「…と、言うわけデ、君ニハ”此処”に行ってもらいタィ。 …いいかネ?」
「クケケケ…ッ。 …しかし最近このような場所ばかりですな。 …なぜこんな所ばかりを…。」
「それハ君が知ル必要はなィよ。 …君ハただ、私の為二仕事をしてくれればイィ。」
「そうですか…、失礼いたします。 クケケケケケ…。」

「ふむ…"首領”閣下はなぜこんな所に私を差し向けたのであろうか…? …何の変哲もない"中学校”とは… クケケケケ…。」

ヘルメットバトラー フルフェイスマン
ヘルメットバトラー フルフェイスマン 第参話”全国の中高生達よ 避難訓練にはマジメに取り組め”

 あの銀行強盗事件(第弐話参照)から数日後。 …その事件を解決した謎のヘルメット男こと、 県立昆布学園2年の柏木 雅浩は、特にそのことでもてはやされることなく、いつもと変わらぬ日常を送っていました。  それもそのはず。…顔はヘルメットで隠れており、警察は雅浩の姿を見ていない上、 挙句の果てには目撃した人質達の証言はメチャクチャだったのですから、  そのため、ヘルメット男が雅浩であることは誰にも分からず、結局この事件を救ったのは警察ということにされ、 謎のヘルメット男の話は、新聞の投書欄でちょこっと語られる程度…という事で丸く収まっているようです。 「あ〜…、チクショー!! あんとき素顔を晒しておけばオレもヒーローになれたのかなー?」 「…?どしたの雅浩。 何日か前の新聞なんか読んでさー。」 「だってコレ見ろよ… ほら、そこの見出し。 …その"強盗”共を蹴散らしたのオレなんだぜ? でも手柄はぜーんぶ警察の奴らにもってかれちまったんだ。 …オレと機動隊の区別もつかないようなアホな連中がだぜ?」 「ま、またその話ぃ…? それはさ、雅浩がヨロシク仮面のスペシャル観る事に必死だったからしょうがなかったんじゃないの?」 「いや、それはそうだけどさ…。 なんか悔しいじゃんよ!? せっかくこっちが命張って人質とかを助け出してやったのに、 オレは怒られも褒められもしない。 母さんだってあの時のことを何にも覚えちゃいねーんだ。 理不尽だと思わねーか、ナナミぃ。」 「まぁ雅浩の考えも分かるけどさ…。 今更話したって誰も信じてくれないよー?  ”中学生が銃火器を持った強盗をたった一人で蹴散らしました …しかも素手で”なーんて言ってもさ。 それにこれでよかったんじゃないの? …変にウワサでもなったらことだよ?」 「うぅむ、それはそうだけどよ〜…。 …なんか割に合わん!」  当の本人はそのことを良く思っていない様子。  …さすがに当人すら死ぬかもしれなかったような修羅場だったので、自分の手柄にして、何かを得たかったのでしょうか…。 「…おはよー!雅浩、ナナミー。」 「おぉ五十嵐。 …今日はずいぶんと遅いじゃないの。どーした?」 「五十嵐くんおはよー。」 「あぁ… なんだか”新任の先生”が来るって言ってたから、ちょっと様子を見にさ。」 「新任…ねぇ、今更ウチの学校に先生を呼んでどーなるっつーんだよ。 なー?」 「いや、同意を求められても…。 そう毛嫌いするなってー…。 ”数学の先生”だって言うぜ?」 「…あ、じゃあダメだな。 …数学の教員ってだけでもうムシズが走るわッ!」 「(あ、そうか…雅浩は数学苦手だったもんねぇ♪)…ぷぷ、ぷぷぷっ…。」  雅浩の返答を聞いた途端、ナナミはぷぷっと笑い出してしまいました。 「おいそこォ! 何を笑っているゥ!? 笑う所じゃねぇぞ!!」 「まったく…やれやれだね、マジで…。 あ!先生が来たっぽいぞー!」 きりーつ! れいー…! 「えー…もう職員室に来ている子は知っているかもしれせんが、こちらは… 新任の”篝火 焔(かかりび ほむら)”先生です。 …先生、ご挨拶をよろしく。」 「…数学を受け持つ事になった篝火だ。 …皆、よろしく頼む。」  その先生は、やせ型で物腰は少しやわらかでしたが、何かちょっと怖い感じのする人でした。 「へぇ〜…。 割かしイケメン顔な先生だね☆ …ちょっとヒョロっとしてるけど。 ね、雅浩っ。」 「そうだね。 …しかし、ちょっと厳しそうな先生じゃないか…?なぁ、雅浩…。」 「あ〜? …数学の教師には興味なんざ… ッ!!」  