ〜…アレだ、ぶちのめす!」 「な…なッ! お前達は! …そうか、このボクを捕まえに来たんだな!?そうはいくか!」 「成程、抵抗する気マンマンか…。 ならば、こうしてくれる!」 こ、このーッ!! う、うわぁああっ!!」  …と、言った瞬間、その男はロープのようなものを出して、悪魔ビトを一瞬の内に縛り上げました。 「何をするッ!や、やめろー!!」 「地球時間 午後5時47分! かんごく星からの脱獄者を確保したでありますッ!!」 「あぁ、そうだな。 …なんとか被害の少ない内に確保できたようだ。 …よかった…。」 「……?」  …突然やって来た二人に、コメットさんとラバボーは驚きを隠せません。 とりあえずコメットさんは二人に話しかけてみました。 「あ、あの〜…。 あなた方は…。」 「あ、あ、あ…お、お初にお目にかかるでありますッ! 本官、今週のかんごく星看守当番でありますからしてッ! ほ、ほ、ほ本官!…お会いできて光栄でありますからしてッ! ラ・コメット・ハモニカ王女様ッ!!」  …看守はコメットさんを見て、早口で一連の言葉を言った後、ビシッと敬礼をしました。 「え!?あ、いや、その〜…。 ど、どういたしまして。こちらこそよろしく…」 「こ、これはこれは申し訳ありません王女様。 …我らのミスでこんなヤッカイな事に巻き込んでしまい…。」  今度はもう一人の男、「看守長」がコメットさんに話しかけてきました。 「あ、あの〜…あなた方はハモニカ星国の人…なんですよね? どうしてここに?」 「そ、それが〜…。」 「じ、じ、じ実はッ!本官がそのッ! …そこの悪魔ビト…でありますか!? …そうそこの悪魔ビトでありますッ! 彼を逃がしてしまいましてコレ本官!」 「…? え、え!?」 「…おい、オレが言うより先に話すんじゃない! …実は、そこのろくでなしな看守がそこの悪魔ビトを逃がしてしまいまして…。 見たところもうすでに王女様も悪魔ビトの被害に遭われている模様。 …本当に申し訳ございません! …このように悪魔ビトは確保いたしましたので、なにとぞ、なにとぞ…。 では姫様…これにて失礼…」  と、足早に去ろうとする看守長を見て、コメットさんは間髪入れずにこう聞きました。 「あ、あのっ…。悪魔ビトさんは…この後どうなるんですか!?」 「…? 面白いことをお聞きになりますな。 それは…」 「今回のように脱獄という大罪を犯した星ビトは、かんごく星よりもさらに過酷な環境である "ゼツボーの黒い星”へと入れられ、輝きが完全に消えるまで幽閉するのでありますッ!!」 「え……ッ!」 「むっ?王女殿は知らなかったでありますかッ!? それがこの星国のオキテなのでありますからしてッ!!」 「こ、こら…!余計な事を言うんじゃない!!」 コメットさんは、看守長の言葉を聴いた後、少し考えてこう言いました。 「待ってください。 …星国につれて帰る前に、悪魔ビトさんと二人きりで話をさせてください。」 「な…ッ!? 何言ってるんだボ姫様!?」 「何ですとォ!? …正気でありますか、王女殿ッ!?」  コメットさんの意外な発言に、ラバボーと看守はびっくりしてしまいました。 しかし看守長だけはまったく動じず、こう切り替えします。 「ふむ…、何故そのような真似を? …コイツは非常に危険なのですぞ。それをご承知で?」 「…えぇ。 でも、大丈夫ですよ、多分。」 「……。」  悪魔ビトはコメットさんのその言動が理解できないという感じの表情でコメットさんをみています。 「いけませんか? …すぐに済みますから。」 「…ま、我らの国の王女様たっての望み。私が異を唱えることなど出来はしません。 …どうぞ。」 「じゃあまず…悪魔ビトさんをしばっているそのロープをほどいてあげてください。」 