Cosmic Baton Girl コメットさん☆


「安価な命の使い方」



 パワフルWEBPAGE副管理人 とくさ
挿絵 パワフルWEBPAGE副管理人 とくさ
    月間わかめ新聞管理人 イマジンカイザー


読む前に右のスクロールバーに注目してください。
すごく・・・長いです・・・。
それでも読むという方は健康を損なわない程度に少しずつ読んでいってください。
読んでる最中**のマークが出たら休憩時です。
あとこのお話内では皆さんの好きなコメットさんやケースケにちょびっとだけ痛い目にあってもらっております。前作のツヨシ君くらいの。
それでも大丈夫な方は・・・どうぞ。


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7月下旬某日、今年は昨年よりさらに暑い年。
それと学校は夏休みのせいか、真昼の由比ヶ浜は家族連れなどで結構な賑わいとなっていました。
そこにはケースケの姿もありました。もちろんライフセーバーの仕事のためです。
高台から誰か溺れている人はいないかと目を光らせて・・・いるつもりでしたがその目の開きはうつろでした。



ケースケ「あー頭痛え・・・なにより暑い・・・俺が思うに温暖化効果だなこりゃ、あとここ太陽が近いっ!・・・
な〜んて・・・うちにも冷房とまでは言わないから扇風機ぐらいほしいなあ・・・はぁ・・・」

今日のケースケはこの例年にない暑さで体調を崩している様です。何気ない独り言も少し混乱気味でした。

ケースケ「いかん・・・なんかだれてるな俺・・・ちょっと休憩しよ・・・」

自分の体調があまりかんばしくないことに気づき、ケースケは高台から降りて青木さんがいる高台にいきました。

ケースケ「青木さーん・・・」
青木「おっケースケ、どうした?お前の担当は向こうだよな?」
ケースケ「そうなんすけど、俺なんか頭痛くて・・・ちょっと日陰行って休んでいいすか?」
青木「なんだケースケ、この暑さにバテたのか?しょうがないな、しばらく俺が受け持ってやるよ」
ケースケ「はい・・・どうもすんません」
青木「それと・・・お前睡眠不足だろ?」
ケースケ「えっ?わ、わかるんすか?
青木「お前の顔色見てヤマ張ってみたんだが・・・やっぱりな」
ケースケ「・・・そうっす、夜暑くて寝れなくて」
青木「ケースケよ、ライフセーバーなら自分の健康管理にはしっかりしなきゃいかんぞ。そう・・・自分が元気であってこそ人が救えるんだからなぁ!」

そう言いながら何故か青木さんは高台に直立し、仁王立ちの構えを見せました。威容で異様です。

ケースケ「あー・・・それもう何百回も聞いた気がしますよ」
青木「フッ、名言だろ?ま、わかっているならいい。寝れなくて困ってるんなら今日終わった後、快適に寝れる方法教えてやるよ」
ケースケ「はぁ・・・お願いします・・・それじゃ」
青木「おう」

と、青木さんに休憩の許可をもらい、ケースケは由比ヶ浜のすぐ近くにあるHONNO KIMOCHI YAへ移動しはじめました。

ケースケ「あぁしんど・・・早いとこ涼しいところいかねーと・・・」

そこでケースケの方に向かってくる三人の姿がありました。それは・・・

コメット「あ!あれケースケじゃ?ケースケー!!」
ツヨシ・ネネ「ケースケにいちゃーん!」

コメットさんがツヨシくんとネネちゃんを連れ由比ヶ浜に来ていたのです。その姿からして彼女達も海水浴に来た模様。

ケースケ「おお・・・お前らか。今日も元気だなー・・・」
コメット「ケースケどこ行ってたの?いつもの高台にいないから探したんだよ」
ケースケ「ああ、ちょっと気分悪くてな・・・沙也加ママさんのとこでちょっと涼もうと思って・・・」
コメット「へえ、珍しいね。ケースケが体調崩すなんて初めて見たかも」
ケースケ「だってよぉ〜うちにはな〜んにも冷房器具ないしよぉ〜このクソ暑い中で毎日監視だぜ?監視だけで海に入ることもねーんだぜ?さすがに参っちまうよぉ」
コメット「(うわっなんかロコツにだれた口調になった・・・)」
ツヨシ「ひょっとしてケースケにいちゃん、にっしゃびょう?」
ネネ「ねっしゃびょうだよーパパがいってたよ。おひさまがとてもギラギラしててあついひにかかっちゃうびょうきだって」
コメット「へえ〜ツヨシくんネネちゃんよく知ってるね」
ケースケ「そうだろうな・・・まあ、そうだとしてもこうして動けるんだからそんな大したことはないだろ」
コメット「それならいいけど・・・休憩してる間、誰もここ監視する人がいなくなっちゃうね・・・そうだ!私が代わりにい」
ケースケ
「十年早い」
コメット「え?じゅ、十年早い?」
ケースケ「わかんねえかな・・・お前にはまだ無理だって意味だよ」
コメット「やっぱりダメ・・・かな私じゃ」
ケースケ「それに代わりは青木さんに頼んであるからお前は余計なこと気にしなくていいの。わかった?」
コメット「はーい・・・」
ツヨシ「コメットさんションボリすると・・・ツヨシくんもションボリ・・・」
ネネ「ネネちゃんもションボリ・・・」

ケースケにはっきりと断られてしまいションボリするコメットさん。何故かそれに続きツヨシくんとネネちゃんもションボリ・・・。その時、三つの影がこちらに向かってきました。

亜衣「たーげっとろっくおん!」
麻衣「はっしゃぁ!」
美衣「なぜチューにいそぐぅ!?」
亜衣・麻衣「それがさだめだから!!」
ツヨシ「あっ!!あれはっ・・・」
亜衣・麻衣・美衣
「ツーヨーシーくーーーん!!!」

チューショットトリオ『亜衣・麻衣・美衣』の三人でした。彼女達も海水浴のようでしたが、一番の目当てはこれだったようです。ツヨシくんはすぐさま猛ダッシュで逃げます。

ネネ「うわっ!・・・ツヨシくんはやい・・・」
ツヨシ「うおおおおっ!なんでおしえてもないのにここにいることしってるんだよおおっ!」
亜衣「ふふふふふふふなぜかって?」
麻衣「それはわたしたちがツヨシくんのことがあいしているからよ!」
美衣「このあいのチカラがあるかぎりわたしたちとはいつでもチューショットするさだめにあるのよー!」
ツヨシ「わけのわかんないこというなーーー!!」
コメット「うわー砂の上なのに・・・すごいねみんな」
ケースケ「ああ・・・あの目つきの悪い双子共といい・・・最近の園児は恐ろしいなほんと・・・」

コメットさんはみんなのはしゃぎっぷりを見て感心していました。
対してケースケはこの光景を見てあの凶暴な姉妹を思い出していました。
ツヨシくんは必死に逃げました。とにかく全力で逃げました。
しかし、三人の恐るべきスピードの前にあっさりつかまってしまいました。

亜衣・麻衣・美衣「つーかまーえた・・・」
ツヨシ「ひっ、ちょっと、まっ、やめろおお、みのがしてくださいみのがしてくださいっ!」
亜衣「・・・そう?そこまでいうなら・・・」
ツヨシ「うそっ!」
麻衣「うそ」
ツヨシ「えっ?」
美衣「
とりぷるふぁいやー!
ツヨシ
あうぎあああああーーーーーーーーーーーーーーー!!!

ツヨシくん無残。そこで保育園のいつもの面々が遅れてきました。

源「ふう、ふう、さんにんともきゅうにはしりだして、どうしたんや〜?っととこれは・・・なるほどこういうことか・・・」
君也「うわあ・・・クレシェンド、今日は一段と激しいですねえ・・・」
太一「もぐもぐもぐもぐ」
ネネ「のんきなこといってないでたすけてよー!ツヨシくんしんじゃうー!」
源「おお、そうやった!」
君也「おおっと、これはすいません」
太一「もぐもぐもぐもぐもぐもぐ」
源「おまえもくいながらでもいいからてつだわんかい!」

ネネちゃんをはじめ他の園児達は力づくでチューショットトリオをツヨシくんから引き剥がしました。

ネネ「ツヨシくん!だいじょうぶ?」
ツヨシ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
源「あ、あかんもうておくれみたいや・・・」
コメット・ケースケ「ええ!?」

しかし手遅れなんてことはなく15秒後ツヨシくんは目を覚ましました。そしてコメットさんに泣きつきました。

ツヨシ「うううううう・・・こわい・・・こわいよコメットさぁんっ!・・・・・・」
コメット「よしよし、もうこわくないよー。だからそんなに脅えないでー」
ネネ「あなたたち!ものごとにはげんどってものがあるんだよっ!」
亜衣「ゴメ〜ン♪はんせいしてます」
麻衣「だってほら、みんなといっしょにかいすいよくにきてるんだもん」
美衣「ついテンションあがっちゃって・・・ツヨシくんゆるして?
ね?
ツヨシ「・・・・・・」

ツヨシくんは震えながら、無言で何度もうなずきました。許したという意味でしょうか・・・。
そんな園児達を細い目でケースケは見ていました。

ケースケ「皆元気だな・・・まったく若いもんがうらやましい・・・ぅおで・・・」

変な声と共に突然ケースケが口を押さえました。

コメット「ケースケ!?」
ケースケ「・・・っと・・・なんか胃までゴロゴロしてきちまったみたいだ・・・船酔いみたいな感じが・・・あー気持ち悪」
コメット「ケースケ・・・あんまり大したことないこともないんじゃないの?・・・私ついてってこうか?」
ケースケ「だ、大丈夫だって!お前はそいつらを見てやんなきゃダメだろ!?」

ケースケはウザそうな顔をしながら強い口調でコメットさんに言いました。

コメット「そう・・・」

ケースケに忠告され、コメットさんは曇った表情で園児達の方に顔を向けました・・・するとコメットさんが沖のほうで何かを発見しました。

コメット「・・・!?ケ、ケースケ・・・あれ!」
ケースケ「あん、何だよ・・・」
コメット「あっち見て!・・・あの人・・・溺れてない?」
ケースケ「何だって!!・・・やべっ!あれは溺れてるぞ!」

コメットさんが発見したのは※浮標の向こう側ではなく、さほど遠くでもないところで溺れている人でした。
その人は助けを呼ぼうと必死にもがいていましたが海水を飲んでしまい声が出せないようです。       ※浮標・・・海水浴場ならどこでもあるはず。海面に連結して浮かんでいるアレのこと。

みちる「う・・・ぷぁ・・・た・・・ぅ・・・」
ネネ「コメットさん!あのおぼれてるひとみちるちゃんだよ!」
コメット「・・・ほんとだ!」
ケースケ「誰だって関係ない!早く助けないと!!」

ケースケはすぐさま着ていたシャツを脱ぎ、海に跳び込もうとしました。
しかし・・・

ケースケ「うぷぅぇ・・・」

気持ちの悪い声を発しながらふらついてしまいました。コメットさんがすぐさま支えます。

コメット「ケースケ!無理だよ、そんな体じゃ!」
ケースケ「う、うるせえ!・・・俺はライフセーバー(仮)だぞ!
こんな時に寝ててどうすんだ!」
コメット「わたしがいくよ!
今のケースケよりずっとマシ!・・・ツヨシくん、ネネちゃん、ケースケお願い」
ツヨシ・ネネ「う、うん」
ケースケ「なっ!!・・・」

コメットさんは支えていたケースケをツヨシくんとネネちゃんに託し・・・

ケースケ「おい待てっ!!」
コメット「やっ!!」

跳び込まなくてもいいのに跳びこみました。そのせいで海水のしぶきが三人におもいっきりぶっかかりました。

ケースケ
「・・・・・・コラーー!!戻れーー!!」
コメット
「みちるちゃん!今助けるからーー!」
みちる「ぅう・・・こ・・・っとさ・・・・・・ん」

ケースケが戻れと怒鳴り声で呼びかけますがコメットさんは無視。
必死にもがき続けるみちるを励ましながら、クロールで泳ぎ進みました。
さほど遠くもなかったのでみちるのもとにたどり着くのは案外簡単でした。

