ヘルメットバトラー フルフェイスマン
ヘルメットバトラー フルフェイスマン 第弐話 ”見えてきたようででまったく見えない真価”


 ・・・オレの名は柏木 雅浩。 ・・県立昆布学園2年B組 男子出席番号18。 腕っぷしにはめっぽう自信あり。勉強は・・まぁそれなり、だと思う。  で・・そんなオレだが、 ぶっちゃけ今・・ 大ピンチだ。  「まさひろ・・ 雅浩ッ!! もうすぐ救急車が来る!・・だから・・死ぬな!死なないでくれぇぇっ!!」 「いや・・いやだよまさひろぉ・・ しぬなんて・・ヒドイよ・・・ぉ!!」  ・・どうやらオレはナナミをさらったヤツラの攻撃をくらって 相当マズイ事になっているらしい。 …それはこの二人の取り乱し様ですぐに把握できた。 ・・てか自分でも分かる。 体全体から死ぬんじゃねぇかってぐらいの激痛がするし、もう足の方には感覚らしいものがほとんどねぇ。 ・・自分の鼓動がいやに馬鹿でかく聞こえる・・ これがよくある”死ぬ間際”ってなものなんだろうな・・。 「・・悪ぃ・・な、おめぇら・・ マジ死にそう・・」  雅浩は非常にかすれた小さな声でささやくように言いました。  「な・・・!? 何言ってるんだよ馬鹿ッ!! ・・あき・・あきらめちゃダメ・・だ!!」 「そ・・そんな・・! 嘘・・うそよね・・雅浩・・・  う・・うぅう・・・っ!」  二人のすすり泣く声だけが廃工場内にこだまします。 と、その泣き声を聞いてか聞かないでか、政弘がまたも小さな声で二人に言いました。 「あ・・・あのさぁ・・ 悪ぃけど・・ このヘルメットかぶしてくんないか・・? さ、最後ぐれぇはよ・・ カッコよく死にてぇ・・からよ。」 「・・・!? お、おい・・!待てッ!! ・・お前何言って・・・?!」 「そ、そうよ雅浩!! ・・し、死ぬなんて・・ なんでアンタがそんな弱気になってんのよ・・!?」 「はは・・は。 ”自分の体は自分が一番よく分かる”・・ よく聞くセリフだけどよ、ホントだなぁ・・。」 「・・・・!? ま・・、まさひろ・・! う・・っ・・・うぅう・・!!」 「・・・ッ!!  ・・ほ、ホラ、こんなもの、ずっとかぶってやがれ!! ・・くっ・・う、わあああああ・・・・っ!」  五十嵐はヘルメットを強引に雅浩にかぶせると、その場にひざまずいて、大声で泣き出しました・・。 ナナミもそれにつられ、さらに声を上げて泣いています。  ・・・しかし、そんな二人の目の前で・・信じられないことが起こりました・・。 「・・っと! ・・あれ?なんだ。・・生きてるなオレ。」 「う・・っ・・・・  ・・!?!?!?!?!gp84t8r6hs708r4yrwhfy8k4!?」 「ぎ・・ぎゃああああああああああ!!!!」  なんと、それから数分もせずに、雅浩はすっくと起き上がりました。 ・・しかもさっき誘拐犯から受けた銃弾やら殴られて出来た傷もほとんど消えて。 当然それを見た二人はあまりの出来事に混乱してしまいました・・。 「ま・・ままま雅浩ぉ!? な、何が一体・・どーなって・・・!?」 「お・・お前・・!? に、にんげん・・・な・・なのか・・!?」 「な・・”人間なのか!?”はないだろうがよ・・ まぁ確かに不思議ではあるぜ? ・・さっきの傷は全部消えてるし・・、 ほら、コレ見ろよ。 ・・さっきオレの足に打ち込まれた銃弾だ。ポロッと出てきやがる。」 「え・・・・えぇええーーっ!?」  ・・・こうして、すっかり回復してしまったので雅浩は救急車に乗らずに済み、そのまま三人で家に帰りました。 当然三人とも無断外出で散々怒られたことはいうまでもありません。  それと、あの誘拐犯の連中は雅浩の呼んだ救急車に運ばれていきました。 ・・事情をすべて説明したので、 回復を待って、警察の厳しい事情聴取があることでしょう。                              