二人に言われ、雅浩がめんどくさそうにその教師の顔を見た途端…、  何か…漠然とした"恐怖”のようなものに雅浩は襲われたのです。 他の子には何も感じません。しかし雅浩にはその先生の顔、眼、ちょっとしたしぐさからでさえも…、 ”殺気”のようなものを感じるのです…。雅浩は冷や汗をかき、すぐに顔をすくめました。 「……ッ!!(な…何だ!? なんだってんだ…!?)」 「? どーしたの雅浩。 …そんなに汗びっしょりでさー。」 「まさかお前… あの先生の顔を見て、もうこの後の授業のことを考えてたんじゃないのか?あの先生怖そうだし。」 「あ、そうかもねー。まったく雅浩はもう…。」 (こいつらは気づいていないのか? …この先公から感じる"何か”に… この先公、た…、ただものじゃねぇ…!一体何者なんだ、こいつは…っ!!) 「………。」 「…?どうなさいました篝火先生?」 「…あー、申し訳ない。昨日教材作りで徹夜してしまったのでね、少しボンヤリしてしまい…。」 「なるほど…。 とりあえずこれでホームルームは終了です。 …各自、次の授業の準備をするよーに。 それでは…」 きをつけー、れいっ!…あの小僧、間違いない、…私の"気”に気づいていた…!誤算だった…。 まぁ良い。 どうせ3,4時間後には何もかも"黒コゲ”になるのだからな…。 "クケケケ”…。
「あー…、ようやく二時間目も終わりか…。次、何だっけ?ナナミ。」 「えっと〜…数学ー。 …篝火先生の!」 「……。」 「? どしたの雅浩ー? 今日はちょっと変だよ? …そんなにあの先生の事が嫌いなのぉ? …初対面なのに。」 「そうだな…。 どうしたんだよ?いつものお前ならもっと…。」 「お前ら…、何も感じないのか? あの先公から…」 「はぁ? 何を言い出すかと思えば…。 そんなドラゴンなんとかみたいなマンガじゃあるまいし! 何?"気の力”とかそういうのを感じるだとでもぉ?」  雅浩の奇妙キテレツな質問を五十嵐はちょっといたずらっぽく返しました。 「違うわッ! …なんつーか…あれだよ、アレ。”殺気"…いや、”邪気”?…っつーんだっけ? …多分そんなの。」 「はは…あはははは! …なにいっちゃってんの雅浩ー! …あの先生のどこから"殺気”が出てるっていうのー? 確かにちょっと怖そうな先生だけどさー、いくらなんでも”殺気”は余計だよー! あははははー…。」 「て、テメェ!! …これはマジな話なんだよ! …元にオレは奴の面を見た途端、 …冷や汗がとまらなくなって、マトモに顔をあわせられなくなって〜…。」 「はいはい、分かった分かったー…。 そんな事言ってるヒマがあったら、さっさと次の授業の準備すればー? 確かお前…今日は黒板で問題解くんだったろ?」 「こ…、この…ッ!!(ダメだ…こいつら、ホントに分かっていないのか…!?)」 「あ…そういや忘れかけてたけどさ、次の時間のどこかで”防災訓練”やるんだってさ。」 「”ぼうさいくんれん”って…アレか? あの"ベルが鳴って、それを合図に学校から避難する”っていう…。」 「うん。…最近は地震とか火災とか多いからねぇ。 …それにこの学校、燃えると危険な薬品だとか、 ガスの保管庫とかあるわけだしさー。 …ちゃんと逃げる訓練しておかないとマズイらしくて。」 「ふ〜ん…。なぁ、前から思ってたんだけどよ、…なんかそれって、そのシステム自体に欠陥があるような気がしねぇか…?」 「”けっかん”? …どこに問題があるのさ?」 「良く考えてみろよ。 …確かに避難訓練は重要だ。だが、こうおおっぴらに”今日のこの時間にやる”って言うのが。」 「へ? …そりゃあやる時間が分かんなきゃ誰も動かないわけだからじゃないの?」  雅浩の発言にちょっぴり不思議そうにナナミが聞き返します。 「バカが。 …それじゃあ意味ねぇじゃん。 災害っつーのはいつ来るか分からないんだぜ? その災害から身を守るための訓練なのによぉ、"今やります”なんて言っちまったら…誰も危機感なんか感じもしねーじゃん。」 「…あぁ。それは確かに〜。」 「だろ?…それに見て見ろよ。 …みんなハナっから災害なんて起きないって思って、 誰もマジメに取り組もうとしねぇ。 これじゃあ”いざ”って時、誰も助からないっての。」 「そ、そうだけど… じゃあ雅浩は具体的にどーしろって言うんだよ?」 