ヘルメットバトラー フルフェイスマン  第壱話 「何もかもがうまくいくなんてことはありえない」

「・・・・あ、主任。 ・・おはようございます。・・今日も研究室にこもってらっしゃったんですか?」
「あぁ、松田君か。・・おはよう。・・どうにも実験が上手くいかなくてな・・、もう朝か。  ・・そういえば、君は明後日結婚式なんじゃったか?・めでたいじゃないか。」 「はは、知ってらっしゃったんですか。・・ははは。」 「・・・すまんのぉ、ワシは当分ここにこもらないといけないんでなぁ、当日はいけそうにないんじゃ。」 「いえいえ。お気持ちだけで十分ですから。・・ありがとうございます。 あ…、そうだ。めでたいといえば主任のお孫さんもあさって誕生日でしたよね。」 「・・おぉ、そうじゃな。・・今が一番やんちゃなさかりじゃよ。・・最近はあんまり会わないがのぉ・・。」 「プレゼントは・・決めてあるんですか?」 「まぁな。・・最近新しく出たという”フルフェイスのヘルメット”を買ってやったんじゃよ。 ・・昨日の内に宅配便に頼んだから、誕生日には届くじゃろうな。」 「・・へ、ヘルメットぉ!? ・・あ、あの〜・・お孫さんたしか未成年じゃ・・。」 「・・あの子は本当にヘルメットやバイクが好きでな。・・ウチの息子が”買うな”としつけているらしんじゃが、 まぁ、もうあの子も中2じゃ。・・買ってやったって問題あるまい。」 「・・まったくもって不思議な子ですねぇ〜・・・。 あ、そうだ主任。・・そろそろ本題に。」 「・・ふむ、”アレ”のことじゃな。 ・・・何とか完成はしたが・・、起動実験で、ちょっと・・な・・。」 「・・? なにか不具合でもあるんですか?」 「ふむ・・、”このチップ”は何か無機質なものに装着させないと効果を発揮しないってのは前に説明したじゃろ? ・・わしもいろいろなものにチップをセットして試してみたんじゃが・・、反応を示さんのじゃよ・・。 じゃが・・、一つだけ成功したものがあったのじゃ。 ・・バイク用のヘルメット。」 「げ・・・、バイクのヘルメット・・? な、なんでそんなものが研究室に・・?」 「・・そんな事をワシに聞くな。 ・・おそらくスイカか何かと間違えて送ってきたんじゃろ。」 「は、はあ(そんなバカな!)・・。 でも成功はしたんですよね? じゃあ・・」 「・・シッパイじゃよ、失敗。 ・・確かに起動はした。 ・・しかし、ワシ自身があれの力を抑えきる事が出来なかったんじゃ・・。 ・・そのせいでまだ体の節々が痛むワイ・・。 おーいちち・・・」 「・・・やっぱり、まだまだ実用化には程遠いようですね。 ・・・”
肉体活性プログラム・X”は・・。 「・・そうじゃな。 ・・ま、この計画を始めた時からそうカンタンに終わるとは思ってなかった。 ま、あとは時とワシらの努力がなんとかしてくれるじゃろ。 まだ予算だってずいぶんと残っておるしの。」 「・・そうですね。 じゃ、さっそく研究を・・・・ ん!? ・・た、大変です主任!! チップが・・試作品のチップがぁ・・・!!!」 「・・・? な、なんじゃと!? さ、探せ、探せーッ!!!」                              
 ・・・ここは、どこにでもありそうなフツーの住宅街。近くの家から騒ぎ声が聞こえます。 しばらくすると一軒の家から、一人の少年が出てきました。中学生ぐらいで、短めの髪で、学生服を着ています。 「・・・雅浩ッ!ちょ、ちょっと待ちなさ〜い! ・・お弁当忘れてるわよ!」 「ゲッ・・イケね。 サンキュー母さん! ・・じゃ、いってきまーす!!」 「・・まったく、いっつもあわただしいな。・・遅刻したくなけりゃもっと早く起きればいいものを。・・なぁ三保。」 「そうね・・、でもあなた。 あの子あれでも一度も遅刻も欠席も早退も、病気にすらかかってないのよ。 それを、小学校の頃から。 ・・不思議なものよね〜。」 「あぁ。・・あの子の体は一体どうなってるんだろうな? ・・それはそうと、今日はあの子の誕生日だったっけ?」 「そうよ。・・あなた、プレゼントはもう用意してくれてる?」 「あぁ。