「まさひろーっ!! もう8時よ! また学校に遅刻したいのー!?」 「うぅ・・ げっ!また8時かよっ!? ・・くそっ!!」  ナナミ誘拐事件から2日。 ・・ケガがまったくなかったのをいいことに、その時起きた出来事を話さなかったおかげで、 雅浩はまったく普段と変わらない日常の中に身を投じていました。  「あれ・・?父さんは?」 「もうとっくに仕事に行ってるわよ。 ・・なんだかやっかいな事件が舞い込んできたらしくて、 早い内から捜査やら聞き込みやらをやる・・ですって。」 「なんだか刑事みたいだなぁ、父さん。」 「まあ弁護士なんて刑事みたいなものでしょ。・・あの人、ずーっとそう言ってたから。 ・・って、そんな事を言ってないで早く食べなさいッ!!」 「ごっそさん! ・・じゃもう行くぞ母さんーッ!」 「あ・・・!ちょっと待ちなさい!! ・・行っちゃったわ・・。 今日は銀行でお金を下ろしにいくから、 念のためにカギを持ってって言おうとしたのに・・ まぁいいわよね。 銀行でそんな手間取る事もないでしょうし。」  それからすぐに学校に到着し、雅浩は息を弾ませながら自分のイスに座りました。 「・・・おはよ〜。 ハァ・・今日は遅刻ギリギリじゃなかったか・・。」 「あぁ、雅浩か、おはよう。 ・・あれから、大丈夫なのか?お前。」 「何が・・ あぁ、あの時のか。 ・・全然平気だぜ? 傷跡もなければ後遺症もねぇし。 ・・しかし不思議なこともあるもんだな〜、撃たれて殴られたのに全然平気で、傷は治るときたもんだ。」 「いや・・ それは普通じゃないだろ・・。 ・・何が原因であぁなったんだろ? ・・って、お前! なんだ、お前そのでかいサブバッグ…。まさか、ヘルメットを…」」 「あぁ。なんだかんだ言ってさ、あの戦いで顔に外傷がなかったのはコイツのおかげだしよ、・・ちょっとしたお守り代わりに。」 「”ちょっとした”ではないだろ、その大きさは・・。 持ち物検査とかで没収されても知らないぞ?」 「なぁに、そんときゃ放課後に取り返せばいいだけだし。」 「あ!雅浩、五十嵐くん! おはよ〜っ!」 「あ、ナナミ。 お、おはよ・・(あの事・・ おじさんには話したのか・・?)」 (・・あのさぁ、お礼をオレにくれるとか言ってなかったか?)  二人はひそひそ声で2日前の事を問いただしてみました。 雅浩はいやしくもお礼を望んでいるようですが。  (・・あ、あれ? ・・話したって信じてくれないわよ。 ・・誘拐犯がウチと間違えて雅浩の家に電話するわ、 その雅浩がたった一人、しかも素手で誘拐犯全員殴り倒して助けてくれた!・・なーんて。) 「ふ、ふぅん・・・。 確かになぁ・・ 僕だって実際に見てなきゃ信じられないし。」 「ケッ・・それじゃあお礼の件はなしか。 ・・つまらねぇ・・」 「・・あのねぇ・・。なんでそういう発想をするのよ、雅浩は〜。」 「・・・お〜い、そうこうしているうちに・・先生来ちゃったみたいだぜ・・。」 「あ・・ホントだ・・。 きをつけー!・・・」                                *  それから何時間かが過ぎ、時計が午後3時を回った頃。雅浩の母三保さんは、 お金を下ろしに近くの銀行に来ていました。 「・・・さてと。 ・・お金も下ろしたことだし、どうしようかしらね。 ・・晩のおかずにもう一品足しておこうかしら? ・・なににしようかしら・・・・。」  と、フツーの主婦な独り言をブツブツ言っていると、突然・・ 自動ドアから大勢の黒ずくめの男達が銀行に入ってきました。 あまり前を見ていなかった三保さんは、いきなり入ってきた男に突き飛ばされ、その場でしりもちをついてしまいました。 「ちょっと何よ!あなたた・・ち・・・  いぃッ・・!?」  ・・そう言いかけて、三保さんはそこから先の言葉が出てこなくなりました・・。 なにせぶつかってすぐに文句を言おうとしたら、こめかみに銃口をつきつけられたからです・・。 そしてその中の一人がメガホンを使ってこう言いました。 