コメット「みちるちゃん!しっかりして!」
みちる「ぁぅ・・・ゴホッゲホッゴホッ!・・・こ、コメットさん・・・ゴホッ!すい・・・ません・・・ゲホッゴホッ!」

どうやら意識もはっきりしている様子。大事には至らなかったようです。
コメットさんがほっと安心したその時です。コメットさんの体に異変が起きました。

コメット「うっ!!あ、足が痛・・・いっ」
みちる「コメットさ・・・ゴホッゲホッ!どうしたん・・・ですかっ・・・!!」

なんの準備体操もなしに急に全力で泳いだせいでしょうか。コメットさんは足をつってしまったようです。
その激痛で呼吸が乱れたせいか、思い切り海水を飲んでしまいました。
みちるも、もがくコメットさんを助けようとしますが、自分もほとんど同じ状況、どうしようもありません。

ツヨシ「あぁあ!コメットさんとみちるちゃんが!」
ネネ「しずんでるよぉ!!ケースケにいちゃん!!」
ケースケ「くそっ!・・・待てっていったのに・・・!!」

ケースケはすぐ走り出そうとしましたがまたさえぎられました。ケースケをさえぎったのは・・・。

ツヨシ「まってケースケにいちゃん・・・」
ネネ「わたしたちがいく・・・」

ツヨシくんとネネちゃんでした。

ケースケ「な・・・なに・・・言ってんだ!チビのくせに!」
ツヨシ「だいじょうぶ、ぼくらおよぐのとくいなんだ」
亜衣・麻衣・美衣「(ツ、ツヨシくん・・・かっこいい・・・)」

チューショットトリオがうっとりしています。

ネネ「そう、よくケースケにいちゃんのおしごとみてたしね」
ケースケ「冗談言ってんな!!もう俺が行く!!」
ツヨシ「いまのけーすけにいちゃんより」
ネネ
「わたしたちのほうがずっとマシだよ!」
ケースケ「なあっ・・・!!」

ツヨシくんとネネちゃんにさっきのコメットさんのセリフを言われてしまいショックを受けるケースケ。
その隙にツヨシくんとネネちゃんは海に入ろうとしました。しかし、その時・・・。

「はああああああっっ!!!」

海面までもなびきそうな大きく響く声をあげながら、海に跳び込んだ人がいました。
そのせいでまたもや海水のしぶきが三人に思いっきりぶっかかりました。

ケースケ
「・・・・・・・・・なんだっつんだよ!」
ツヨシ「ペッペッ・・・あの人たしか・・・」
ネネ「明日香さん?」

ツヨシくんとネネちゃんの目、耳に狂いはなく、跳びこんだ人物は明日香さんその人でした。

明日香
「頑張れみちるーーー!!コメットさーーーん!!気合だあああガガホッゲホッガホッ」

明日香がバタフライでみちるとコメットを助けに行くの図

励ましているつもりなのか・・・よせばいいのに泳ぎながら大口を空けて叫ぶ明日香さん。海水を飲みまくってます。
しかしまったくスピードを落とすことなくあっというまに溺れている二人のところに着きました。

みちる「あ・・・明日香さん・・・」
明日香「ほら、二人ともつかまって!!」
コメット「す・・・すいませ・・・」

みちるとコメットさんは明日香さんの腕につかまり、なんとか窮地は脱することができました。

明日香「よし!
それじゃいくよおおっ!!

そう叫ぶと明日香さんは二人を抱えながら泳いで戻ってきます。声の勢いとは裏腹にゆっくりと戻ってきます。
二人の人間を支えているので無理もないでしょう。

源「すんごいねーちゃんやなあ・・・」
ツヨシ「がんばれー!もうちょっとだよーー!」
他の園児「がんばれー!」

沖から園児たちが三人を応援します。この騒ぎに野次馬達がぞろぞろと集まってきました。
そこに野次馬の群れをかき分けて青木さんが駆けつけました。

青木「どうしたんだ!?さっきすごいでかい声が聞こえたんだが、何があったケースケ!」
ケースケ「あ、青木さん!あれを!・・・すいません、俺も助けようとしたんですが・・・」
青木「今はそんなこと言ってる場合じゃないぞケースケ!
待ってろすぐいくぞー!!

青木さんが三人に呼びかけるとすぐさま海に入りました。今、三人は沖まであと10mもない所にいました。

明日香「ふう・・・助けがきたみたいね」

青木さんが三人のもとにたどり着きます。

青木「大丈夫かみんな!」
明日香「私は大丈夫です、それよりこの二人を早く!」
青木「わかった、あとはまかせろ!」

さすがはプロのライフセーバー。明日香さんに二人を託されると手際よく二人を運んで戻っていきます。
明日香さんもそれに続きます。そしてあとは難なく浜にたどりつきました。

コメット「はぁ・・・はぁ・・・」
みちる「ゲホッゴホッ・・・」
青木「よかった!・・・二人とも意識ははっきりしてるようだな」
みちる「はい・・・・・・」
コメット「なんとか・・・」

コメットさんもみちるも意識ははっきりしており、命に別状はなかったようです。

ツヨシ「やったー!」
ネネ「コメットさーん!無事でよかったー!」

コメットさんが無事に戻ってきた嬉しさのあまり、ツヨシくんとネネちゃんはコメットさんに抱きつきました。

コメット「うん、ありがと。みんなのおかげだよ」
ツヨシ「でも、ぼくたちなにもしてない・・・」
コメット「応援してくれたじゃない、おかげで負けてたまるかーってね、力が湧いてきちゃった」
ネネ「うぅ・・・コメットさ〜ん・・・」
ケースケ「・・・・・・・・・」
青木「ありがとう!君が早く気づき、大声で知らせてくれたおかげで大事にならずにすんだよ」
明日香「は、はい!当然のことです!(大声はそんなつもりじゃなかったんだけど・・・)」
コメット「ごめんなさい明日香さん・・・私、みちるちゃんを助けにいこうとしたのに逆に助けられちゃって・・・」
明日香「いや、謝るのは私・・・コメットさんが助けに行ってなかったら、私が気づく前に手遅れになってたよ、ごめん・・・みちるもごめんね・・・苦しかったでしょう・・・?」
みちる「え?あ、謝らないでくださいよ!そもそもろくに泳げないのに奥まで流されちゃった私が原因なんですから・・・・・・」

謝らないでと言い返すみちるの瞳には涙が溜まっていました・・・。

みちる「命の恩人なんですよみなさん、お礼を言わせてください・・・みなさんありがとうございます!」
明日香「みちる・・・」
青木「はは、まあ俺たちの仕事だからな。気に負うなよ、な?また溺れたら助けてやるから」

青木さんは嬉し泣きするみちるの頭をなでながら言いました。

みちる「・・・はい!

みちるは涙を拭き、大きく返事をしました。

青木「これにて一件落着ってやつだな!」

周りに集まっている野次馬達も感動し、明日香さんと青木さんを祝福していました。

モブ雄「すごいなー君、二人を抱えて泳ぐなんて、長さといい細さといい足首の締り具合も最高だなぁ、将来はシンクロの選手に決定かい?」
明日香「おや、セクハラ発言ですか?・・・まあ、その道もありかもですかねー」

モブ美「あぁん、頼りなるおヒト・・・私が溺れたときもお願いしますねぇ?」
青木「そ、それはもう!(あ・・・あんまり密着してこないでくれっ・・・)」

コメット「はは・・・なんかすごい騒ぎになっちゃったね・・・」
みちる「発端は私なんですよね・・・ごめんなさい」
コメット「いいっていいって、私ももう平気だから。それより今日はみちるちゃんは明日香さんとここに来たの?」
みちる「はい、学校の先生に夏休みの間にプールで25m泳げるようになろうって言われて・・・でも私10mがせいぜいで、それで悩んでたら明日香さんが
    
よぉし!それなら私に任せなさい!私結構泳ぎは得意でね、みっちるぃと鍛えてあげるから!!みちるだけに、なんてねはははははー!!
    ・・・って・・・わざわざ私のために海で特訓してくれたんです・・・学校も違うのにバトン部の仲間ってだけで・・・嬉しかったです」
コメット「・・・モノマネわざわざありがとう。そっかぁ・・・明日香さん「いいひと」だね」
みちる「はい・・・」
コメット「(あれ?でも明日香さんがみちるちゃんに海で特訓って・・・・・・あれ?)」

と、コメットさんが深く考えてはいけないことを考えているところに、ツヨシくんとネネちゃんが割って入りました。

ツヨシ「コメットさん、ケースケにいちゃんいっちゃったよ」
コメット「え?ど、どこに?」
ネネ「ほら、どうろにいくかいだんあがってる」

ケースケは野次馬騒ぎの間に一人で一般公道につながる階段を上りきるところにいました。

ツヨシ「コメットさん!ケースケにいちゃんおくってあげなよ」
コメット「え?で、でもみんなを・・・」
ネネ「わたしたちはだいじょうぶだよ、ここにおとなのひともいるし」
みちる「・・・え?わたし・・・?」
ツヨシ「ね?だからあんしんしてコメットさん!」

ツヨシくんとネネちゃんはコメットさんを気遣い、自分達は大丈夫だからケースケを送るように勧めました。
コメットさんはちょっと間を置いて考えた後・・・。

コメット「・・・・・・わかった、ありがとツヨシくん、ネネちゃん。みちるちゃん、私ケースケ送っていくから二人を頼めるかな?」
みちる「は、はいわかりました」
コメット「ありがと、じゃあ行ってくるね」
ツヨシ・ネネ「いってらっしゃ〜い」

コメットさんはみちるに双子を託すとケースケの後を駆け足で追っていきました。

ツヨシ「よーしみちるちゃん、いっしょにおよごー!」
ネネ「だめだよツヨシくん、みちるちゃんおよげないってさっきはなしてたじゃない」
みちる「いや、全然ってわけじゃないんだけど」
ツヨシ「ぼくたちよりもおとななのになぁ・・・」
みちる「はい・・・すいませんです・・・」
ツヨシ「じゃあぼくたちがおよぎかたおしえてあげるよ」
みちる「え?ほんと?」
ネネ「ネネちゃんもおしえるー」
みちる「ああありがとう!ツヨシくん、ネネちゃん(う〜嬉しいけどちょっと情けない・・・・・・)」

こうしてみちるはいまだに野次馬に取り囲まれている明日香さんの変わりにツヨシくんとネネちゃんに泳ぎを教わることになりました。
さて一方、コメットさんの方は・・・。

**


コメット「
ケースケー!待ってよー!」

ケースケを追いかけるため階段を駆け上がるコメットさん。
ケースケはのろのろ歩いているため階段を上りきる前にあっという間に追いつきました。

ケースケ「お、お前」
コメット「大丈夫?・・・って、大丈夫じゃないよね。さ、行こう」
ケースケ「チビ共はいいのか・・・」
コメット「(アレ?)うん、みちるちゃんがいるから大丈夫だってあの子達が・・・」

コメットさんはケースケの予想外のおとなしい反応にとまどいました。

ケースケ「そうか・・・お前にもあいつらにも気を遣わせちまって・・・悪いな・・・」
コメット「え!?いいいいやいや、気にしないでいいよ!?」

コメットさんは素直に謝るケースケにさらにとまどいました。

コメット「(どうしたんだろケースケ急にどんよりしちゃって・・・なんか・・・「輝き」がなくなっちゃったみたい・・・なんで・・・?)」

ケースケのあまりに沈んだ反応を見てコメットさんは心配になってきました。
これは体調が悪いからじゃない――――でもコメットさんにはそれ以上はわかりませんでした。

・・・そして、考えながら歩いているうちにHONNO KIMOCHI YAに着きました。
海の賑わいとは裏腹に、店周辺には人がほとんどいません。

コメット「入り口のところ日陰になってるね、座ろ」
ケースケ「ああ」

コメットさんとケースケは店の入り口のところに並んで座りました。
ケースケは座ると同時に仰向けに寝そべりました。

ケースケ「あ〜〜・・・日陰入っても風がねえんじゃなあ・・・」
コメット「あらら、よしここは・・・」

ダレた口調でぼやくケースケ。
コメットさんはケースケに見えないようにティンクルバトンを出し、星力を使いました。


次の瞬間、コメットさんの手にはうちわが握られていました。
手にとったうちわでケースケに風を送ります。

コメット「どう?涼しい?」
ケースケ「おお・・・ありがとな・・・(いつの間にうちわなんか・・・)」
コメット「(・・・・・・)吐き気は大丈夫?」
ケースケ「ああ、おかげでマシになったよ・・・」