・・そういえば今年は”父さん”も何か用意してくれるって言ってたっけな。」 「あら、お義父様が? ・・”研究”でお忙しいというのに。」 「・・”孫の顔を見れない代わりに、すごいのを送ってやるから覚悟しておけ!”なーんて言ってたよ。 ・・まったく、何を送ってくるのやら。」 「・・フフフ、期待して待っておきましょうよ。 あ、アナタ。 ・・アナタもそろそろ・・」 「・・・!? ヤベッ、もうこんな時間だ!! ・・急がないと!!」 「・・もう! ・・あなたも雅浩も大差ないじゃないの!」 「ハァ・・、ハァ・・、ハァ・・・。 ったくもう〜・・、なんでウチから学校がこんなに遠いんだ!?」  ・・オレの名前は柏木 雅浩(かしわぎ まさひろ)。 ・・県立昆布学園の二年生だ。 何?・・学校名からしておかしい!? ・・オレに言うなよ、創立者に言え。  父さんは超有名・・・とまでいかないけど、腕のよさに定評がある実力派の”弁護士”だ。 母さんは・・、まぁどこにでもいそうな普通の母さん。 キレイだし、料理の腕もすごいんだけど、・・なにより一番すごいのは、バトントワリングかな。 ・・なんてったって、近所のオバサンを集めて、ママさんバトンクラブをつくっちゃって、 地区大会に出場したほどの実力者、・・なーんて言ってたから。  ・・で、オレは何してるかって? ・・・遅刻しないように学校まで走ってるわけ。 自慢じゃねーけど、オレは小学校の頃から”無遅刻、無欠席、無早退”がモットーだから。 「・・・おーい! まさひろー!! まっ・・待ってくれぇぇぇぇえ!!」  ・・突然、何者かが声をかけてきました。 ・・雅浩と同じ制服で、 雅浩よりも髪が長めで少し背が低く、 ちょっとたよりない声の男の子です。 「・・・なんだよ五十嵐(いがらし)。 ・・寝坊でもしたか? ・・らしくねーな。」 「・・あ、あぁ・・。昨日はたまってた宿題片付けてたから・・、ちょっと寝不足で・・。 ・・そういえばお前、昨日の宿題やったの? ・・終わったのかよぉ、数学の証明問題。」  そこまで言うと、五十嵐という少年は、さぞ眠そうにあくびをしました。 ・・こちらまで眠たくなりそうです。 「・・とーぜん。・・過去にこのオレが宿題をやってこなかったことがあったか?」  雅浩は鼻息を荒げ、自信たっぷりに言いました。 「さいで。・・でも、出来はサイアクだけどな。」 五十嵐がすかさず付け加えます。 「どういうことだよ!?」 「・・その割には成績が大した事ないね〜って意味。 ・・っとヤベ!こんな時間だ!!」 「んっ・・? げ! あ、あと五分しかねぇ!! 急げ〜!!!」  ・・コイツは五十嵐 勝(マサル)。・・オレの幼なじみで、一番の友達。 あんまり宿題の提出期限を守らなかったりするくせに、なぜか成績はトップレベルのいやみなやつ。 ・・まぁ、腕っぷしはオレのほうが上だけどな! ・・あれ、聞いてない? 「はぁ・・・・はぁ・・・・はぁ・・・ な、何とか間に合ったな・・・。」 「あぁ・・、まったく心臓に悪いよ・・。」 「・・おっはよーまさひろ! ・・また遅刻ギリギリで来てるのぉ?ねー」 「あん・・? なんだよ菜奈美(ナナミ)。・・また悪口か?・・お前の悪口は聞き飽きたよ。」 雅浩は菜奈美という女の子の言葉にちょっとムッときたのか、言葉をさえぎりました。 その子は特に染めたわけではないのに、自然な長い栗色の髪をしており、・・結構カワイイ女の子です。 「まったく〜、いっつもそーゆー事ばっかり言うー。 ・・そういえば今日は誕生日なんだよね?・・雅浩の。 ねー、あたしも行っていいでしょー? 誕生パーティ。」 「・・? あ、あぁ。 ・・自分でも忘れてた。ようやくオレも14歳なのか〜。 ・・って、お前来るの!? ・・ま、まぁ・・母さんがいいっていうなら・・な。」 「あ、そういうことなら僕も混ぜてくれよ! ・・な?な?」 「へーへ・・、しょうがねぇな。・・来たきゃ勝手に来な。 ・・母さんは喜ぶかも知れねーから。」 「わーい、やった〜!」 「なぁ、プレゼントはなに頼んだんだ?」 五十嵐が横から入ってきて話しかけます。 「あぁ〜・・”ヘルメット”だ。 ・・ほら、最近CMでやってるだろ? ・・あの黒いフルフェイスの。」 「・・・・おい、ヘルメットの宣伝をCMでやってるなんて聞いた事ないぞ・・。」 「あたしも知らない。」 「そりゃそうだ。 ・・バイクのCMやF1とかで出てくるぐらいしかないし。」 「なんでお前はそんなもんばっかり欲しがるかなぁ〜・・? もっとなんかあるだろ?・・ゲームとか。」 「いやね〜、最近はあんまり面白いのが出なくてさ〜。ゲーム業界に少し見切りをつけてる所があるんでよ。ま、そんな感じ。」 「・・ぜんぜん子供らしくない。」 菜奈美が雅浩に聞こえないようにぼそっと言いました。 「・・・あ!先生が来たぞ。」   「あ、あぁ・・。」  ・・このちょっとムカつくヤツは 桐嶋 菜奈美(きりしま ナナミ)。 ・・どっかの財閥の一人娘らしい。 ・・なんでそんなお嬢様がこの学校に通ってるのかは疑問だけど、まぁあんまり深く追求するのはやめておく。 いつもいつもオレのところに付きまとってくるんで、少々ウザイかも。 ・・まぁ、そんなに悪い気持ちじゃないけどさ。 一応コイツも幼なじみだ。・・昔から三人でよくつるんでたっけ。 「はぁ・・・、ようやく終わったよ〜。まったく数学はいつになってもかったるいもんだ〜・・。」 「・・はは、そりゃお前がちゃんとした答えを書かなかったからだろ? ・・あんなデタラメな答え書きゃ、先生も怒るっての。」 「そーそー。雅浩はいつもいい加減なんだからさ〜。」 「・・よけいなお世話だ。 ・・それに菜奈美、お前は授業が始まってすぐに寝てただろうがよ!」 「へへへ〜・・、バレてた? ・・だってつまんないんだもーん! それに五十嵐くんが分かんないとこ教えてくれるし。」 「・・あのさぁ菜奈美。・・いい加減僕がいちいち教えなくても出来るようになってくれよ〜・・。」 「そーそー。 ・・他人の力を借りてばっかじゃよ〜、いつまで経っても一人前にはなれねーんだぜ?」 「フンッ! ・・いつもそーゆーんだから。 ・・・もう聞き飽きましたー。」 「はぁあ・・、返事はいつもこれなんだから・・、僕もいやになるよ・・・。」 「ま・・せーぜーがんばんな。 ・・っと、次なんだっけ? ・・現国か。」 ・・それから何時間か経った後。 ようやく学校も終わり、皆それぞれ自分の家に帰っていきます。 あの三人は、横並びでなにやら話しながら歩いています。 「・・じゃーなお前ら。 ・・別に来なくてもいいからなー。」 「・・へへー、雅浩ったら♪ ・・ホントは来て欲しいくせに〜。」 「なっ・・・!? だ、だだ・・誰がッ!」 「顔に出てるぞ〜。 ・・まったくそーゆーところだけおかしなヤツ〜。」 「く・・・こ、この・・ッ!!!」  ・・・二人に痛い所をつかれて言い返す言葉もなく、雅浩は顔を真っ赤にして恥ずかしがっています。  「安心しろよ〜、ちゃんと行ってやるからさ、誕生会。」 「うんうん。何も心配しなくていいのよー雅浩ちゃん♪」 「な・・なんだとゴルァ!! いい加減にしやがれ!!!!」 「あはは〜☆ おこられちゃった〜。 ・・じゃね〜。」 「・・・ぶつぶつぶつ・・(いつかギッタンギッタンにしてやる)・・・・。」 「そう陰湿に怒るなって。・・いつものことだろ? ・・じゃな雅浩〜。」 「・・・おう、じゃな。・・ぶつぶつぶつ・・・・(貧乏くさい服着せて、レンズが入ってないベッコウのメガネかけさせたりして、さんざん馬鹿にしたあげく・・)・・。」 「・・いい加減にしろって。」  ・・こうして三人とも家に帰って行きました。 ・・が、しかし。 その様子を近くの影から尾行するかのごとく、あとを追う人物がいました・・。 「・・写真の娘を確認しました。 ・・間違いありません。」 (・・・そうか。では一人になった所で行動に移れ。 ・・”人質”はくれぐれも慎重に扱うように・・いいな?) 「了解。 ・・・おい、出番だ。」 「・・ふあぁ・・ もう行くんですか?」 「あぁ・・くれぐれも慎重に、とよ・・・。」 「へへ・・分かってますよ・・! しんちょうに・・ね。」
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