「この銀行の従業員、そして利用客に告ぐ! ・・・たった今この銀行は、我らが占拠した! ・・死にたくなければ、そこで手を上げて大人しくしているんだな! 妙なマネをしたら即殺すから覚悟しておけ!」 「お、お客様・・何の冗談で・・ ひ、ひ・・っ!! うわぁあアアアッ・・!」  ・・受付の男性がそういうと、仲間の一人がその男性の手を狙って発砲しました。 ・・男性の手からどくどくと血が出ています・・。 「これで分かっただろうな? ・・今は手にしてやったが、次は脳髄をぶちまけてもらうぜ。えぇ?ニィちゃんよ・・!」 「ひ・・ひいいっ! ・・も、申し訳ございません・・ッ!!!!」 「う・・うぅ・・(なんなの・・・何なのよコレ・・! 夢なら覚めて・・ ・・お願い!)」  ・・時を同じくして雅浩達の学校。 ・・どうやら三人ともトイレ掃除をやっているようです。 「あ〜…、ったく何でオレがトイレそうじなんてやんなきゃいけねーんだよ!」 「そりゃあ、お前が数学の問題であんなメチャクチャな答え方をするからだろ? …あんな答え方、今日び小学生でもしないって。」 「うるせぇな!! オレは図形問題は苦手なんだよ!!」 「ま、まぁまぁ… だからわたしも五十嵐君も手伝ってあげてるんじゃない。 …パパッとやって早く帰ろ。」 「そうだそうだ! あんまりうだうだ文句言うんなら、オレらは先に帰るぞ!!」 「う…! わ、分かったっての…。」 「はぁ・・・。ようやく終わったよ〜・・ トイレそうじってのはやっぱタルいもんだなぁ…。」 「まったくだね。 …今度はもっとまともな答え方をしてくれよ…?」 「へーへ・・そうですね。 わかり・・    …!?!?!」  その瞬間、雅浩の顔が緊張で凍りついたようになりました。 「・・? どした? トイレにでも行きたくなったか?」 「・・違うッ! ・・オレとしたことが・・うかつだった…! 5時の・・”あいさつヒーロー ヨロシク仮面”・・ ビデオに撮り逃したァ!!!!!!」 「・・ハァ? ・・お、お前こんな歳になってまで・・そんなヒーローものを見てるのか・・?」 「馬鹿言え! ヨロシク仮面はな!フツーのヒーローなんかとは格が違うんだ格が!! …なにせオレはあの番組に人生を教わった・・ 好きとかどうとかという問題ではないのだ!!」 「あ〜・・そうなの? 別にどーでもいいけどさ。 で、どうするの?」 「とーぜん! ・・速攻で家に帰るッ!! ぬおぉおおおおをぉおお・・ッ!!」  雅浩はそのまま走り去っていきました。 ・・そのスピードはオリンピック選手に迫るかのようでした。 「・・すごいなぁ、アイツ・・ あれだけあれば絶対学校記録出せるぞ・・。 さ、僕も帰ろ〜。」 「わたしも〜・・・。」  ・・・雅浩は通常20分かかる道のりを10分で走って帰ってきました。  大好きなテレビ番組見たさ効果とはこれほどのものでしょうか。   しかし、ここで問題が発生しました。 ・・呼び鈴を鳴らそうが、ドアを力いっぱい叩こうが、一向に開く気配がないのです。 なので、自分でドアをあけてみようとするのですが、鍵がかかっており、どれだけ力を入れてもドアは微動だにしません。 「・・・くそう・・・母さん、出かけてるのか・・!? こ、こんな時に・・・!! (・・落ち着け、落ち着くんだオレ・・こーゆー時は、母さんがどこに出かけたかを考えるべき・・・) ・・・ん? 何だコレ。 ・・手紙じゃない・・書置き!」  そうこう考えている内に雅浩はポストの中に書置きがあったのに気づきました。 とりあえず中を読んでみると・・ 「”銀行に行ってます。 ・・あまり遅くならないと思うから、おとなしくそこで待っててね♥ 母さん”・・ ・・なるほど、銀行か・・。 えっと、時間は・・ 4時ジャスト! よし、まだ間に合う! 待ってろよ家のカギ! ・・あと母さん!!」                                  その頃銀行では・・、強盗達が土鍋ぐらいの大きさの機械を部屋の中央部に設置していました。 