いつもの調子ではなくなっているケースケにコメットさんはやはり違和感を感じているようです。
自分で考えてもわからないのでうちわを仰ぐ手を止めてコメットさんは思い切って聞いてみました。

コメット「なんかさっきまでのケースケじゃない!」
ケースケ「え?なんだ急に?」
コメット「どうしたの?」
ケースケ「どうしたのって・・・見ればわかるだろ、体調崩してグダグダですよと・・・」

ケースケは当然の返事を返しました。こう返してくることは予想できたこと。
しかし、コメットさんは問い続けます。

コメット「そ、それはそうなんだろうけど・・・でも・・・それ抜きで変だよ」
ケースケ「それ抜きで変っておま・・・失礼だな」
コメット「なんていうかその・・・えっと・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・輝きがなくなっちゃってるみたいだよ!・・・(う〜〜言っちゃった・・・)」

問う言葉が見つからず、つい言ってしまいました。普通の人が聞けば「はぁ?」といった反応をするでしょう。
しかし、今のケースケは普通ではなかったのです。

ケースケ「お前・・・前にも同じようなこと言ってたよな・・・」
コメット「え?そうだったけ?覚えてないけど」
ケースケ「・・・なんとなくお前の言いたいことはわかったよ・・・あれだろ?なんか行く先見失ってるみたいな・・・そういうことだろ?」
コメット「あ・・・」

ケースケはコメットさんの言う「輝きがなくなっている」ということをなんとなく理解したようです。
ケースケは横にしていた体を起こし、今の胸の内を語り始めました。

ケースケ「なんかさ・・・俺すんげー情けないよな・・・」
コメット「え?どうして?」
ケースケ「毎日毎日ライフセーバーになるための修行をしてさ・・・いざという時にこれだぜ?」
コメット「それはしょうがないじゃない、今回は体調が悪く」
ケースケ「人の命に今回とかないだろう・・・それなのに俺はお前らにまで「ケースケよりマシ」と言われて、二次災害まで起こして・・・」
コメット「あ、あれは私が勝手に飛び出して・・・ケースケのせいじゃないよ!」
ケースケ「俺はお前を止めなきゃいけないのに止められなかった・・・挙句の果てに素人である明日香さんや担当じゃない青木さんに任せちまう始末だ・・・
      元気じゃないと人は救えないのに、この様・・・ダメダメだよな俺」
コメット「ちょ、ちょっと・・・一度ぐらい誰でも失敗はするよ、ケースケだってまだ人間なんだし」
ケースケ「まだ人間てなんだよ?・・・・・・ライフセーバーに失敗は許されないんだっての、なぁ・・・俺このままライフセーバーを追ってもいいのかな・・・
      自分の体調管理もまともできねーでさ、人を救うだなんて甚だしいよなあ・・・」
コメット「なっ・・・なにいってるの、しっかりしてよ!」

ケースケのあまりの情けない自信喪失ぶりにコメットさんは焦ります。

ケースケ「しっかり、か・・・俺ってさ、お前から見て普段からしっかりしてんのか?」
コメット「そ、それは」

ガッ!ガタンッ!!

コメット「!!」
ケースケ「!!なんだ!?」

突然大きな物音が二度、二人ともびっくりしました。

コメット「上のほうから音しなかった?」
ケースケ「だな、なにかあったんかな?」

どうやら音は店の二階からしたようです。
ケースケは静かに店のドアを開けて入りました。それにコメットさんも続きます。

コメット「あれ、ママさんいないや」

店の一階にはいつもどおりにぎやかにかわいい小物が立ち並んでいます。
しかし、人はいないようです。沙也加ママの姿もありません。

ケースケ「音は上のほうからだったろ?ちょっと二階行ってみるわ」
コメット「あ、待ってよケースケ、平気?」
ケースケ「あ?ああ、まだ気持ち悪いけど外にいた時よりはよくなったから」
コメット「いやそれもあるけど・・・なんか怖くない?」
ケースケ「・・・怖いのか?」
コメット「・・・うん」
ケースケ「へ〜・・・じゃあお前はそこで待ってろよ」
コメット「気をつけてよ」
ケースケ「おう・・・(実は俺もちょっと怖いんだけどな・・・)」

ケースケは表向きは平気な様子で返事をしましたが少し怖いようです。
おそるおそる二階への階段をのぼっていきます。

ケースケ「・・・あ!ママさん!」

階段を上り終える寸前、ケースケが見たものはうつぶせで倒れている沙也加ママでした。
沙也加ママの倒れている付近にはお皿の割れた破片が散らばっています。

コメット「どうしたのケースケ!ママさんいるの!?」
ケースケ「大変だ!ママさん倒れてる!」
コメット「ええっ!?」

コメットさんは沙也加ママが倒れていると聞き驚愕。階段を走って上がっていきます。
ケースケは沙也加ママさんのところに駆け寄りました。

その時です。

二階の茶房のカウンターから人影が飛び出し、棒のようなものでケースケの後頭部に一撃を加えました。

ケースケ「
!!・・・

ケースケは後頭部を左手で抱えた格好でその場に倒れこみました。

ケースケ「うあぁっ・・・」
コメット「
ケースケ!!

階段を上がり終えたコメットさんは倒れている2人のところに駆け寄ろうとしました。
しかし、その前に先ほどの人影の主が立ちはだかりました。
赤い半そでのシェイプスーツと黒のスパッツに身を包み、腰にはポーチをつけています。
背は高くなくケースケより・・・コメットさんよりも低いかもしれません。いや低いです。ちっちゃいです。
髪を二つに結えており、顔はあどけなく、見たところどうやら女性のようです。

泥棒とコメットが対峙した図(挿絵・イマジンカイザー)

コメット「
あなたは!?何をするんですか!?
???「・・・それはこっちのセリフ・・・あなたは何もしないの?」
コメット「うっ・・・」

女性は挑発的な口調でコメットさんに話しかけてきました。

???「何もしないんだったらあなたも・・・」
コメット「(・・・しょうがないっ!ここは星力であの人を気絶させる!)
えいっ!!

コメットさんは瞬時にティンクルバトンを出し、星力弾を女性に向かって発射しました。

???「わっ!な、何!?」

女性は突然出てきた星力弾に驚きました。普通の人なら当然の反応です。
が、瞬時に横に飛び退いてあっさりと星力弾をかわしてしまいました。星力弾はそのままの軌道で壁にぶつかって消えてしまいました。

コメット「(そんなっ・・・外れ・・・よけた!?)」
???「残念でしたっと!」
コメット「わあっ!」

女性はかわした瞬間、体を反転させチャクラムを投げつけコメットさんの持っているティンクルバトンを弾き飛ばしました。
その衝撃でコメットさんはしりもちをついてしまいました。

???「あーびっくりした・・・ねえ?今の何?」
コメット「そっ・・・そんなの言えません!」
???「ふ〜ん?・・・」

女性は弾き飛ばしたティンクルバトンの落ちているところに歩いていきます。
が、そこには女性が投げたチャクラムしか残ってませんでした。

???「あれ?ない・・・・・・まあ、いっか・・・さてその様子だともう何もできないみたいだね」
コメット「ううっ・・・」

コメットさんとケースケと沙也加ママは、茶房の椅子に両手首をロープで縛られてしまいました。
三人を縛り終えると女性は一階に降りようとしました。その時コメットさんが話しかけました。

コメット「あの!二人は大丈夫なんですか?ケガは?」
???「ああ、大丈夫大丈夫、男の子の方はゴムに重りつけた程度の棒で殴っただけだからケガはないよ。ご婦人の方は私は何もしてないよ、勝手にこけて気を失っただけ」
コメット「え・・・」
???「でかい音立ててね・・・私もびっくりしたよー、おかげであなたたちに見つかっちゃったってわけ・・・ケガは見たところしてないから大丈夫」

コメットさんはこの状況にもかかわらず二人にケガがないことにほっとしました。
そして女性にさらに問いました。

コメット「・・・もう一つ聞いていいですか?」
???「ん?」
コメット「あなた・・・なんなんですか?」
???「んー泥棒」
コメット「どろぼう・・・ですか?」
泥棒「うん、この店にあるお金を盗みに来たの」

コメットさんはあっけにとられました。コメットさんのイメージしていた泥棒とは全然違うほどに堂々としていたからです。
たしかに風貌も態度も相当異色です・・・。

コメット「ダ・・・ダメですよ!第一この店にはどろぼうさんが喜ぶほどのお金はありません!」
泥棒「何気にヒドイこといってるよあなた・・・・・・泥棒が悪いことなんて誰でもわかるよ、でも人は欲に負けるとどんな悪いことでもやっちゃうの、私も負けちゃったのよ。
    それに私はお金持ちの家には入らないの、お金持ちは泥棒に一度入られたくらいじゃすぐに忘れちゃうでしょ?こういういまいちなところから盗った方が、盗まれた人は一生悔やんで覚えててくれるもの
    それが私のや・り・か・た」
コメット「な・・・なんてことを・・・」
泥棒「ま、私の様式美は子供には理解できないかな、質問は終わり?じゃ私一階物色してくるから」

泥棒はそういうと店の一階へと降りていってしまいました。

・・・そして縛られた数分後・・・ケースケが目を覚ましました。

ケースケ「いってて・・・」
コメット「ケースケ、気がついた?」
ケースケ「ああ・・・お前は平気か?」
コメット「うん私は大丈夫、何もされてない」
ケースケ「そうか・・・しかし、なんかやばいことになっちまったな・・・」
コメット「うん・・・どうしよう・・・」
泥棒「あ、気がついたの?」

コメットさんとケースケが話していたら、泥棒が一階から階段を上がってきてケースケに話しかけました。

ケースケ「あ!あんたか!俺の大事な頭殴りやがったのは!」
コメット「(大事な・・・??)」
泥棒「(大事な・・・??)うん、そうよ、あのままじゃ見つかっちゃうところだったからね」
ケースケ「
くそっ!よくもやってくれたな・・・さっさとロープをほどけ!!
泥棒「ちょ、ちょっと!」

ケースケは大きな声で泥棒に怒鳴りました。
泥棒は慌ててケースケに駆け寄り、恐るべき速さでケースケのみぞおちに蹴りを打ち込みました。

ケースケ「っっ!!・・・・・げほっがほっ!!」
コメット「!!」

あまりの威力にケースケは一瞬意識が飛んだ後、激しい嘔吐を起こしました。
コメットさんは反射的に悲鳴を上げるところでしたが、泥棒に口を押さえられ上げれませんでした。

泥棒「あんまりおっきな声出さないでよ、となりに聞こえちゃうでしょうが・・・あら?あなた朝ご飯抜いた?きれいな胃液・・・」
ケースケ「ごほっ・・・気分・・・悪かったから・・・げほっげほっ(・・・こいつ・・・ハンパじゃない・・・・・・)」
コメット「んーーーー!!!」
泥棒「あなたも静かにしたほうがいいよ?」

