題字 すぎたまさま


すぎたまさん=青色文字
イマジンカイザー=赤文字 ・・です。

 ここは八ヶ岳の森。・・スピカさん、ラバピョン、・・そして修造さんが住んでいます。
 ・・ある日、スピカさんは窓から見えるいつもの景色を見ながらこうつぶやきました。
「はぁ・・、今日も平和ね〜・・。平和なことが一番いいのは分かってるけど、 なんかこう・・、刺激がないのよね〜・・。う〜ん・・」
 と、ヒマそうにブツブツ独り言を言っていると、突然修造さんがやってきました。
「美穂ー!ほら見てごらんよコレ」
「・・アラあなた、どうしたの・・・? !?こ、これって 昔(高校)文化祭の演劇で、 私が着てた衣装じゃない!? う、うわぁ〜・・、懐かしいな〜・・」
「うんうん。・ずいぶん久しぶりだね〜・・。もうアレから20年ぐらい経つのかぁ・・」
「・・そうね〜・・、昔のことを思い出すとなんだかうれしくなっちゃうわ」
「あははは・・、そうだねぇ・・」
 ・・偶然押入れから見つけた、何かの衣装。 二人は青春時代のことを振り返りながら笑っています。
 ピンポーン・・。
「あら、こんな所に・・、誰かしら?」
「あぁ、今出るよ」
 修造さんが玄関に出てみると、そこには町内会の役員さんが立っていました。
「今度、近所の保育園で、お祭りをやるんだが、協力してくれんかね?。ここにチラシを持ってきたから。 柊さん、ひとつ頼まれて欲しいんじゃが…」
「えーと、これですか?、この小海町第3保育園祭りっていうやつ」
「そうじゃ。ひとつ考えて、いい返事をまっとるから。よろしく頼みますわ」
「はあ、じゃ読ませていただいて、こっちから電話しますわ」
「すまんのう、よろしくたのみますで」
 修造さんは、役員さんから受け取ったチラシを見てみました。そこには、とんでもないことが書いてあったのです。
「…えーと、保育園児の前で、戦隊ものヒーローになって、演技して下さい。ゴミをまき散らす、 観光客を懲らしめる役です…。…これって…、おーい、美穂ー、大変なことになりそうだぁ」
 スピカさんは、修造さんが血相を変えて、廊下を急ぎ足で歩いてきたので、 「不用意にコメットでもやってきちゃったのかしら?」などと思っていました。
「なあに、あなた。円盤でも飛んできたの?」
「…え?、何それ?。…いや、円盤は飛んでこないけど、ちょっとこのチラシ読んでごらんよ。 今町会役員の、村越さんが持ってきたんだ」
「ああ、あの農家のおじいさんね。…ええと…、…ヒーローになって演技?。これって…あなた」
「…うん、えらいことになりそうだ…う〜ん・・。どうしようか美穂・・、 いつもお世話になってる人だから断るわけにもいかないし・・」
「そうよね〜・・、でも、この年になってヒーローものは・・、ちょっと・・、ねぇ?」
「・・そうか?私は別にいいんだがねぇ」
「えぇ!?いいのあなた!?」
「いや・・、だって・・子供達のヒーローになれるんだぞ? こんなにうれしいことはないね。 それに昔からヒーローになるのが夢だったんだ!」
「そ、そうなの・・? でも、衣装とかはどうするつもりなの?」
「ははは、何を言っている。 私の分はあとで知り合いの洋裁店でも頼めばいいし、 美穂には・・、今さっき見つかったあれがあるだろ?」
「ちょ、ちょ、ちょ! わ、私これ着てやるの!?」
「うん。別にいいじゃないか。 幸い大して傷も汚れもないし、ちょっとサイズ調整すれば、十分着れそうだぞ?」
「う、うぅう・・・」
「じゃあ、私はその件を承認したってことで、役員さんとこに行って来るから」
「え!? ちょっ・・、 あぁ行ってらっしゃい・・」
 ・・困りはてたスピカさんは、修造さんが役員さん所に行った後、 コメットさんを呼んで相談する事にしました・・。
 コメットさん☆は、スピカさんに呼ばれるとすぐにやってきました。ツヨシくんとネネちゃんを連れて…。
「おばさま、話は電話で聞いたけど、本当にやるの?」
「そうなのよ〜。修造さんがよろこんじゃって…。困ったわ。だいたいあの衣装、入るかしら」
「よかったら見せて。おばさま」
「ヒーローの衣装見られるの?。ツヨシくん見たい!」
「ネネちゃんも見たい!。スピカさん見せてー!」
 ツヨシくんとネネちゃんも、興味津々です。しばらく修造さんは、村越さんのところに行って、 帰ってこないだろうと思ったスピカさんは、三人をタンスの前に連れていきました。
「こんな感じよ」
 スピカさんはタンスをそっと開けると、衣装を広げて見せました。
「うわー、かわいい!」
 コメットさん☆は、その黄色とピンクの衣装を見て言いました。
「ええー、かわいいって…」
 スピカさんは、驚いたように言いました。
「かっこいい!」
「かわいい。かわいい。ネネちゃん、スピカさんの変身見たい!」