一人の銀行マンが不審に思い、その機械について問いただしました・・。 「あ、あの〜・・・それは・・一体・・!?」 「・・これか? ・・これはある武器商人から買った特殊強化爆弾だ。 コレ一つでビル一つ消し飛ばせるほど・・だと聞いている。」 「は、ははぁ・・左様・・でっ!? ちょ、ちょっと待ってください! ってことは我々人質は・・!」 「・・オレ達は完璧主義でね。 ブツださえ手に入ればこのビルごと消し飛ばして証拠隠滅させてもらう。 人質なんて形だけさ。 ・・お前らはそうだな・・ ボールペンかなんかのような銀行の備品でしかない、ってだけのことだ。」 「な・・・な・・っ!!!!」 「そ・・そんな・・じゃあ私達は・・!」 「・・そ、そんな身勝手なマネが許されるとでも思っているんですか!?」 「あ・・・? なんだキサマ・・ それはオレ達に向かって言ったのか・・えぇ?」  強盗たちのあまりの傍若無人な振る舞いに憤りを感じた三保さんは、強盗たちに向かってこう言い放ったのです。 「そ、そそ・・そう・・です! アナタたちは人の命を何だと思っているの!? ・・そうやすやすと奪っていいものではないはずよ!」 「・・あ〜ん・・・? オレ達の仕事にケチつけやがって・・ いっぺん死ん・・!」 「ひ・・・ひっ!!」  と、三保さんの言葉で怒った一人の強盗が三保さんに殴りかかろうとしましたが、 そこで隊長格らしい人がそれを止めました。   「待てよ・・。どうせこいつらはほっといても死ぬ。・・だったらただ殴るよりも、じりじりと死にゆく恐怖を味あわせてやるほうが面白いとは思わないか?  ・・ほっておけ。」 「へ、へい…っ。 ケッ、隊長に救われたな…、オバサンよ…。」 「・・・(だ・・誰かぁ・・!早く助けにきてぇえええええ・・・・!)」                              
「ここだな・・。 ・・? なんだってんだ今日は・・、やけに警察のやつらが・・・」  いざ銀行に着いてみると、銀行の近くにはたくさんのパトカー、警察官がいて、雅浩はすこしとまどっている様子。 それはそうでしょう。 ・・なにせこの銀行内では強盗事件が起こっているわけですから。  雅浩は少し考え・・、そのまま正面から銀行に入っていったのです・・。 すると・・ 「・・あー!何を考えているんだ君は!?  止まれ・・止まりなさい!!」 「・・んなっ! えぇーいコラ放せ!! ・・早く母さんに会わないと・・ ヨロシク仮面が・・ヨロシク仮面がぁああ・・!!」  当然雅浩は近くの警官に捕まってしまいました。 少し考えてみれば当たり前な話でしょう。 子供が丸腰で、しかもいつ人質が殺されかねないような所に乗り込もうとしたのですから。  「な、何を言っているのかよく分からないが・・ とりあえず落ち着きなさい僕! ・・今この銀行には強盗が押し入っているんだぞ!?」 「何だって・・!? ごうとおぉだぁ!?!?」  ・・ようやく雅浩は今現在 母・三保さんが置かれている状況に気づきました。 ・・しかし、雅浩の反応と言うと・・。 「な・・・ なにやってるんだよ母さんは!! 息子が緊急事態に陥ってるってのに、何強盗なんかに遭ってんだよ!? まったく! なんて親だ・・・!?」 「は、はぁ?き、君・・ まったくもって意味がわからないのだが・・ それはちょっとお母さんがカワイソウなので」 「えぇい! うるさい!! ・・・もういい!放せ放せ!!」  雅浩の抵抗もむなしく、警官の手によって、遠くの方まで追い出されていってしまいました。 「あ〜・・もう!オレ怒ったぞ、怒ったぞー!! もうなにするか分かんねー! 分からねぇかんなー!! でも、あのポリ公共はヤッカイだなぁ…さぁて、どうするか……  そうだ!!」 そう言うと雅浩は持っていたサブバッグの中を探り、中からヘルメットを取り出しました。 そう、誘拐事件で使ったあの……。
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