「いや、だからさ…日時を知らせないで”ドッキリ風”にやるとかよ! …それなら皆危機感を持って取り組む。」 「お、お前なぁ…。 そうは言うけどさぁ…。 …あ、先生が来たぞ!」 「やべっ!! …変な事ばっかしゃべってたせいで、数学の用意するの忘れてた!!」 きをつけー… れーい! 「えー…、ではコレより授業を始める。 …教科書開いて。」 (マジやベぇ… マジやばいって!! 今日当たるってのに、教科書もノートもないんじゃ話にならねぇ!! これはアレだ…! 少しでも先当たらないように神に祈るだけ…) 「ん?お前はー… えっと〜、柏木。…前出てきて答えろ。」 (何ィ---ッ!? 授業開始そうそうかよ!? こ、こいつはヤベェ…! こうなったら最後の手段だッ!! …黒板の前でわざとうなったり考え込んだりして、なんとしても時間を…。) 「どうした? …早く来ないと成績を下げるぞ?」 「な…ッ!? 何ィーーーーーッ!?」  篝火先生のメチャクチャな言葉に、雅浩は思わず声を荒げてしまいました。 「何だよそれ! ”おうぼう”じゃねーか!! それが教師のやることかよ!?」 「黙りたまえ。 …この授業では私がルールだ。 …ルールを破る者にはそれなりの罰を与える。…それだけのことだ。 さぁ早くしたまえ。 それとも…このまま成績を下げられても良いのかね?」 「…ッツ!! わ、わかったよ-…。 う、うぅう…。」  雅浩は先生との言い争いに負け、しぶしぶ黒板の前に立ちました。しかし、教科書もノートもロッカーの中。 授業中に取りに行けば遅刻扱い。 …そんな状態で、ただでさえ数学ダメダメな雅浩が問題を解けるはずありません。  しかし、そうやって考え込む雅浩に、先生はさらに追い討ちをかけるようにこう言い放ちます。 「む…? そうやって無駄に時間を使う気かね? そうはいかんぞ。 …私が30数える間に問題を解くんだ。 さもなくば… 君の今期の数学の成績は”1”確定になるが…それでもよいのかね?」 「何だとぉぉおお−ーーッ!?」 「せ…せんせい! それはいくらなんでも雅浩…くんが可愛そうです!!」 「そ、そうですよ! 確かにコイツが書かないのが悪いんでしょうけど、いくらなんでもあんまりです!!」  見るに見かねたナナミと五十嵐が、篝火先生に向かって反論します。 …しかし、 「…さっき言ったろう。 …ここでは”私がルールだ”とな。 …君たちも成績を下げられたいのかね?」 「う…っ!!」  二人はうなだれて席に座りました。 …雅浩は解けない問題を必死に黒板の前で考えています。 そうしている間にも、篝火先生のカウントはどんどん減っていきます。 「11…,10…,9…,8…。 どうした?まだ解けないのかね?」 (く…クソッ!! …も、もうダメだ…!)  雅浩は考えるのをやめ、チョークを黒板へと戻しました。 …その様子からはいつもの覇気を感じられません。 「5…4…3…2…い…」 ジリリリリリリリリ…! 只今、給食室で火災が発生しました。  …生徒のみなさんは担任の先生の指示に従って速やかに校庭に避難しなさい。繰り返します…。 「ム…? なるほど、避難訓練…か。  …フン、運のいい奴だ。 …戻ってよし、柏木!」 「は…はい!(た…助かった!避難訓練万歳ッ!!!)」 「…いや〜、危機一髪だったねぇ雅浩。 …あたしもうダメかと思ったよー。」 「まったくだ。 …なんつー先公だよアイツ…!」 「確かになぁ。 …でも、あの先生のやることはいくらなんでもおかしいよ! …雅浩、この授業が終わったらこのこと告げ口してやれよ。 …下手すれば免職ものだぜ?」 「そうだな。 …あの先公! 後で目にもの見せてやるぜ!!」  …間一髪の所で成績ダウンを免れた雅浩は、ホッと胸をなでおろし、先生への復讐を企てていました。 そして、その先生の方は…。 (…”行動”を起こすまでまだ時間があったから、みせしめにあの小僧をいじめてやろうと思ったが…、 まったく…、運のいい奴め。 …まぁ良い。これから”さらなる恐怖”を味あわせてやる! …クケケケケ…。) 「柏木ー!五十嵐ー、桐嶋ー!何をやっているんだ!早く並べー!」 「しまった! …もう担任の先生来ちゃってるよ!!」 「さ!早く並ぼー!! …ん?どしたの雅浩?」 「…あの先公…、どこ行きやがった・・・?」