「…了解しました。」  そういうと、看守長はロープにかかっていた星力を解いて、悪魔ビトを自由にしました。 「か、か、か看守長さまッ!?いいのでありますかッ!? 仮にも奴は脱獄犯でありますからしてッ!!」 「…我が国の姫様たっての望みだ。 …変に断ったらオレ達のほうが危ない。 それに…一旦自由にしたといえど、オレのこのロープはいざとなったら無音動作で素早く奴を縛り付けられる。」 「は、はぁ……。」 コメットさんの一言により解放された悪魔ビトは、そのままコメットさんの方へ寄って来ました。 コメットさんもまた悪魔ビトのほうへと寄っていきます…。 「…どういうつもり? まさかこんなことで罪滅ぼししたとでも思っているのかい? ボクがこんなことで満足するとでも思って…」 「ううん、別に罪滅ぼししたいわけじゃないよ。 ただ、わたしは… ”あなたが黙ってゼツボーの黒い星に入れられるのがガマンできない”だけ。…エトワール☆!」 「…んなっ!? …し、しまった!オレのロープが!」  コメットさんは一瞬のスキをついて、看守長の星力ロープに星力をかけて使えなくしてしまいました。 そしてすぐに悪魔ビトさんの手を引っ張ってラバボーのほうへと走りました。 「ラバボー、飛んで!」 「え!?と、飛ぶのかボー!? で、でも〜…。」 「いいから! …どこでもいいから早くっ!!」 「う〜…え〜…あ〜…わ、分かったボ! じゃーんぷ!!」 「悪魔ビトさん!しっかりつかまって!」 「え!?あ…あぁあー!!!」  こうしてコメットさんは悪魔ビトを抱きかかえたままラバボーに飛び乗り、そのままその場を離れてしまいました。 看守と看守長はあまりのことにポカーンと口を開けたままになっています…。 「ま、まさか…あの姫様があんな暴挙に出られるなど…!」 「看守長さまッ、看守長さまッッ!どうするのでありますかッ!? 本官、典型的な"指示待ち世代”で…」 「うるさいわッ!! 追うに決まってるだろう!!」
「うわあああああああああ… な、何をするんだ!離せ、離せー!! う、うぅう…変な体勢だからキモチ悪い…」 「なーんだ、悪魔ビトさんって飛べるのに、何か他のものに乗って飛ぶのには慣れてないんだね。」 「…キモチ悪くなるのは勝手だけど、ボーの上で吐くのだけは勘弁だボー。」 「はぁッ…はぁッ…。 さ、さぁ何のつもりなのか話してもらおうか…!?」 「何のつもり? …どういうこと?」  コメットさんはちょっといたずらっぽく聞き返しました。 「とぼけるな! …何で君はボクを助けたんだ?」 「それは… え、えぇ〜っと…、なんと…なく。」 「は、はぁ?」  コメットさんの不可思議な回答に悪魔ビトは思わず聞き返してしまいました。 「だ、だって… あなたがその宝石を盗んでいないのなら、星国につれて帰られてゼツボーの黒い星に入れられるのは間違ってる! …って思って。」 「……!」 「藤吉憲法第48条!…困ったときはみんなで助けあう! この星で出会った家族が教えてくれたこと。 あなたは"誰も味方がいない”って言ってたよね。…だったらわたしがなる!…あなたの味方…友達に。」 「…!? な、な、な…ッ。」 「あ、はは…。やっぱりいきなり"友達になろう”って言ってもビックリするだけだよね。 …ま、返事はまた後で…」 「な、何でだ…。何で君は…あなたは!ボクにそこまで…そこまで…!」  …まだその顔には不信感があるものの、悪魔ビトの目には涙が浮かんでいました。そしてコメットさんは、一呼吸おいて、こう言いました。 「わたしは…ハモニカ星国の王女だもん。 どんな星の子も分け隔てなく接するのは王女の務めでしょ? えへっ☆」 「……!。 う、う、う…うわああああーん! ごめんなさい!