泥棒はコメットさんを睨みつけながら、あくまで優しい口調で言いました。
コメットさんはその眼に危険を感じ、素直に声を上げようとするのをやめました。

泥棒「いいコ・・・」

すると泥棒はコメットさんの口を押さえていた手を離しました。

泥棒「ふう・・・じゃあもうちょっと二階を物色するかな・・・」

泥棒はさらに二階を探るようです。そこでコメットさんに質問してきました。

泥棒「ねえ、あなたこの店知ってるのよね?」
コメット「・・・知ってますよ、それがどうしたんですか?」

コメットさんは怒気を含む強い口調で返しました。泥棒は物色しながら質問を続けます。

泥棒「隠してあるものとかないの?金庫とかさ」
コメット「そんなの知りません!」
泥棒「はぁ、さいでっか・・・・・・ん?」

泥棒は突然二階のギャラリーのところで立ち止まりました。

泥棒「これ・・・可愛いね・・・うわーケースもしゃれてるわ・・・」

泥棒の目をひいたのはギャラリーに置いてあるプラスチックのケースに入った首飾りでした。
巻貝に赤いキラキラした紐が通してあるささやかながらもきれいな首飾りです。

コメット「あ!(それはツヨシくんとネネちゃんが沙也加ママのために作った首飾り・・・)」

泥棒はすぐさまケースを開けて、首飾りを手に取りました。
そして、コメットさんに質問しました。

泥棒「ねえ、これもらってもいい?」

コメットさんはさらに怒気を含んだ声で答えます。

コメット「絶・対ダメです!」
泥棒「お金を払ってもダメ?」
コメット「それは売り物じゃありません!
絶対にあげません!
ケースケ「お、おい・・・声がっ・・・!」
泥棒「!」

泥棒は大きな声を出してしまったコメットさんに向かってチャクラムを投げつけました。
チャクラムは一瞬の内に飛んで行き、コメットさんの頬を紙一重で通過し、後ろの壁に深く突き刺さりました。
コメットさんはまばたきする暇もなかったようです。
しかし、その目は泥棒をしっかりと睨みつけていたままでした。
泥棒はさらに問います。

泥棒「二度目よ?気をつけて・・・・・・で、どうしてもダメ?」
コメット「はい」
泥棒「そう・・・よっぽどこの店にとって大切なものなのね・・・」

泥棒は頑として譲らないコメットさんに対し、あきらめるそぶりを見せました。
しかし、泥棒は思わぬ行動をとりました。

泥棒「じゃあもらうね」

泥棒は自分の首に首飾りをつけてしまったのです。
コメットさんは驚き、声を荒げます。

コメット「な・・・なにしてるんですかっ!返してください!」
泥棒「・・・あのね・・・私は泥棒だよ?あげませんと言われても聞くわけないでしょ?」
コメット「うっ・・・くうぅっ・・・・・・(ツヨシくん・・・ネネちゃん・・・あんなにがんばって作ったのに・・・!)」
ケースケ「(・・・・・・あの女っ・・・)」

泥棒は首飾りを自分の物にしてしまいました。
しかしコメットさんにはどうすることもできません。
ただ唇をかみしめ、悔しがることしか・・・。
首飾りのことなど全く知らないケースケですが、コメットさんの悔しがる姿を見て、泥棒に対して激しい怒りが込み上げてきました。
そして、泥棒を鋭い目で睨みつけました。
泥棒はそんな二人を見て哀れみと恐れを抱いたのか、表情が強ばりました。

泥棒「う・・・二人ともそんな顔しなくても・・・・・・わかったよお・・・返せばいいんでしょ?」

そしてさっき言ったこととは全く逆の事を言い始めたのです。
これにはコメットさんとケースケはあっけにとられてしまいました。

泥棒「はい」

泥棒はコメットさんに歩み寄り、首飾りをコメットさんの目の前の床に置きました。

コメット「あの・・・なんで・・・?」
泥棒「あなたには負けました・・・そこまで悲しむほど大切なものじゃ私には奪えません、私って優しいからさ、そういうの好きじゃないのですー」
コメット「か、返してくれるんですね?」
泥棒「そ」
コメット「あぁあ、よかったです!」

コメットさんは首飾りを返してもらったことで表情に笑みが戻りました。
しかし、その笑みは次の瞬間、絶望の表情へと変貌しました。

泥棒「っ・・・!」

グシャッ


コメットさんにとっては破滅の音としか聞こえなかったでしょう。
泥棒はコメットさんの目の前で首飾りを踏み潰したのです。
泥棒が足をどけると首飾りの貝の部分は粉々に砕け散っていました。
コメットさんは目の前の無残な姿に成り果てた首飾りを呆然と見つめることしかできませんでした・・・。
泥棒はそんなコメットさんに、顔を近づけて言いました。

泥棒「・・・・・・・うふふ・・・ごめんね、さっきの嘘・・・希望から一気に絶望に叩き落す快感・・・叩き落された奴の無様な顔を上から見下す・・・・・・最高に楽しい・・・よ・・・」
コメット「・・・・・・・・・・・・」
泥棒「ん〜いい顔だね・・・かわいそう・・・」


ケースケ「く・・・なんてこと・・・
なんてことすんだ!
泥棒「おっと!」
ケースケ「っ!!」

ケースケは激昂し、泥棒を怒鳴りつけました。
すると泥棒はすかさずケースケの顔面に回し蹴りを放ちました。
回し蹴りはケースケの頬肉をかすめ皮を切りました・・・いや削れたと言った方がいい傷口です。
削れた頬から血がしたたりおちてきます。

泥棒「三度目・・・静かにしてって言ってるでしょ?次やらかしたら狙っちゃうよ?」

泥棒は脅しを含む強い口調で、怒鳴り声を発したケースケを戒めました。
しかし、そんな泥棒の脅しに臆することなくケースケは言葉を続けます。

ケースケ「
この人でなし!返すって言ったじゃねえか!よくもこいつの大切なっ・・・!」

泥棒はケースケの左の肩口に向かってチャクラムを投げました。
チャクラムはケースケの左肩の皮を切り、壁に突き刺さりました。
ケースケの着ているシャツが左肩から赤く染まっていきます。

コメット「ケースケ!」
泥棒「四度目ー・・・あれもうそよ、嘘、泥棒は平気で人を騙すものなの」
ケースケ「痛っ・・・こ・・・
この野郎っ!!」

次に泥棒はケースケの右腕に向かってチャクラムを投げました。
そして右腕からも血がしたたり始めました。

コメット「やめて・・・やめてよ・・・」
泥棒「五度目〜・・・野郎じゃないもん、女だもん・・・第一なんであなたがそんな怒るので?これこの女の子のでしょ?」
ケースケ「
うっせえ!誰だって怒る!許せないんだよ!人としてお前みたいなやつっ!
泥棒「うっせえ♪」

ケースケは縛られている状態に関わらず、泥棒に向かって大声でわめきちらします。
しかし、泥棒はまったく動じることはなく、冷淡に返し続けました。なんらかのおしおきを加えて・・・。
何度も繰り返されるおしおきで傷だらけになっていくケースケ。
そんなケースケに向かってコメットさんは叫びました。

コメット「もうやめてよ!ケースケッ!もういいから!!」
ケースケ「お、お前・・・いいわけないだろ!だってこんな・・・」
コメット「直すから・・・また直せば元通りにできるから!」
ケースケ「直すって・・・こんな粉々でどうやって直すんだよ!?」
コメット「大丈夫・・・それでも直すから・・・だからもう・・・やめて・・・・・・」
ケースケ「・・・・・・わかったよ・・・」

コメットさんにたしなめられ、ケースケはようやくわめくのをやめました。

泥棒「あら、終わり?そろそろ喋れなくしてあげようと思ったところだけど・・・
   ま、あなたがあんまり大声出すもんだからもうここは危なそうだし・・・私帰るわ、いいもの盗れたしね」

泥棒はそう言いながらケースケとコメットさんの後ろの壁に歩み寄り、壁に刺さっている多数のチャクラムを拾い、ポーチにしまいこみました。

泥棒「え〜っと・・・・・・あった」

そして泥棒は何かを取り出しました。それは細く、筒状の形をしており、先端には紐がついていました。
ケースケはそれがなんなのかすぐにわかりました。

ケースケ「な・・・それはまさか・・・!」
泥棒「そう、爆弾・・・正確にはダイナマイトです、こんなことしたくないんだけどね・・・顔を見られたからにはこうするしかないの
    じゃなきゃ私が捕まっちゃうし、様式美にこだわっているわけにもいかないから」
コメット「そ、そんな・・・」
泥棒「おまけにこれ私の調合した特殊なやつでね、半径150mは吹き飛ばすよ、もっと小さくてもいいんだけど最近サボって作ってなかったからね」
コメット「ええっ!!(そんなのが爆発したら・・・今海にいる人たちまで・・・!)」
ケースケ「バカな・・・そんなの使ったらお前もただじゃすまないぞ!」
泥棒「ああ、それは大丈夫、これやたら導火線長いから、ほら」

泥棒はそう言うとダイナマイトの導火線を引っ張り、巻き上げました。
導火線はスルスルと伸び、伸びきった頃には10mに達していました。

泥棒「これなら爆発するまでに逃げられるから問題なし!そして逃げられないあなたたちは爆発するまでの間ずっと迫り来る恐怖と絶望に打ちひしがれるの・・・
   その表情を見れないのが残念だけどね・・・あ、なんか漫画みたい・・・」
ケースケ「くうっ・・・バカな事はやめろっ!」
泥棒「バカじゃないしやめないよん、じゃ点火!」

泥棒はついに導火線に火をつけました。
その瞬間、導火線から勢いのある火花が飛び散り始めました。
泥棒はすぐに導火線とダイナマイトから手を離しました。
ダイナマイトは階段付近へと転がり、止まりました。
導火線は落下しても勢いそのままで火花を散らしています。

泥棒「どう、花火みたいでしょ?これなら火も途中で消えにくいし、なによりキレイ、・・・私なりの手向けってやつね」
ケースケ「(この女・・・どこまで人をバカにすればっ・・・)」
泥棒「それじゃあバイバーイ!」

泥棒は別れの挨拶をし、一階の出口から素早く走り去ってしまいました。
コメットさんとケースケと沙也加ママを残し・・・。

コメット「
ケースケ!このままじゃ海にいるみんなまで・・・!
ケースケ「
わかってる!わかってる・・・う・・・(このロープさえとければ・・・・・・!)」

導火線の花火はみるみるうちにダイナマイトに迫っていきます。
ケースケとコメットさんは必死に、手首につながれたロープをちぎろうとしました。
しかしロープは力をこめればこめるほど手首に食い込んでいき、激痛がはしります。
二人の手首からギリギリと鈍い音が聞こえてきます。
その手首からは血がダラダラと流れていました。
しかし、それでもロープはまだ切れません。

コメット「(ケースケ・・・・・・くっ・・・こんなときに星力さえ使えたら・・・)
ケースケ「・・・・・・・・・・くあっ!

ケースケは声を上げると同時に力を一旦抜きました。


ケースケ「(くそっ!切れないっ・・・・・・俺なんかじゃダメなのか・・・体調不良なんてマヌケな理由で人を助けられず、ここまでになっても誰一人・・・こいつ一人も助けられないのか・・・)」

      
ケースケの頭に知っている人たちの顔が浮かびました。師と仰ぐ人、先輩達、慕ってくれる子供達、そして・・・今は亡き父親の顔が。


ケースケ「(みんな・・・こんな事で死ぬことになるなんて誰も思ってもいない・・・今も海で楽しく遊んでる・・・・・・

      親父・・・今だけでも俺にみんなを・・・

      みんなを助けれる力をっ!・・・
俺が助けなくて・・・誰が助けるんだよぉっ!!)」


ケースケはそう念じるとともに、抜いていた力を一気にいれました。

ケースケ「
うおおああああーーーーっ!!!!

ブチッ!

ケースケは手首につながれていたロープをついに引きちぎりました。
しかし、後ろ手も結ばれているので手首は絡まったままでした。
それにかかわらず、ケースケはすぐさま立ち上がり、激しく火花の散っている導火線に走っていきました。
そして、花火の上に覆いかぶさるように倒れこみました。

ケースケが花火に倒れこんだ図

ケースケ「ぐう・・・つっ・・・」
コメット「ケースケ!!」

ジュウウウッ・・・・・・

花火は焼き焦げる音を発しながら、どんどん小さくなり・・・やがて消えました。
ケースケは倒れこんだままで動きません。

コメット「ケースケ!しっかりしてよ!!ケースケ!!ケースケッ!!!