「…よーし、全員いるな〜。 …学級委員、点呼とってー…。」  と、言うわけで雅浩たち2年B組は全員無事校庭に避難したのでした。 「ふー…。 やっぱりこんな仕組まれた避難訓練なんか面白くねぇよなー。 そう思わねぇ?」 「何言ってんの! …さっき避難訓練のサイレンが鳴ったときにしきりにガッツポーズしてたくせに〜。」 「うぉ…っ! そ、それとこれとは話は別だッ!!」 「…おい、雅浩〜…。 またその”サブバッグ”持ってきたのか!? …なんでそんなかさばるものを避難訓練のときに…。」 「あぁ。 さすがにこれは高価なものだしさー。 それにコレのおかげで銀行強盗とかと戦っても助かったんだぜ? お守り代わりとして持っときたいと思ってさ。」 「そ、そうか…(そーいや、あの銀行強盗事件を解決したの、コイツだったんだよなー…。)でもそんなかさばるものを いちいち持ち歩くのもどうかと思うぞ。」  そもそもヘルメットを学校に持ってくるというところがすでにおかしいと思うのですが、 あえて五十嵐はそのことについては触れませんでした。 「そうかー? オレはどーでもいいんだがよー。」 「あ。 見てよ雅浩ー。 …あれってA組の子達だよねー? …まだここまで来てないんだー。」 「へぇ〜、あいつら…絶対サボってるぜ。 …かったりーんじゃねぇのかね?やっぱ。」 「それにしても遅くないか? …まだ二階の階段の辺りにいるみたいだけど…」 「それはアレだ〜… クラス全員で階段でたむろして…。」 「おい、A組はBよりも優秀な子が多いって聞くぞ…。」 「だからぁ〜、そういう優秀な子に限って、こういう場ではちょっと悪いことをしたくなるもんなんだっ…。」
ドォオオオオオオンッ!!!
 雅浩たちが雑談をしていたその時…、突然三階から爆発音が轟きました。 爆発と同時に火の手が上がり、その炎はすぐさま二階へと回っていきます…。 「…な、なんじゃこりゃぁ…!? ば、爆発ぅ!?」 「こ、これは…アレだ! …あのよく消防署とかが避難したあとによくやる火消しの訓練…。」  と、雅浩がおかしなこと言っていると、近くから先生の声が聞こえてきます。 「ど、どうなっているんだ!? こんなの避難訓練の予定には無かったぞ!?」 「そんな事よりもまだ避難していない子達があそこに…!!」 「……うええぇぇ--ッ!? ま、マジだってのか!?あの炎は!?」 「た、大変だ! まだA組の子達が避難してないってのに!」 「いやあああー!かよちゃーん! さっちゃーん!!」  …”避難訓練で本当の火の手が上がる”。 それだけで教員も生徒ももう大パニックです。 加えてまだ二年A組はまだ避難の途中。 …急がなければ彼らは炎に呑まれてしまいます! 「と、とりあえず消防署に連絡だ!! 急がないと…!」 「待てッ! 今更消防署に連絡しても遅い! …火の手が早すぎてそれでは間に合わない!」 「クソッ… どうしたらいいんだ!」  あまりのことに教員達も半ばさじを投げてしまっています。 …そして雅浩たちはー…。 「…しまったァ!! オレのカバンの中に”ヨロシク仮面フィギュア”が入ってたの、忘れてたァ!!!」 「は、はぁ!? ヨロシク仮面の”ふぃぎゅあ”ぁ?」 「こ、このままでは確実に…! …お前ら、ここで待っていろ。オレはー…。」 「ちょ、ちょっと待て!! …お前まさかそれを取りに行く為にあの炎の中に…!?」 「当たり前だ! …あのフィギュアは日本に限定10個の超レア物なんだぞ!? …こんなことで失ってたまるか!」 「アホぉー! 命失うのとフィギュアがなくなるのと、どっちが大切かぐらい分かるだろー… うえぇっ!?」  五十嵐が雅浩を止めようと話をしたのですが、もうそこに雅浩の姿はありませんでした。 雅浩は持っていたサブバッグからヘルメットをとりだしてかぶり、そのまま校舎の中へと入ってしまったのです…。 「あ…あのアホ…! あの中に入ってって生きられるわけが…!」 「ま、まさひろぉ… あぁあ…。」 「ん!? おい、しっかりしろよナナミぃ!!」  ナナミはこのパニックと、雅浩が火の中に突っ込んで行ってしまったことですっかり思考回路がショートしてしまい、 意識を失ってしまいました…。
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