ごめんなさーい!!」  悪魔ビトはコメットさんの言葉がうれしかったのか、感極まって泣き出してしまいました。 コメットさんは悪魔ビトのアタマをやさしくなでてあげました。 まるで、沙也香ママがツヨシくんネネちゃんにするように。 「もう…泣かなくてもいいんだよ。 もう、あなたは一人じゃないから。」 「ううぅ…ヒック…。 あなたは…姫様は…、本当にボクの味方…お友達になってくれるの?」 「うん。 …だから、もう悲しまないで。 …さ、早く逃げよ。ほとぼりがさめるまでこの街で暮らそうよ悪魔ビトさん。 この街の人たちはみんなやさしいから大丈夫だよ。…ね?」 「う、うん…。 !! …い、いや…やっぱりそれはいいよ姫様。…だって…。」 「? なんで? 逃げられないんじゃないかって心配してるの? 大丈夫だよ。 ラバボー、こう見えても結構スピード出せるもの。 …星のトレインなんかには負けないって。」 「姫様…さすがのボーも星のトレインには勝てな… いぃいっ!?」  何かに驚いたラバボーは、すぐさま止まってしまいました。 …載っているふたりはあやうく落ちそうになります。 「わ…わわわわわ!!」 「ど、どうしたのラバボー!! 急に止まったら危な…あっ!!」 「…動かないでいただけますかな?姫様…。」 「ほ…星国の警察ビト! しかもこんなにたくさん…!!」  なんと、ラバボーたちはハモニカ星国の警察ビトに包囲されてしまったのです。 …完全に逃げ道を塞がれ、 どこにも逃げようがありませんでした。 …それからすぐ、さっきの二人もそこに現れました。 「み、見えたぞ…って何ィ!? あれは本国の警察ビト! なんでこんな所に!?」 「あー、それはッ!さっき看守長殿が”追うぞ”と言った時に、本官が本国へと応援を要請したからでありますッ!!」 「なんだとッ!?何でそんな事をしたんだッ!?」 「それはッ! この”脱獄犯・100%完全確保マニュアル”のP56に ”自分達で手におえなくなったら、応援を要請しろ、とかいてあるからでありますッ!!」 「…な、な…ッ。」  それを聞いた看守長は、怒る気も失せてガクーっとしてしまいました。 「いいか。…オレ達は"秘密裏”に悪魔ビトを捕らえるためにここまで来たんだ! …それをッ!わざわざ本国の連中に伝えてどうする!?」 「…あ、あぁーー!! ほ、本官!うっかりしていたでありますッ!!」 「(今頃気づいたのか…?)と、とにかく…このことがばれたら事だ。…何とかして取り繕… いぃいーッ!!」  …看守長は警察ビトの車の中から出てきた人物を見て完全に立ち尽くしてしまいました。 …その人物は…。 「…ひ、ヒゲノシタ…侍従長!!」 「だ、誰…でありますかッ!? あのヒゲのお方は?」 「ば、バカッ!…下手な事言うんじゃない!! …あのお方はこの国の司法のトップだぞ!? そんなお方が…なんで…! あぁあ!もうおしまいだよオレ達!!」 「……そ、そんなにすごいのでありますか? 本官にはそこまですごくは見えないのでありますが…。」 「と、とにかく逃げろ! …見つかったら俺達の生活が…!」  と、言って二人は逃げようとしましたが、…わざわざ星のトレインのようなもので来ているのです。 …見つからずに逃げることなど不可能でした。 …すぐに警察ビトに取り押さえられてしまいました。 「お前達も…だ。 何でこんなことをしているか聞く気はないが、…大方あの悪魔ビト関連なのだろう? …処分は星国に帰ってからだ。…それまで大人しくしているがよい!」 「な…なぁぁぁぁあああああ!! …ちくしょう…ちくしょうおおおお!!」 「…ひ、ひめさま…。」 「大丈夫だよ。ラバボー、悪魔ビトさん…。きっと…」 「…お前達、少し下がっておれ。 …この程度、ワシ一人で十分じゃ。」 「は…ハッ!」  そういうと、ヒゲノシタはコメットさん達のところへと近寄ってきました。 「ひ、ヒゲノシタ…なんでここに…?」 「姫様…。 通報を受けたときには耳を疑いましたが…まさか本当にこんなことを…! …話は後ですじゃ。とにかくその彼を…こちらに。」 「…い、イヤ! …悪魔ビトさんは…。」 「…姫様。これはいつものイタズラでは済まされぬ問題なのですぞ。 …さぁ、彼をこちらに。」 「い、イヤ!イヤだよヒゲノシタ! …だ、だ、だって…!悪魔ビトさんは…」 「いけませんぞ姫様! これはいつもとは違い…」 「ダメ!ダメったらダメ!」 「姫様!!」 「だ、ダメ…! おねがい…おねがい!」  その必死そうなコメットさんの様子を見て、ヒゲノシタは困ったように頭をかいてこう言います。 「…困りましたな。 なぜ姫様はそこまでその星ビトをかばうのですか? …彼は」 「違う!違うの! …彼は、悪魔ビトさんは…宝石なんて盗んじゃいないもの! …悪魔ビトさんは何も悪くないのに!…ゼツボーの黒い星なんかに入れないで!!」 「……?」 「おねがい…!おねがい…ヒゲノシタ!!」 「…ふ、ふふ…あーっはっはっはー!!」  すると、いきなりヒゲノシタは大笑いをしました。 …あまりのことにビックリしたのか、 コメットさんは少し間を置いてヒゲノシタに聞き返します…。 「…な、何がおかしいの…!? わ、わたしは必死に…」 「なるほどなるほど…姫様がそやつを守りたい理由はそういうことだったのですか! …ふふふ。 その件でしたら、もう大丈夫ですぞ、姫様。」 「……へ!? ど、どういうこと!?」 「実はですな…その"宝石の事件”は、ちょうど3時間ぐらい前に真犯人が”自首”してきましてな。 …この件については、”悪魔ビトは無罪である”と決まった矢先だったのですじゃ。」 「え…えぇーっ!?」 「ほ、本当なのですか…!? ボクは…ボクは、本当に無罪に…。」 「うむ。 …その犯人…いや正確に言えばその”妻”が、夫が宝石を盗んだこと、 そして自身の罪をおぬしになすりつけたことをとても悔やんでいたらしくてな。 ついにその罪を星国の法廷に暴露したのじゃよ。決定的な証拠と一緒にな。 それを暴露した彼女は”今まで主人のせいであなたを苦しめてしまって、本当に申し訳ありませんでした”と何度も言っておった。 おそらく追って裁判はやり直され、お主は正式に無罪となるじゃろうな…よかったのぉ。 じゃが…”償うべき罪”はキチンと償わなければならぬ。 …分かるの、悪魔ビトよ。」 「…はい。」 「…え…ッ!? ど、どういう事なのヒゲノシタ!? 今さっき悪魔ビトさんは無罪に…。」 「それはあくまでも”宝石事件”について、だけ…ですじゃ。 姫様もご存知の通り、こやつは過去に色々なイタズラを犯しておりましてな。  無罪になったとはいえ…その罪はちゃんとつぐなわなければいけない…お分かりになられますな?姫様。」 「…そ、そんな…!で、でも悪魔ビトさんがこうなったのは…!」 「それも十分承知しておりますぞ姫様。 …大丈夫、大丈夫ですとも。 とりあえず星国に戻ったら彼の裁判があるのですが、その法廷には"王様”がご出席なされる…のですからな。」 「え…!お、おとうさまが…。」 「えぇ。 …そしてさらには姫様のその言葉。…まさかこれ以上この星ビトの状況が悪化することは万に一つもありますまい。」 「そ、そうなの…。 よかった…!」  コメットさんは、緊張の糸が切れ、安堵の表情を浮かべてその場に崩れるように座り込んでしまいました。 「…さぁ、悪魔ビト。 もうそろそろ星国に戻るぞ。 …よいな、もう逃げようなどど」 「えぇ…分かってます。