コメットさんは大粒の涙を流しながらケースケの名前を叫びました。
しかし、反応がありません。

沙也加「う・・・ううん・・・?な・・・なにこれ!!」

すると今まで気をうしなったままだった沙也加ママが目を覚ましました。
そして今の状況を目の当たりにし、驚きの声をあげました。

沙也加「コメットさん!一体何があったの?」
コメット「ママさん・・・泥棒が入って・・・・・・ケースケ・・・ケースケが・・・」
沙也加「!!」

沙也加ママは倒れているケースケを見て、状況を理解したようです。
しかし、自分もロープにつながれているので動けません。
沙也加ママはすぐさま行動に移りました。

沙也加「コメットさん!動かないで!ロープをほどくわ」
コメット「は、はい!」

隣の椅子に縛られていたのが幸いでした。
沙也加ママはなんと口を使ってコメットさんのつながれたロープをほどきにかかりました。

沙也加「〜〜〜〜よしあとはこれで、えいっ!」

ある程度口でほどくと沙也加ママは両足を使って、力づくで引っ張りました。
そしてものの1分足らずでコメットさんのロープをほどきました。

沙也加「コメットさん、次は私のを!」
コメット「はい!」

次はコメットさんが沙也加ママのロープをほどきました。

沙也加「私は警察と救急車を呼ぶわ!コメットさんはケースケ君を!」
コメット「はい!」

沙也加ママは素早く店の電話で警察と救急車を呼びました。
コメットさんはケースケのところに駆け寄り、ケースケを仰向けにして抱き起こしました。

コメット「ケースケ!起きて!起きてよ!

コメットさんはケースケの目を覚まさせようと懸命に叫びました。
するとケースケはあっさり反応を示しました。

ケースケ「痛ててて・・・・・・大丈夫起きてるよ、そんなでかい声出さなくてもいい・・・」
コメット「ケースケ!よかった・・・!なんで返事してくれないの!もう・・・」
ケースケ「あ〜・・・あんまり熱かったもんでな・・・悪かったよ・・・だから泣くな」

ケースケは意識を失っていたわけではなく、ただ返事をしなかっただけでした。
電話をかけ終えた沙也加ママもケースケのところに駆け寄ります。

沙也加「ケースケ君!大丈夫なの!?」
ケースケ「はい、あちこち切ったりしてますけど・・・立つこともできますよ、ほら・・・あ痛!」

ケースケはスクッと立ち上がりましたが、胸を押さえて少しバランスを崩し、テーブルに手をかけました。
その胸は導火線を鎮火させた時の火傷がありました。
穴の空いたシャツからのぞく患部は黒くなり、少しただれていました。

コメット「ケースケ、胸・・・」
沙也加「これはちょっとひどい火傷ね・・・早く水で冷やした方がいいわ、ここにはないからおとなりに行って借りましょう、ケースケ君歩ける?」
ケースケ「はい、それは平気っす」

そして3人は店を出て、となりのレストランに水を借りにいこうとしました。
すると、レストランの扉の前に人が立っていました。

沙也加「あ、店長さん!」
店長「藤吉さん!ちょうどよかった、おたくがあんまりやかましいもんだから様子見にいこうと・・・おわっ!どうしたんですその子!」
沙也加「この子が火傷しちゃって・・・バケツいっぱいに水ください!」
店長「わ、わかりました!」

店長は沙也加ママに言われると、水をバケツいっぱいに汲んできました。
沙也加ママはバケツを受け取ると、家の外に出ました。

沙也加「痛いけどガマンしてよ?」
ケースケ「は・・・はい・・・」

そして、沙也加ママはバケツの水を少しずつケースケの胸にかけました。

ケースケ「っ!・・・・・・(うーわーマジで痛てー!しみるー!)」
コメット(うう・・・いたそう・・・)」

ケースケの火傷部分からかすかに水が蒸発する音がしました。
それと同時にケースケの胸に激痛が走ります。
ケースケの顔が苦痛でゆがみました。しかし、声は一言もあげずガマンします。

沙也加「とりあえず救急車がくるまで冷やし続けといたほうがいいわ」

そういうと沙也加ママはふたたび店長に水を運ばせてはケースケにかけることを繰り返しました。

そのうちケースケの苦痛な表情もやわらいできました。


ケースケ「ふーだいぶ楽になったっす・・・」
沙也加「それならとりあえず応急処置はできたわね・・・店長さんありがとうございます」
コメット「ありがとうございます!」
ケースケ「どうもです・・・」

沙也加ママは店長にバケツを返し、お礼を言いました。
コメットさんとケースケも続きました。

店長「いや気になさらずに・・・しかしなんか一騒動あったようですな、パトカーまで来るとは・・・」

応急処置を終えた頃、サイレンの音が聴こえてきました。
警察と救急車が同時に到着したようです。
そしてあっという間に店周辺はものものしい空気に包まれました。
刑事と救急隊員が三人の下に駆け寄ってきます。

沙也加「じゃ私、刑事さんとお話しなきゃいけないから、コメットさん、ケースケ君をよろしくね」
コメット「え?でもそれだと・・・ママさんずっと気を失ってたんですよ?」
沙也加「まずはケースケ君をなんとかしてもらわないと、詳しいことは後で話せばいいから」
コメット「わかりました・・・」

そう言うと沙也加ママはこちらに向かってくる刑事と救急隊員の方に歩いていきました。
少し話をした後、沙也加ママは刑事と店の方に行きました。
そして救急隊員はコメットさんとケースケのところに来ました。

救急隊員「君!大丈夫か!」
ケースケ「はい、意識も問題なし、歩くこともできます」
救急隊員「よし、それじゃあその怪我をなんとかするぐらいだな、救急車に乗ってくれ!」
コメット「あの、私も行きます!」
救急隊員「付き添いかい?わかった、君も少しケガをしているようだし、君も乗って!」
コメット「はい!」

救急隊員とケースケとコメットさんは救急車の止まっている道路の方へ歩いていきました。
道路に出ると、すでに野次馬がたくさん集まっていました。そしてその野次馬の中には・・・

ツヨシ「あ、いた!」
ネネ「コメットさーーん!ケースケにいちゃーーん!」
コメット「あ、ツヨシくんとネネちゃんだ、みんなも・・・」
ケースケ「まったく・・・みんなして野次馬ざろ・・・ぞろいだな」

ツヨシくんとネネちゃんの姿がありました。すぐそばにみちる、明日香さん、青木さんもいます。
コメットさんとケースケを呼びながら、二人の下へ走っていきます。
そしてケースケの傷だらけの姿を目の当たりにし、驚きの反応を示しました。

ツヨシ「わあっ!ケースケにいちゃんどうしたの!?」
ネネ「きずだらけだよ!」
青木「一体何があったんだ!?なかなか帰ってこないから心配していたらこの騒ぎ・・・どうしたんだそのケガ!?」
ケースケ「あーーまあひと騒動ありましてですね・・・その被害者になったって感じっす」
明日香「だ、大丈夫なの?痛くない?」
ケースケ「今はなんとか、さっきはむちゃくちゃ痛かったっすけど・・・」
みちる「コメットさんも・・・手首から血が・・・」
コメット「私は全然平気、それよりケースケを病院に連れて行かないと・・・」
救急隊員「そういうことだ、今は急いでいる、詳しいことは後から聞くといい・・・心配いらないよ、命に別状はない」

救急隊員がそういうとコメットさんとケースケを救急車の中に誘導しました。
しかし、コメットさんとケースケは救急車の中に乗り込むのを躊躇しました。

コメット「ちょ、ちょっといいですかまだ言うことが・・・」
ケースケ「すんません俺もっす」
救急隊員「・・・手短にね、終わったら乗ってくれ」

どうやらまだ皆に話すことがある二人、救急隊員にお願いしたところため息混じりに許してくれました。
コメットさんとケースケは軽く会釈をし、皆の方に向き直り話しました。

コメット「ツヨシくん、ネネちゃん今日はごめんね、ほとんど遊んであげられなくて、私これから病院いかなくちゃいけないから・・・」
ツヨシ「いいよ、またこんどね、それよりケースケにいちゃんだいじょうぶだよね・・・しんじゃったりしないよね?」
コメット「へ?」
ケースケ「は?はっははははは!こいつめーやなこというな!」
ツヨシ「ご、ごめんなさいっ!」
コメット「ほら、このとおり笑ってるから、ぜんっぜん大丈夫」
ネネ「ほんとだ、はははは」
コメット「それじゃ悪いですけど・・・明日香さん、みちるちゃん、二人を送っていただけますか?」
明日香「いただけます!」
みちる「はい」
コメット「ありがとうございます」
青木「すまんな、俺も付き添ってやりたいがここを離れるわけにもいかないからな」
ケースケ「いえいえいいっすよ、それより今日のところは俺の代わり・・・お願いします」
青木「ああ!それは任せろ!・・・それと忘れ物だ、ほれ、あの子のも」

青木さんはそう言うと、二つのバッグをケースケに渡しました。

ケースケ「あ・・・服っすか・・・どうもです」

二人は伝えることを言い終えると、救急車に乗り込みました。
そして救急隊員がドアをしめると救急車はサイレンを鳴らしながら、一瞬でこの場を走り去っていきました。
皆は救急車が見えなくなるまで見送っていました。
そして見送り終えると明日香さんが言いました。

明日香「じゃあ、今日はもう帰ろうか」
ツヨシ「うん、このことをパパとママに・・・・・・!!!」
ネネ「ママ!!」

すると突然、ツヨシくんとネネちゃんが店の方向へ走り出しました。

明日香「あ!ちょっとーどうしたのー!!」
みちる「・・・そういえばあのパトカーの置いてあるところ・・・あの子達の・・・」

ツヨシ・ネネ「
ママー!!
「ん?」

ツヨシくんとネネちゃんは猛ダッシュで店の入り口前にいる男をすり抜け、ドアを勢いよく開きました。


バタンッ!
ぷちっ


ドアを開けると、すぐそこに沙也加ママがいました。
沙也加ママは突然、しかも自分の子供達が現れたので驚きました。

沙也加「ツ、ツヨシ、ネネ!」
ツヨシ「ママ!」
ネネ「ママー!」

ツヨシくんとネネちゃんは沙也加ママの下にすぐさま駆け寄りました。
そして、沙也加ママにしがみつき、心配そうに問いました。

ツヨシ「だいじょうぶ?なんともない?」
ネネ「ケガしてない?どこかいたくない?」

沙也加ママには二人がコメットさんとケースケにすでに会っていることがすぐわかりました。
沙也加ママは二人の頭に手を置き、笑顔で答えました。

沙也加「・・・大丈夫・・・私はなんともないから・・・」
ツヨシ「ほ、ほんとに?」
沙也加「うん、ほらどこも痛そうじゃないでしょ?」
ネネ「はあ〜よかった・・・」

沙也加ママが無事でツヨシくんとネネちゃんは一安心。
しかし、一人無事じゃない人がいました。

刑事「・・・あの・・・私は大丈夫じゃないんですけど・・・」
沙也加「あ・・・すいません」
刑事「ふがっ!痛ええ・・・(鼻鳴った・・・)」

そこにはツヨシくんとネネちゃんが勢いよく開けたドアにはさまれた刑事の姿がありました。
刑事は鼻をおさえて少し涙目になっていました。
ツヨシくんとネネちゃんは慌てて刑事に謝りました。

ツヨシ「ご、ごめんなさい!」
ネネ「わざとじゃないんです、すいません!」
刑事「ははは、いいよ、よっぽどお母さんのことが心配だったんだね・・・いいお子さん達をお持ちですね」
沙也加「・・・はい・・・」

刑事は痛がりながらも笑顔を作り、二人を許してくれました。
そして、店の外に出ました。

刑事「それじゃ今日のところはこれで引き上げますわ、また後日ってことで」
沙也加「はい、お願いします」
刑事「では・・・おい、行くぞ、次は病院だ」
部下「御意」

刑事は引き上げることを沙也加ママに告げると、ドアの前にいた男と一緒に早歩きでパトカーに乗り込み、走り去っていきました。
沙也加ママはそれを見送ると、店のドアを開け、中に入り少しけだるそうな声で言いました。