 どうやら、ツヨシくんとネネちゃんは、スピカさんがただ衣装を着るのではなく、変身するのだと思っているようです。
「でも、たぶんこれサイズが入らないわ。今の私じゃ」
 スピカさんは、困ったような苦笑いを浮かべて言いました。
「・・それなら大丈夫ですよ。ヌイビトさん達がいるじゃないですか。 ヌイビトさん達に頼んで、その服を今のおばさま用にしてもらえば」
「う、うん・・、そ、そうね・・。」
 スピカさんはちょっとうつむいて言いました・・。
「ねーやってようスピカさーん! へんしんみたーい!」
「見たいみたーい! スピカさんのへんしんみたーい!」
「コメットさんもみたーい!おばさまぁ、やって〜!」
「う、うぅ・・(な、なんていう目の輝きなの・・、この子達・・)」
 子どもの得意技、キレイなまなざし攻撃で、さすがのスピカさんもあきらめたのか、ようやくこう言いました。
「わ、わかったわよ〜・・、わたしやるわ、・・ヒーロー」
「わーい!やったー!」
「やったやったー! へんしんみられるー!」
「へんしん、へんしーん!」
「(・・なーんて軽はずみな事言っちゃったけど・・、どうしようかしら・・。あぁ、恥ずかしい・・)」
 一度”やる“とは言いましたが、やはりこの歳でヒーロー・・、 しかも高校の学園祭で使った服を着て・・、となると、やはりスピカさんは恥ずかしいご様子。 ・・スピカさんはさっきよりも真っ赤になってしまいました・・。
 スピカさんは、「恥ずかしいからあっちに行ってて」と、 コメットさん☆やツヨシくん、ネネちゃんに言うと、意を決して衣装に袖を通しました。 いや、正しくは、「通したつもり」だったのです。  しかし、案の定、いろいろなところがひっかかってしまいます。肩から腕はなんとか通りましたが、 少し袖が短くて、手袋をしても、素肌の手首が見えてしまいます。 それと、パンツスーツの脇に付いている隠しホックが、どうしてもとまりません。
「いやだわ。やっぱり太ったんだわ…。それに手も見えちゃう…。あの頃からそのあとまだ少し身長伸びていたのかしら…。 …軽はずみなこと言うんじゃなかったわぁ…」
 スピカさんは、ますます困った顔になりながら、そっとコメットさん☆を呼ぼうと思いました。さすがに、ツヨシくんとネネちゃんには、こんなみっともない姿を見せられません。 スピカさんは、そっとタンスのある部屋を出ると、 腰を手で押さえつつ、リビングのコメットさん☆に手招きをしました。 コメットさん☆は、すぐそれに気付き、ツヨシくんとネネちゃんに 「お手洗いに行ってくるから、ここで待っていてね」と言って、そっとスピカさんのところまでやってきました。
「おばさま、どうしたんですか?」
「…小さい声でね。どうしても手の長さがつんつるてんだし、恥ずかしいけど、腰のホックがとまらないのよ。コメット、なんとかして」
「あはっ。おばさま、やっぱりサイズが合わないんだ…」
「笑っている場合じゃないわよ。恥ずかしいなぁ、もう…。安請け合いしなければよかった…」
「ごめんなさい、おばさま。じゃ、今縫いビトさんを呼ぶね。それでサイズ直してもらう」
「早くお願いするわ。ああ、恥ずかしい…。こんなところを修造さんに見られたら…。当分立ち直れないわねぇ」
「じゃ、おばさまタンスの部屋に戻って。私、ツヨシくんとネネちゃんに、 『お手洗い』って言ってきたから、縫いビトさんへの注文は、おばさまからお願いします」
「しょうがないわね…。もう泣きたいくらいだわ…」
 タンス部屋に戻ったスピカさんと、コメットさん☆は、さっそく縫いビトさんたちを呼びました。
「縫いビトさん来て!。お願い、スピカおばさまの服を、普通に着られるようにしてあげて」
「姫さま、お呼びですの〜。あ、スピカさま、お久しぶりですの〜」
「じゃ、おばさま、あとお願いね」
「…わかったわ。なんとかする…。縫いビトさんこんにちは。この衣装、私の学生時代のものなんだけど、 さすがに今はサイズが合わないわ…。お願い、着られるようにして」
「さいですの〜」
 ヌイビトさんは、目にも止まらぬ早業で、あっという間にその服のサイズを 現在のスピカさんにピッタリ合うサイズに作り変えてしまいました。 そのスピードにスピカさんもビックリ。
「できましたの〜」
「さっそく着て欲しいですの〜」
「・・アラ、さっきまで全然しまらなかったホックも簡単にしまるわ〜。ヌイビトさん、ありがとね」
「いえいえ、どういたしましてですの〜。 それでは〜」
 そう言うと、ヌイビトさんはどこかへといってしまいました。 スピカさんは彼女達を見送ると、現在の体型にピッタリになった服を黙々と着ていました・・。 そして、何分か後経った後・・。
「・・もう、いいわよ・・・」
「え? は、はーい」