逃げようなんて、もう考えませんよ、二度と…ね。」 「……?そうか。 …では、早く乗るのじゃ。」 「ま…待って!悪魔ビトさん!」  と、コメットさんは悪魔ビトを呼び止めました。 コメットさんが話しかけます… 「…よかったね。もう、これであなたは…。」 「はい。全ては…姫様のおかげです。ありがとうございました。 そして、ごめんなさい。 …あんなことをしてしまって…。」 「ううん、いいの。 …内心、わたしもちょっと楽しいって思ってたもの。…ほんのちょっとだけ、だけどね。…えへっ☆」 (ボーはもう走りつかれたボー…。)  コメットさんは少しいたずらっぽく笑いました。 ラバボーのほうはもうへとへとのようですが。 「あ、そうだ…、悪魔ビトさん。 …もしも罪をつぐなって、かんごく星から出てこれたら…。 わたしのところに来て。…いーっぱい遊ぼっ。 …こんどはイタズラじゃなくて…、さ。」 「……は、はい。 …う、うぅ…。」  悪魔ビトは嬉しさのあまり、またも泣き出してしまいました。 そこにヒゲノシタがばつの悪そうな顔で割って入ってきます。 「もう…よろしいですかな?姫様…。 あまりここに、しかもこのような大人数でいるのは好ましくありませんので…。」 「…うん。ありがとう、ヒゲノシタ。」 「はい。 …それでは姫様、…これにて。」 「さよなら…いや、また…きっと会いましょうね、姫様…。」 「うん。 …きっと、きっとだよ!」  それだけ言うと、皆乗ってきた星のトレインのようなものに乗って、アッという間に去っていってしまいました。 あの看守の二人も…一緒に連れて行かれてしまったようです。 「終わった…ね。…これで。」 「終わったボー。 …あ、も〜…ボー動きすぎてヘトヘトだボ…。休ませてほしいボー…!」 「あ…ごめんね! …早く家に帰ろっ。」  …その姿ゆえに、嫌われ者だった悪魔ビトさん。 怖がって誰も近づかなかったけど…それでも誰かに相手にされたくて、 友達になってもらいたくて…みんなにイタズラばかりして気を引こうとした。  どんな理由であっても、イタズラは決して良いことではない。 …でも、彼には仕方のないことだった。 …今まで彼のしてきたことを許して、とは言えない。 …けど、星ビトみんなが彼の事を知ってくれたのなら… みんな、彼のことを許してくれる。…そう、わたしは信じる。 …もう、彼は一人じゃないから。 「…ってひめさま! 何ボケーっとしてるんだボ?」 「あ…。ごめん。 さ、さ!早く帰ろう。 わたしたちの家に。 …ん?”家”…。 何か…忘れてる…ような。」
あとがき。
…はい。このようなものが出来ました…。みたいな感じでしょうか。 最近ネタ的なものしか書いていなくて、まともな小説を書けていなかったので、 ”ここはコメットさん系小説サイト”なんだ!と…自分自身に自戒を入れる意味でつくったわけです。 そのために、全体的に暗い印象になってしまいましたね。(前半はネタや笑い前回ですが)。 なんかもう…前半がのびのびとしていて後半がつめこみすぎになったような印象ですね。 もうちょっとキャラ(特に悪魔ビト)の性格やら過去やらを書ければよかったのですが。 それと、最後の方ででの悪魔ビトを諭すコメットさんのセリフで、キレイな答え(ってかセリフ)が出せなかったのが残念です。 なんかこう…少しうやむやな出来になってしまったので、後でまた書き直すかもです。 あ。それと、…”意図的”に書かなかった"メテオさん”と"看守たち”のその後について、 後日談を書いておきました。こちらもあわせてご覧くださいませ(05,11,05更新)↓
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