沙也加「さてと・・・お店の中掃除しなくっちゃ、ちらかしちゃったからね(主に私が)」
ツヨシ「おみせちらかってるの?きれいだけど・・・」
沙也加「下はいいんだけど二階がちょっとね・・・」
ツヨシ「ぼくもおそうじてつだう!」
ネネ「ネネちゃんもてつだう!」

沙也加ママのけだるそうな声とは裏腹に、張り切った声でツヨシくんとネネちゃんは言いました。手伝う気満々のようです。

沙也加「え?別に私だけで・・・・・・・・・わかった、一緒にやろっか!」
ツヨシ・ネネ「おー!」
沙也加「その前に・・・服着替えてきなさいね?」
ツヨシ「あ・・・はーい!」
ネネ「そういえばみずぎのままだったね」

沙也加ママに指摘され、ツヨシくんとネネちゃんは服に着替えるため、一旦店をでました。
すると、入り口付近まで来ていた明日香さんとみちると青木さんに会いました。

みちる「ツヨシくん、ネネちゃん、どうだった?」
ツヨシ「ぜんぜんへーき!ピンピンしてたよ!」
明日香「そうか!よかったね」
ネネ「ただちょっとおみせのなかがちらかってて、これからてつだうからきがえるとこ」
青木「ケースケがあれじゃ店も大変そうだな・・・」
ツヨシ「そういうことーじゃあねー!」

ツヨシくんとネネちゃんは沙也加ママは無事だったことを三人に伝えると、すぐに走って行ってしまいました。
沙也加ママが無事なのは三人にはわかっていたことですが・・・。

みちる「あらら行っちゃった・・・はりきってますね」
明日香「お母さんが無事だったのが嬉しかったんじゃない?」
みちる「ですね」
明日香「んじゃ、私達も着替えて手伝いにいこうか!どの道コメットさんにおもり任されてるし、ね」
みちる「はい!」
青木「すまんな、俺は手伝ってやれんが・・・」
明日香「いえいえ・・・それよりもケースケ君のぶんまで頑張ってくださいね」
青木「ああ!」

明日香さんとみちるはお手伝いのお手伝いのため、そのままツヨシくんとネネちゃんの後を追い、
青木さんはお勤めのため海のほうへと戻っていきました。

**


コメット「はぁ・・・疲れたね」
ケースケ「ああ・・・あの刑事さん、いらん話しすぎだ」

あれからしばらく経ち、すでに夕暮れ時
コメットさんとケースケはようやく病院から解放されました。
コメットさんは手首に包帯を、ケースケはそれに加え、胸は包帯ぐるぐる巻き、体中ばんそうこうだらけと行った姿でした。
しかしそんな治療よりも二人の気力をうばったのは、刑事の取り調べのようです。
二人とも、疲れた表情をしていました。

ケースケ「んじゃ俺帰るな、師匠にはてきとーにごまかしといてくれよ、ま、どうせママさんやチビたちが言うんだろうけどな」
コメット「家まで送っていくよ、そんな体で一人じゃ危ないでしょ?」
ケースケ「ええ〜別にいい、ケガした直後もあれだけ動けたんだぞ俺」
コメット「ダメ!そういうのが二次災害のもとになるんだよ?ゆだんたいてきって知ってる!?」
ケースケ「(なんだその発音・・・)・・・お前は知ってんのか?」
コメット「え?それはその・・・ゆだんはたいてきってこと・・・・・・」
ケースケ「そのままじゃんかよ」
コメット「あーもうとにかくダメ!!」
ケースケ「わかった、わーかった・・・ま、使いかたは間違ってねえからな・・・一応」

病院の前でコメットさんと別れようとするケースケ。
しかし、コメットさんは家まで送ると言って聞きません。
ケースケは観念し、従うことにしました。
二人はケースケのアパートへむけて歩き始めます。

・・・・・・少し無言で歩いた後、コメットさんがケースケに話しかけました。

コメット「・・・しばらく歩いたけどどこか痛くない?」
ケースケ「あ?ああ、全然、でも触ると痛えな、特にやけど」
コメット「触ったら痛いんだ・・・お風呂入れる?」
ケースケ「風呂よりも、明日からの海がやばいと思うぞ・・・しみるだろうなあ・・・」
コメット「ええ?もう明日から海行くの!?」

コメットさんは思わず声を張り上げました。
病院送りになった次の日に海に行くだなんて思いもしなかったからです。
しかし、ケースケは淡々と答えを返します。

ケースケ「そりゃそうだ、こんなケガぐらいでサボれねえよ、今回は医者にも止められなかったしな」
コメット「そ、そうだけど・・・」
ケースケ「わかってるって・・・そこらへんは青木さんたちと話すっからよ」
コメット「うん・・・気をつけてよ?」
ケースケ「へいへい」

曖昧な返事をするケースケに、コメットさんは心配が募ります。
また、今日のようなことがおきたら・・・またあんな無茶をしたらと思うと・・・。


そうして歩いている内に、ケースケのアパートが見えてきました。


ケースケ「ふー、無事に我が家に到着と!」
コメット「ケースケは無事じゃないよっ!」
ケースケ「はははは、たしかにそうだ・・・しかし俺ら貴重な体験したよな、殺されそうになったんだもんな、みんなが必ず出くわすってもんじゃないぜ」
コメット「貴重な体験でも私はこういうのはいやだな・・・こわいし・・・いたいし・・・」
ケースケ「ま、まあな、そこは俺もいやだけど・・・」
コメット「あ、でもこれでわかったことがある」
ケースケ「なにが?」

ケースケが聞くと、コメットさんは立ち止まり、ケースケの方を向き笑顔で答えました。

コメット「・・・やっぱりケースケはライフセーバーになるしかないって」
ケースケ「え?・・・でも俺・・・」
コメット「ケースケは助けたじゃない・・・沙也加ママと私、海にいるたくさんの人たちを助けたじゃない・・・こんなに痛いめしてまでも」
ケースケ「・・・・・・」
コメット「私にはどうしようもなかった・・・誰にでもできることじゃない、ケースケだからこそできたんだよ」
ケースケ「俺だから・・・?」
コメット「私すごいって思ったよ、ケースケほどライフセーバーに向いてる人なんてそうそういないって思った・・・だから自信持ってよ!」

少し間を置くと、ケースケはコメットさんから目を背け、顔を赤くして答えました。

ケースケ「・・・・・・・・・なにいってんだよ、当然だろ、俺の夢なんだからな」
コメット「あれ〜?昼間あんな弱気なこと言ってたのになあ〜?」
ケースケ「あ、あれはその・・・どうかしてたんだよ、ホレ、病は気から・・・みたいなもんだ、あの時すっげえ気持ち悪かったし」
コメット「そうなんだ〜・・・じゃああれはウソ?」
ケースケ「そう!ウソ!ウソってことにしてくれ・・・あー!このこと師匠や青木さんに言うなよ!怒られちまう!な!頼む!」
コメット「ぷっ、あははははは、いいよ・・・ないしょにしておいてあげる」
ケースケ「絶対だぞ!・・・はぁ〜〜あ・・・(弱み握られちまった・・・)」

コメットにちゃかされるケースケの図

ケースケはため息を吐きながら自分の愚行を悔やみました。
しかし、その顔は赤いままで少し嬉しそうな表情をしていました。
コメットさんはちょっと意地悪をしたのと、いつものケースケに戻った嬉しさでどんよりした気持ちがはれたようです。
ケースケは少し路線を変えてこんな話を始めました。

ケースケ「しかし・・・あれこそが※火事場のクソぢからって言うんだろうな」                             ※火事場の馬鹿力が正解です。皆さんは間違えないようにしましょう。
コメット「クソぢから?なにそれ」
ケースケ「知らないのか?あぶない状況に陥ると普段よりすごい力が出る・・・その力のことを火事場のクソぢからって言うんだ」
コメット「へえ〜火事場のクソぢから・・・でも私には出せなかったなあ、クソぢから・・・」
ケースケ「血が出るほど手首にロープくいこむぐらいだから結構出てたんじゃね?」
コメット「そうかなあ・・・結構・・・ってことは出し切れてなかったってことかな?」
ケースケ「そういうことになっちまうかな・・・あ、そう考えると俺の場合、青木さんの教えがあったからこそだったのかもしれねえな」
コメット「え?なになに?教えてよ」
ケースケ「ずいぶんとくいつくな・・・」
コメット「だって私も出したいもん、クソぢから!」
ケースケ「(・・・あんまりクソぢからクソぢからって言うなよ・・・)」

ケースケの言う「火事場のクソぢから」の話に興味津々のコメットさん。
ケースケはコメットさんの過剰な反応に少々驚きながら、話しました。

ケースケ「ちっと恥ずいけど・・・俺、あの時・・・ロープがほどく時な?その青木さんの教えが頭に浮かんだんだ・・・ほとんど無我夢中だったけどな」
コメット「うん」
ケースケ「で、やっぱ先輩の教えだし、破るわけにはいかねえと思ったわけよ・・・」

するとケースケはコメットさんに出会うより大分前のことを話し始めました・・・。




青木「いいかケースケ、ライフセーバーは人を救う人、しかしライフセーバーは普通の人とは違う、
    人の命を救うためなら自分の命を捨ててでも必ず救わなくてはダメなんだ、そのために存在するんだからな」
ケースケ「はい・・・んーでもその場面にでくわすと怖くなって無理じゃないすか?自分は死んじまうってことでしょう?」
青木「なーに心配はいらない、自分の守りたいものを見つければいいんだ」
ケースケ「守りたいもの・・・?」
青木「なんでもいいさ、物でも家族でも恋人でも友達でも、守りたいものさえあれば自分も人も助けられる」
ケースケ「なんでっすか?」
青木「もしも守りたいものがいるのに自分がいなくなったらどうなる?」
ケースケ「えー・・・そりゃ自分の知ってる奴に「後は頼む」みたいな感じで・・・」
青木「甘いな」
ケースケ「あれ、ダメッすか?」
青木「自分の守りたいものを人任せにしていいのか?『自分』の守りたいものだぞ?」
ケースケ「・・・安らかには死ねないっすね・・・」
青木「だろう?それに救わなきゃいけない人もそうだ、その人も守りたいものを持っている」
    守りたいものがあれば守りたいものがある人を意地でも助けよう、そして自分も絶対生きて帰ろうって思えないか?」
ケースケ「・・・俺には無理そうっす・・・その話からすると俺って『守られるもの』っすよね?」
青木「今はまだな、でもどっか脳の奥にでもしまっといても損はないぞ?」
ケースケ「青木さんは見つけたってわけですか?守りたいもの・・・」
青木「あ?ま、まあそういうことだな、おっとこれは言えないぞ、恥ずかしいもん」
ケースケ「はあ・・・俺になれますかね?『守られるもの』から『守るもの』に・・・」
青木「俺はそうやってライフセーバーになれたんだ、お前にもできるはずだ、もしできなくて早くも親父さんに会いまみえる・・・ってどうよ?どんな面下げて顔向けすんだ?」
ケースケ「うへ、死ぬのも会うのもカンベンですわ・・・でもそうっすね・・・親父につづいて俺まで海で死亡〜なんて・・・ライフセーバー目指す奴がそんなんじゃダメっすね」
青木「ま、今は気持ち以前に体を強くしないとな!自分が元気であってこそ人を救えるんだからな!」
ケースケ「あ、それなんかいいっすね、名言ぽい響きっす」
青木「お、そうか!?ははは!」





ケースケ「内心・・・他人のために自分が犠牲になるなんて大それたこと、無理だと思ってたんだが・・・お前の言うところだと今日ついにできたってことになるのかな?
      お、なんかそう考えると自信になったかもなあ」
コメット「・・・・・・(守りたいものを・・・)」

コメットさんはケースケの昔話をただ無言で聞き入っていました。
話を終えた頃、二人はケースケのアパートの門の前に着きました。

ケースケ「うし、ここまでいらんお送りごくろうさん」
コメット「む、いらんって・・・!!」
ケースケ「おっと冗談だよ、そうふくれるなって、じゃあな!」

そう言った瞬間、ケースケはケガだらけにも関わらず、アパートの入り口に走って行ってしまいました。

コメット「あ!ちょっと!・・・逃げた・・・」

元気なところを見せたかったのか、ただ逃げただけなのか・・・
コメットさんは逃げられたと認識したようです。

コメット「もう!冗談ならなんでわざわざあんなこと言うの!?
ケースケのバーーーカーーー!