「やったー!スピカさんのへんしん見られるー!」
「わーい、わーい!」
「・・・ど、どう・・?」
 何年か年は経ってると言えども、容姿もスタイルもなかなかのスピカさん。 黄色とピンクの衣装もバッチリで、ホントにテレビの戦隊ヒーローみたいに見えます。
「きゃー!スピカおばさまかっこいいー!」
「・・あ、もうへんしんしちゃったんだ。ツヨシくん、ちょっとガッカリ」
「ネネちゃんもちょっとガッカリ・・」
 コメットさんは普通にカッコイイと言いましたが、“変身すること”を前提に考えていたツヨネネちゃんは、 最初から変身してきているスピカさんにちょっとガッカリしています。
「で、でもすーっごくかっこいいスピカさん!」
「うん、すーっごくかわいい!スピカさん!」
「そ、そんなに言わないで〜・・、ホント恥ずかしいから〜・・・」
「あはははは、スピカおばさま真っ赤だ〜」
「や、やめてよ〜、あなたたち〜・・」
 恥ずかしすぎて、ちゃんと反論する力も出ないのか、 スピカさんはすっかり三人のオモチャです。 と、その時。家の何百mぐらいの距離から車の音が聞こえてきました。
「あ・・、もう修造さん帰ってきたのかしら・・ ごめんねみんな。今日はそろそろ帰ってくれないかなぁ〜・・」
「え〜・・、ツヨシくん、もっとスピカさんのへんしんみた〜い!」
「ネネちゃんもへんしんみたーい!」
「・・ダメだよ二人とも。 スピカおばさまのいう事はちゃんと聞くの。藤吉家憲法第30条!」
「・・おとなのいうことは、ちゃんときく」
「・・ね、今度はわたしがあそんであげるから、ね?」
「はーい。・・ツヨシくん、かえる」
「・・ネネちゃんもかえる」
「じゃあ、スピカおばさま。失礼しまーす!」
「う、うん。またね〜・・」
 ・・こうして、三人は帰っていきましたが、ここで一つ問題が残っていた事に気づきました。
「・・あ、しまった!まだ衣装を脱いでないじゃないの! あぁ〜・・、どうしよう! いまからじゃ、修造さんが帰ってくるまでに間に合わないわ〜!」
 ・・と、あくせくしている内に、修造さんは家に帰ってきてしまいました・・。
「ただいま美穂・・、ってどーしたんだそのカッコ!?」
「え!? あ、その〜・・」
 ・・当然“コメットさんたちにせがまれて着ました” とは言えず、スピカさんは言葉に詰まってしまいました・・。
「そうか!やっぱり美穂もヤル気になったんだね!」
「・・へ!? い、いや、これは・・、その〜・。」
「いや、実はさ。村越さんが“これは二人でやらないと意味が無いから、 もしも奥さんが断るようなら他の人を頼む”って言ってたんだけど、 いや〜、まさか自分から着てくれるとは〜!ありがとう、ありがとう美穂!!」
「え!? え・・・!?(そ、そんなことって・・・・!)」
 スピカさんは、ツヨシくん、ネネちゃん、それにコメットさん☆と同じ目の輝きを、修造さんに見てしまったのでした。この目の輝きを見ると、もうむげにも出来ません…。 ところが、修造さんは、また訳の分からないことを言い出します。
「じゃ、美穂、とりあえず練習だ!」
「れ、練習って、何の?」
「もちろん決まっているじゃないか。変身ポーズと、決めポーズ、それに戦闘シーンのだよ」
「…へ、変身ポーズって…、もう決まっているの?」
「もちろん。こんなこともあるかと思って、もう当時の絵コンテのありかの目星はつけてあるんだ。たぶんすぐ見つかるから、ちょっとまってて」
「…はぁ」
 スピカさんは、一人大喜びの修造さんを見て、めまいがしそうでした。その「絵コンテ」なるものが、見つかりませんように…と、心の中で必死に祈っていたのですが…。
「あった、あった。やっぱりあったぞー。美穂。これこれ」
 そのスピカさんの願いも、修造さんのキラキラの思いに、いとも簡単にうち砕かれるのでした。
「ああ、もう、最悪な一日になりそうだわ…。口は災いの元ね。まって、本番の日を考えたら、今日だけじゃ終わらないのね…」
「ん、美穂、なんか言ったかい?」
「いいえ…。何も…」
 と、その時です、みどりちゃんが泣く声がしました。
「おぎゃ、おぎゃ…」
「あ、みどりが泣いているわ。もう、ちゃんと見ていられないじゃないの。ミルクかしら、それともおしめかな」
 スピカさんは、急いでみどりちゃんのベビーベッドに、駆けつけていきました。
 ところが、修造さんは、また物置部屋にある、高校時代の書類ケースをあさりに行くのでした。今度は、当時の脚本を見つけに…。
「決めゼリフも、アレンジしておかないといけないな」
 修造さんは、スピカさんのあずかり知らない世界に、突進の様子です。

第弐部に続く

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