コメットさんはケースケのいる部屋にわざと聞こえるように叫びました。
そして、反転し、早歩きでその場を後にしました・・・と思いきや、
アパートの門の柵に身をかがめました。

コメット「はぁ・・・・・・えーと、だい・・・じょうぶ・・・かな?よし!」

誰にも見られていないことを用心深く確認すると、手にティンクルバトンを出しました。
さすがのコメットさんも精神的に疲れ、今は星力に頼りたい気分なのでしょう。
星力を使い、星のトンネルを出そうと試みました。

コメット「ここもチェックしといてよかったー、あ、ちょうど星力なくなっちゃった・・・」

どうやら星のトンネルを出した瞬間、星力が尽きたようです。
それでも星のトンネルは見たところちゃんとつながっているようです。
コメットさんはほっと胸をなでおろすと、星のトンネルに入っていきました。
星のトンネルは問題なく、コメットさんを藤吉家へと運んでいきます。
そして、運ばれている途中コメットさんは考え事をしていました。
その表情は暗く曇っています。それは疲れているから・・・ではないようです。

コメット「(あのときのケースケ・・・・・・本当に・・・死ぬつもりだったのかな・・・前のあのときも・・・)」

コメットさんの頭には、ケースケが漁船に取り残された人を助けにいく場面、
体調が最悪なのにみちるを助けに行こうとする場面、
ロープをちぎり、ダイナマイトの花火を消すために倒れこむ場面が浮かんでいました。

コメット「(青木さんの言ってること正しいかもしれないけど・・・私は・・・もし皆が助かってもケースケが死んじゃったら・・・
     私・・・・・・いやだよ・・・そんなのいやだよ・・・)」

するとコメットさんは胸をしめつけられるような感覚に襲われました。
コメットさんは目をつぶり、胸に手を当てました。心を落ち着かせているつもりなのでしょう。

コメット「(・・・私がいやがったところでどうしようもないけど・・・ケースケの夢だもんね・・・私なんかに止める権利ない・・・
      私にできることは・・・応援することぐらいかな!)」

コメットさんは心を落ち着かせると、気を紛らわせるため、心の中でケースケにエールを送りました。


コメット「(ケースケ・・・頑張って・・・夢を叶えて!・・・・・・
でも、やっぱりもうこんな・・・こんな無茶だけはしないでほしいな・・
     
・・・・・・あーダメダメ!こんなんじゃ応援にならないよお!)」


しかし、どうしても心配を拭うことはできないようです・・・。
そうしているうちにコメットさんは藤吉家のウッドデッキに到着しました。
到着と同時に星のトンネルの入り口が消えました。

コメット「着いた・・・」

すでに日は暮れ、藤吉家だけではなく周りの家からは明かりが漏れていました。
コメットさんも疲れているため、早く家に入りたいはずなのですが・・・その足取りは重いです。
コメットさんはズボンのポケットに手に入れ何かを確かめました。

コメット「壊れてるよね・・・やっぱり・・・後で直すまではばれないようにしなくちゃ・・・今日はなかったけど、明日になったら見つかったなんてよくある話だし・・・大丈夫なはず・・・たぶん・・・」

コメットさんのポケットの中にあるのは、泥棒に踏み潰された首飾りの紐と破片でした。
どうやらコメットさんは星力で首飾りを直して、何事もなかったかのように店に戻す・・・という考えのようです。
と、その時

ツヨシ「あ、コメットさんだ!」
ネネ「コメットさんが帰ってきた!」
コメット「あ、ツヨシくん、ネネちゃんただいま〜」

突然ツヨシくんとネネちゃんが家の扉から出てきました。
どうやらコメットさんが帰ってくるのを扉の前でずっと待っていたようです。
続いて沙也加ママと景太郎パパも出てきてコメットさんを迎えました。

沙也加「お帰り、コメットさん、ほんとに大したことなくて何より」
景太郎「待ってたよ、大変だったね」
コメット「あ、あははは〜はい、大変でした〜でもケースケの方がもっと大変だったんですけど・・・」
景太郎「みたいだね・・・あいつもここに連れてきた方がよかったかな」
沙也加「さ、とりあえず中にはいろ、コメットさんお腹すいたでしょ?」
コメット「はい、すきましたー」
ツヨシ「ぼくたちもすいてるよー」
ネネ「ネネちゃんもーずっとまってたんだからー」
コメット「そうだったの?あーごめんね・・・」
ツヨシ「じゃあはやくいこう!」
コメット「うん!」

コメットさんはツヨシくんとネネちゃんに引っ張られながら家に入っていきました。

コメット「(ばれてない・・・のかな?沙也加ママ、お店の中は見たはず・・・・・・)」

**


さて、夜も更けて、あとは寝るだけの準備まで整えたコメットさん。
ところがコメットさんはまだやることが残っているようです。
寝間着姿のままで裏庭に出てきました。脇にはラバボーを連れています。

コメット「ラバボー、お願い」
ラバボー「OKだボ!」

コメットさんの合図でラバボーは大きく膨らみました。
コメットさんは早足でラバボーに跳び乗りました。

ラバボー「ひめさま、そんなに慌てなくても星は逃げないボ?」
コメット「だって、早く直したいんだもん、さ、跳んで!」
ラバボー「ひめさまってたまにせっかちだボ・・・それじゃ〜じゃーーーんぷ!!」

ラバボーはコメットさんを乗せて大きくジャンプしました。
やがて雲をつき抜け夜星が広がる空に出ました。
早速、コメットさんはティンクルバトンをかざし、星力を集め始めました。
星の輝きがコメットさんの持つティンクルバトンに集まっていきます。

コメット「星の子達ありがとう・・・よし、これで・・・」

星力を集め終え、早速コメットさんは首飾りを直しにかかりました。
砕け散った破片と紐を取り出し、星力を出しました。

コメット「お願い・・・直って・・・」
ラバボー「皆で作ったんだボー・・・直ってくれボー・・・」

コメットさんは星力を出しながら、目を閉じ、祈り続けました。
ラバボーもコメットさんと一緒に祈ります。
すると次第に、砕け散った破片が元通りの首飾りの形を成していきます。
とうとう、破片が一つ残らず無くなった時、コメットさんは目を開けました。

コメット「・・・やった・・・元に戻ったー!!・・・ってアレ!?」
ラバボー「ど、どうしたんだボ、ひめさま?」

完全に直った首飾り・・・ですがそれを見たコメットさんは安堵・・・ではなく仰天しました。

コメット「な・・・なにこれ・・・あの首飾りじゃない!」
ラバボー「えーーっ!どういうことだボ!?」
コメット「そんなのわかんないよー!なんでー!?」

なんとその首飾りは皆で作ったあの首飾りではなく、ただのプラスチックの首飾りだったのです。いわばおもちゃです。
あまりの意外な出来事にパニックに陥るコメットさん、そこをラバボーがたしなめます。

ラバボー「落ち着くボ、ひめさま!」
コメット「そんなおちついてられないよー!」
ラバボー「ひーめーさーま!本物を探せばいいんだボ!」
コメット「
ほほ本物って言ったって・・・たしかに目の前でど泥棒さんが・・・」
ラバボー「ひめさま口が回らなくなってるボ、右わかるかボ!?右!」
コメット「み、え!えーと、おわ、わ?お、お、おはしを持つ方!」
ラバボー「名前は!?名前!自分の名前!!」
コメット「え、ええっと、ここ、コメットです!・・・」
ラバボー「よおぉっし!!大丈夫じゃないかボ!・・・落ち着いたボ?」

コメット「・・・・・・・・・・・・ふぅ・・・・・・うん、ありがとうラバボー」
ラバボー「それで・・・その泥棒の目の前にあったのがそれだボ?本物じゃないボ、そいつ・・・なんか怪しいボ・・・」
コメット「・・・確かに格好は怪しかったけど・・・」
ラバボー「とにかくお店にいけばわかるかもしれないボ?もしかしたら本物があるかも・・・」
コメット「・・・そうだね・・・行ってみようか」

ようやく落ち着くと、コメットさんはもう夜中にも関わらず、ラバボーと共にHONNO KIMOCHI YAに向かいました。

コメット「ごめんねラバボー、もう夜遅いのにつき合わせちゃって・・・」
ラバボー「皆のためだボ、平気だボ!それに・・・」
コメット「うん?」
ラバボー「いや・・・なんでもないボ・・・よし着いたボ!」

さほど間もなく、二人はHONNO KIMOCHI YAに着きました。
ラバボーは結構な速度で飛んだにも関わらず疲れを見せず、気丈に振舞いました。
着地し、コメットさんを降ろすと元の姿に戻りました。

コメット「んーやっぱり閉めてるよね」
ラバボー「そりゃそうだボ」

コメットさんは店のドアに手をかけました。鍵がかかっているようです。

コメット「今日だけは許してください・・・」

コメットさんは星力を使い、鍵を開けて店に入りました。
真っ暗なので明かりをつけます。
コメットさんはなぜか忍び足で店内を歩きはじめました。

ラバボー「ひめさま、だれもいないから堂々と歩くボ」
コメット「いや、つい・・・」

ラバボーが冷静につっこみました。

コメット「二階にあるんだよ・・・・・・ああ、あった、ママさんの作ったケース」

二階にあがると、ひと目で沙也加ママお手製のケースが見つかりました。
もし本物の首飾りが無事だとしたら、そこにあるはずです。
コメットさんとラバボーはおそるおそるケースに近づきのぞきました。


コメット「・・・・・・ある・・・」
ラバボー「・・・・・・あるボ・・・」

ケースの中には泥棒に踏み潰され、粉々になったはずの首飾りが元の状態でたしかに飾ってありました。

コメット「・・・本物だよ・・・ちょっと欠けてる跡もそのまんま・・・」
ラバボー「なーんだボひめさま!全然無傷じゃないかボ!」
コメット「う〜んおかしいなあ・・・」
ラバボー「ひめさまきっとどうかしてたんだボ、極限状態ってやつだボ・・・だから見間違えたんだボ」
コメット「そう・・・だったのかな・・・」
ラバボー「多分・・・それにちゃんと首飾り無事だったんだから、そういうことでいいじゃないかボ?」
コメット「・・・そうだね、あーでも星の子達には悪かったかな・・・」
ラバボー「それはしょうがないボ、星の子達もわかってくれるボ」
コメット「うん・・・」

コメットさんはまだ少し納得がいかないようですが、本物の首飾りが無事だったので胸のつかえが取り除かれた気分でした。
HONNO KIMOCHI YAを後に、再びラバボーに乗り、藤吉家に戻ろうとするコメットさんでしたが・・・

コメット「あ、ちょっと待ってラバボー」
ラバボー「ん?どうしたんだボ?」
コメット「ちょっと寄りたいところが・・・」

何故か途中で寄り道をしたいと言い出しました。

ラバボー「ひめさま、こんな夜中に出かけてさらに寄り道たぁ・・・悪い子だボ・・・」
コメット「お願い、ちょっと!ちょっとだけだから!」
ラバボー「はぁ・・・わかったボ・・・」
コメット「ありがとう・・・(応援だけなんていや・・・これなら星の子達も・・・きっと許してくれるはず・・・)」

いい加減疲れてきたのでだれているラバボーでしたが、コメットさんにお願いされては断れません。
しぶしぶ寄り道に付き合いました。

**


次の日・・・
由比ヶ浜は朝のうちから早くも人が集まってきていました。ライフセーバーの人たちも遅れまいと準備を急ぎます。

天パ「ふう、今日もたくさん来そうですね・・・
青木「そうだなあ・・・ん?」
天パ「どうしたんですか青木さん・・・?」
青木「あれは・・・ケースケ?」

青木さんの視線の先、一般公道の方にケースケの姿がありました。
ケースケはまっすぐ青木さんたちのところに歩いてきました。

青木「うおおい!どうしたんだケースケ!けがなくなってるじゃないか!」
ケースケ「!?!!!!
!!!???!???!??

青木さんの何気ない一言に、ケースケは頭を押さえ、とある芸術家の描いた『叫び』のような形相になりました。

青木「あー!待て、違う違う、そうじゃない!・・・ケガが、無くなっているって言ったんだ・・・すまん悪かった・・・」
ケースケ「・・・・・・くぉ・・・はー・・・はー・・・冗談きついっすよ・・・青木さん」
青木「これからは気をつける・・・マジでごめん・・・」

青木さんが弁解するとケースケは元の表情に戻りました。
気を取り直して、青木さんが問います。

青木「・・・で、ケースケお前もういいのか?」
ケースケ「へへっ、ごらんのとおりっすよ、叩いても平気っす」

ケースケは、自分の胸を二人に見せて、火傷の上を手で叩きました。
まるで痛そうにしていません。

天パ「・・・青木さん話が違いますよ」
青木「俺もびっくりだ」

ケースケが昨日救急車で病院送りになったことを青木さんに聞いていた天パは今のケースケを見て、驚かずにはいられませんでした。
もちろん青木さんも・・・。
ケースケの体のあちこちに負った傷は消えており、胸の火傷も跡が残っているだけでほとんど治っていました。

ケースケ「まあ、そういうわけで宜しくお願いします、昨日の分まで頑張りますので」
青木「お前・・・信じられん回復力だな・・・人間離れしすぎだぞ」
天パ「人間離れ・・・あ!」

天パは何かに気づいたようです。
薄ら笑いを浮かべながらケースケに寄りました。

天パ「ははーん・・・」
ケースケ「な、なんすか?」
天パ「お前・・・あれか?天使さん効果か?」
ケースケ「え!?なんでわかったんすか!?」

天パの予想は当たっていました。
ケースケは以前足を捻挫し、全治一週間の診断を受けたのに、一日で治ったということがありました。
その日見た夢がかわいい天使さんの夢だったのを知って、カマをかけたのです。

青木「ああ・・・そんなことあったなあ」
ケースケ「そうっす、今回は前よりひどかったんすけど、またあの夢を見て起きたら・・・このとおりでした」
青木「同じ夢見て?起きたら?治ってた!・・・か・・・まったくもって不思議だな・・・」
ケースケ「俺もそう思うっす、不思議っすねー」
天パ「でよ?でよ?ケースケよ・・・」
ケースケ「はい?」
天パ「その子・・・やっぱりかわいかったのか?」
ケースケ「え・・・へへ、かわいかったっすー」
青木「はっはっは!なにノロケてんだ!この野郎!」
天パ「おまけにちょっと小声で言うな!こいつ!」
ケースケ「ははは、あんまり叩かないでくださーい、ケガ抜きで普通に痛いっすよー」

と、3人でおかしな話が咲いている時、もう二人のライフセーバー仲間も駆けつけました。

イケメン「どうもー・・・あれ?ケースケじゃん、お前大丈夫なの?」
ケースケ「はい、不思議なことに・・・」
天パ「また現れたんですよ、天使さんが・・・」
角刈り「えー?おいおいマジかよ!?・・・超常現象だな!・・・んで、どうだったんだその天使さん?」
ケースケ「・・・・・・・・・」
角刈り「な〜に黙ったままにやけてんだよ!」
イケメン「やっぱりかわいかったのかー!えー!?」
ケースケ「あ〜首絞めはご勘弁を〜」
青木「(こいつにとっての快適に眠る方法・・・ねえ・・・)」

さらに話がおかしくなってきましたので割愛させてもらいます。



やっとノロケ話が終わり、五人はやっと準備を整えました。
周りにはさらに人が増えてきています。

青木「今日もたくさんの人がくる・・・みんな今日もしっかり頼むぞ!」
他全員「
はいっ!
青木「じゃあ配置につけー!」

青木さんの号令で他全員は自分の担当区域に散っていきました。
ケースケも元気に走っていきます。
その様子を一般公道から見ている人達がいました。

景太郎「おほー、元気だなー・・・話と違わないかママ?」
沙也加「私もビックリしてる、無理しているようにも見えないし・・・すごいわねケースケ君」
ツヨシ「うん!ケースケにいちゃんつよいね!」
ネネ「さすがうみのおとこだね!」
コメット「ふふ・・・そうだね」

藤吉家のみなさんでした。ケースケのことが心配で見に来たようです。
ですがその姿は皆の心配の気など一切ふきとばしてしまいました。あっけにとられる景太郎パパ、ビックリの沙也加ママ、感心するツヨシくんとネネちゃん。
コメットさんはそんな皆の反応を楽しんでいるような表情でした。

もうおわかりでしょう、昨日コメットさんが寄り道したのは、ケースケのアパートだったのです。
以前と同じように、すでに眠っているケースケをこっそりと星力でケガを回復させたのです。

コメット「(うまくいったみたい・・・ラバボーと星の子達のおかげだね・・・ほんとにありがとう・・・)」

コメットさんはティンクルスターの中でまだ眠っているラバボーと、今は見えない空の星の子達に向けて心の中でお礼を言いました。

景太郎「なんか心配して損したな・・・治ったならいいけど、今日終わったらそこのところじっくり話しないとな」
沙也加「私も是非聞きたいわ、今日はケースケ君の全快祝いね」
コメット「あはは、こうもあっさり治るとなんだか祝い甲斐に欠けますけどね」
沙也加「ふふ、言うわねコメットさん、たしかにそうね・・・まあそこのところは奇跡の回復を祝して、ということでいいんじゃない?」
コメット「奇跡・・・ですか」
沙也加「そうでなきゃ、魔法ね、回復魔法」
コメット「え!?」
ツヨシ「まほう・・・?」
ネネ「まほう・・・!」

沙也加ママの予期せぬ言動にコメットさんはドキッとしました。

沙也加「・・・なんてね、ゲームじゃあるまいし・・・」
コメット「そ、そうですよ〜魔法なんて・・・」
沙也加「そうかどうかは本人に聞けばわかるから楽しみにしとくかな、それじゃ私、店に戻るからケースケ君に後で家来るように言っといてくれる?」
コメット「わかりました」
景太郎「じゃ、僕も家に戻って仕事するか・・・コメットさんよろしく、子供達もね」
コメット「はーい」

コメットさんに言伝をたくして景太郎パパは家の方に、沙也加ママは店の方に歩いていきました。
二人がいなくなるとコメットさんは大きく息をはきました。

コメット「ふう〜(ちょっとドキッとしたな・・・星力なんだけどね)」
ツヨシ「(まほうかあ・・・ひょっとしたら・・・)」
ネネ「(コメットさん・・・)」

星力の存在を知っているツヨシくんとネネちゃんはうすうす感づいているようでした。
しかし、コメットさんからそのことを言ってこないので二人は気を遣い、問おうことはしませんでした。
二人は同時にコメットさんの手を握り、言いました。

ツヨシ「コメットさん、はやくいこうよ!」
ネネ「ケースケにいちゃんのところいくんでしょ?」
コメット「う・・・うん!いこうか!(ツヨシくんとネネちゃんにも気づいてない・・・のかな?)」

コメットさんはツヨシくんとネネちゃんと手を繋ぎ、三人一緒にケースケのいる浜辺へと歩いて行きました。
普段と変わらぬツヨシくんとネネちゃんを見て、ケースケのケガを星力で治したことを気づかれていないと思いこんだようです。
その心配は無くなりましたが、それと同時にコメットさんは一つ気になることを思い出していました。

コメット「(・・・あの泥棒さん、結局なんだったんだろう・・・私達を殺そうとしたのに、本物の首飾りを壊さずに偽物を壊したり・・・
      よくわかんない人だったなあ・・・もしまた会うようなことがあったら聞いてみようかな・・・もう会いたくないけど)」

泥棒の謎の行動はコメットさんには理解できませんでした。
また会って改めてどういうことか聞きたいものですが、自分を殺そうとした人間に会いたいなんておかしな話です。
今度は誰を巻き込むかわかりません・・・二度と会わないことを切に願うコメットさんでした。

**


沙也加「あら、店の前に車が停まってる・・・なんだろ?」

沙也加ママが店に戻るとそこに一台の黒い車が停まっていました。
沙也加ママは少し不安になりながら、黒い車のもとに走っていきました。
しかし、車の中には誰もいません。
店のほうを見てみると、入り口には昨日会った刑事とその部下がいました。

沙也加「あ、刑事さん」
刑事「あ〜、どうも奥さん、開いてるはずなのに鍵がかかってるので、どうしたのかと思いましたよ」
沙也加「都合によりでして・・・それで今日はどうしたんです?」
刑事「今回の事件について伝えときたいことがありまして・・・」
沙也加「何かわかったんですか?」
刑事「はい、まずあの泥棒なんですが・・・常習犯でしてね、並みの泥棒ではなく今まで盗みを働いては逃げられていまして・・・」
沙也加「常習犯ですか・・・」
刑事「はい、これまで100件を超える被害が出ておりまして・・・被害総額も約300万円出ております」
沙也加「・・・・・・はい!?ちょっと待ってください、100件超えてて300万ですか?」
刑事「そうです・・・何故か件数の割りに被害がかなり少ないのです、そちらのお店でも被害は小さかったですよね」
沙也加「たしかに・・・レジから1万ほどとコーヒー豆を一瓶だけでした」
刑事「そう・・・まるで今欲しい分しか盗まないといった感じなんです」
沙也加「泥棒にしては変わってますね・・・昨日あの子にも少し聞きましたけど・・・」
刑事「あ、そうそう、あのピンク色の髪の子・・・ともう一人男の子がいましたね、あの後病院でお話を聞いたのですが・・・おい!」
部下「御意」

刑事に合図を出されると部下が何かを取り出し、刑事に渡しました。
それは泥棒が置いていったダイナマイトでした。

沙也加「これはあのときの爆弾ですよね・・・半径150mを吹き飛ばす威力の」
刑事「はい、そう言われていたものです」
沙也加「そう言われて・・・?・・・ひょっとしてこれは・・・」
刑事「はい・・・これは爆弾ではなく発火作用の強い花火だったのです・・・爆弾というのは泥棒のついた嘘でしょう」
沙也加「でも、なんでそんな嘘を・・・?」
刑事「今までもありました、まるで被害者をおちょくるような理解不能な行動をするのです・・・でも今回のは危なかったですけどね」
沙也加「・・・(そうだ・・・火がついていたら火事になって逃げられなかった・・・)」
刑事「この泥棒は今まで一度入ったところには二度入ったことはないですが、次はお宅に入るかもしれません、くれぐれも気をつけてください」
沙也加「・・・はい!用心します」
刑事「ではこれにて・・・行くぞ」
部下「御意」

話を終えて、刑事とその部下は車に乗り、走り去っていきました。
沙也加ママは店の鍵を開けて、中に入り、再度開店の準備を始めました。
そして、準備をしながら刑事の言葉を思いおこしていました。

沙也加「(次は家かもしれない・・・か・・・もしまた現れたら今度は私が皆を守らなきゃ・・・私は皆のママなんだから!
     ・・・・・・今度は気絶しないようにしなくちゃね・・・
     ・・・たとえ私に何かあっても・・・パパがいるし、コメットさんもいる!だから大丈夫!・・・)」

沙也加ママは自分の失敗を悔いながら、刑事の言葉を深く肝に銘じ、心に誓いました。
再びこのような事が起きたら今度こそ皆を守り抜くと、悲壮な決意をするのでした・・・。

                                                                                                                           おわり



あとがき
製作期間・・・一年一ヶ月
どうもご苦労様でした。一度に読みきった人はいろんな意味ですごいです!
見てのとおりキャラクターを欲張りました。本編キャラだけで19人も登場しています。
ケースケの火を消す場面の元ネタはある漫画からとったものです。
今回も原作に不相応なナレーションですいません。
今気づいたんですが、国語の、いや道徳?の教科書の語りのような感じがします。
しかし、よく書けたなと自分自身思いました。
こんな気ちがいじみた長さの文を・・・もし次回があれば話数区切り学んできます・・・。

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